平成27年1月1日
一般社団法人 日本冷凍空調工業会
会長 本郷 一郎
年頭にあたり謹んで新春のごあいさつを申し上げます。
旧年中は、皆さま方より格別なるご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
昨年の国内経済は、自民党安倍政権による3本の矢のもと、積極的な経済・金融政策が打ち出され、円安や株高などの効果でデフレ脱却に向けた動きが見え始めた年であったように思います。
最大の山でありました昨年4月の消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでおり、個人消費などに弱さが残るものの、昨年末の衆議院選挙による政府の政策維持や緊急経済対策等により景気回復が図られることを期待しております。
このような状況下のなか、平成26年の国内での上半期の当工業会関連製品の出荷状況は、家庭用エアコンは夏場の天候不順の影響もあり対前年91%と前年割れしましたが、パッケージエアコンやチリングユニットはほぼ前年水準を維持した結果となりました。また電力事情の影響かガスヒートポンプエアコンは昨年に引き続いて大幅に増加し、対前年109%と伸長した結果となっています。国内出荷金額でいうと1兆1,143億円で、前年比101%の伸長、上期輸出額は1、813億円と102%の伸長となりました。
平成27年は、われわれの冷凍空調事業において大きな変化の年となることが予想されております。当工業会では、以下の2点の課題につき重点的に取り組みたいと考えております。
- 地球温暖化抑制策の推進・強化
- 安全で信頼できる製品の提供
1.地球温暖化抑制策の推進・強化
地球温暖化抑制を目的とした各種施策が実行段階に入ります。国内・海外でも対応法整備の議論が活発化しており、国内では4月より“フロン排出抑制法”が全面施行されることとなっており、欧州でも1月からFガス規程が適用されます。またニュースなどでご存じの方も多いかと思いますが、本年の国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP21)では2020年以降の新たな枠組み作り(ポスト京都議定書)が決められる予定となっており、本会議に向け日本も温暖化ガス削減目標を提示する必要を迫られております。
このように、グローバル規模で冷媒の規制強化が打ち出されており、地球温暖化対策は当業界事業の持続的発展に大きく影響を与えることは必至であり、的確に対応していく必要があります。
- 1)次世代冷媒・代替技術の検討
日冷工は、「HFCの責任ある使用原則」の精神に則り、行政および関連団体などとの協力関係を強化し、使用時の冷媒漏えい量の削減および整備時・廃棄時の回収量向上に向けた取り組みを引き続き進めるとともに、次世代冷媒・代替技術の可能性を積極的に追求していきたいと考えております。
次世代冷媒として低GWPや自然冷媒への転換促進のための機器開発などや微燃性冷媒のカテゴリー(A2L)の代表製品での安全性や性能評価についても、今後とも積極的に実施していきます。また、欧州、米国、中国および東南アジア等における冷媒に関する動向を注視し、業界として的確に対応していきたいと考えております。
- 2)エネルギー消費の削減と高効率機器の開発・提供
冷媒のみならず、エネルギー消費の削減も極めて大きな課題として捉えており、消費者・使用者に対して高効率の機器を提供し、それらの公平性・透明性の高い情報を提供するという理念のもとに、活動を行います。本年度においては、ショーケースについてもトップランナー制度の指定に向け的確な対応を目指していきます。
- 3)規格・基準への対応
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IEC/ISO/GHSなどの国際規格への対応
現在一部で採用が開始されている“低GWP冷媒”には、微燃性などの特徴を有するものも多くあり、使用するには安全性などに係る規格化が非常に重要となります。ただ、冷凍空調分野に関連する国際規格は多岐(ISO、IEC、GHSなど)にわたるっており、日冷工としての意見を的確に反映していくためには、業界意見を迅速かつ計画的に取りまとめ、将来を見据えた地道な国際的活動により的確に反映できるよう進めたい。特にISO規格の制定会議などへ直接参画することで、海外での地位確保も図っていきたいと考えます。
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国内関連法規制への対応
新規冷媒の採用に際し、高圧ガス保安法など関連法規の見直しも必要となってきます。作業時、使用時などにおける安全を担保することを前提に見直し検討を進めていきたいと考えます。
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JIS/JRA規格への対応
新たに採用が検討される冷媒について関連規格の見直しを行う必要があります。本年は“フロン排出抑制法”関連のラベリング制度のJIS策定などについて取りまとめを中心に考えております。
2.安全で信頼できる製品の提供
ユーザーの皆さまが安心して製品・機器を使用できるように、従来同様に電気用品安全法や高圧ガス保安法、フロン排出抑制法などへの日冷工意見の作成と提案および順守を行っていきます。
1)消費者・使用者に対して高効率の機器を提供し、それらの公平性・透明性の向上を目指し、性能評価を一般財団法人 日本空調冷凍研究所において実施します。
2)製品開発時に想定しておらず製品保証のできない強燃性冷媒の入替事例に対しても、ユーザーや関係各位への安全性に関する正確な情報提供と指定以外の冷媒を使用しない旨の注意喚起を進めて行きます。
3.その他
当工業会は、大きな変動の時期を乗り越えるため、さらなるグローバル化と魅力ある工業会作りについても中期計画にて取り挙げており、今後以下の具体的施策の検討を進めていきます。
- 1)グローバル化の更なる強化
国際的環境問題への対応強化による影響は当工業会にとっても極めて重要な課題となります。具体的には、地球温暖化抑制観点からのフロン削減、エネルギー効率の向上に対するグローバル的な取り組み、途上国(例:東南アジア、中東など)への技術支援、事業支援などがあります。当工業会は、特に欧州地域においては、これまで現地事務所(ブリュッセル)を拠点に情報収集活動を行ってきており、欧州Fガス規制は決着したものの、引き続き、運用の細部(細則、実施則など)についての情報収集と分析を必要とすることから、欧州の現地JBCEやEPEEなどの機関と連携し、的確な対応を推進していきます。
また、特にグローバル的な課題については、工業会の国際的な交流組織であるICARHMA(冷凍空調工業会国際評議会)などとの工業会相互の連携を強化するとともに、UNEPや政府レベルの国際会議などにおいて、日本の立場や考え方を国際社会に対して明確に発信していきます。
平成28年2月に予定のHVAC&R JAPAN 2016では、今まで以上に日本の優れた技術を、国内のみならず海外にも積極的に発信し国際社会の期待に応えて行きたいと考えております。
- 2)「魅力ある」工業会作り
当工業会が扱う製品・機器は日本の基幹産業の一つであり、幅広い分野で不可欠な存在です。上記のように地球温暖化に対する責務は極めて大きいものですが、冷凍・空調分野は、国内のみならず、グローバル規模で大きな成長潜在力をもった事業分野でもあります。
当工業会は会員企業の会費によって運営されており、会員の皆さま全員にとって有益な施策を継続的に進めて行くことで、統一した方針の下日本の冷凍空調メーカーの代表として、日本の産業競争力・国力の向上に努めてまいります。
本年も、皆さま方の尚一層のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。