経済産業大臣賞 三菱電機株式会社

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No.657 2018年5月

【製品・ビジネスモデル部門/製品(家庭)分野】
家庭用エアコン「霧ヶ峰 FZシリーズ」
三菱電機株式会社

写真1:表彰される三菱電機株式会社の杉山武史 代表執行役 執行役副社長
   リビング・デジタルメディア事業本部長(受賞時*)
   *4月1日より代表執行役 執行役社長

1.はじめに
 地球規模で低炭素社会が推進されている中、経済産業省では、住宅の断熱性能を強化してCO2排出量を削減する取り組みが行われている。ルームエアコンの開発においては、今後増加してくる高気密・高断熱住宅に合わせた機器の高効率化と、熱環境の変化に合わせた快適性の実現が重要と考えている。
 今回の新製品“霧ヶ峰FZシリーズ”では、低負荷から高負荷までの広い範囲で高効率運転を可能にするハード省エネ技術、及びムーブアイmirA.I.(ミライ)を搭載し、少し未来の体感温度を先読みして快適性を高めるソフト省エネ技術の双方が評価され、経済産業大臣賞を受賞した。以下に技術的特徴について紹介する。

2.製品の技術的特徴
①Y-Δ結線切換えDCモータの開発
 ルームエアコンでは、圧縮機を駆動させるための電力が約8割を占めており、内蔵されているDCモータが高い省エネ性を支えていると言っても過言ではない。
 一般的にDCモータは、コイルの巻数を増やすとコイル電流が低減してモータ効率は上昇するものの、永久磁石によってコイルに生じる逆起電圧も上昇するため、高回転数(定格)ではインバータ出力電圧の制約によりコイルに電流を流して逆起電圧を抑制する必要が生じる。その結果、高回転数でのモータ効率が低下し、ハイパワー駆動が不可能となる。エアコンは省エネ性と共にハイパワーも要求されるため、コイルの巻数を増やせないという課題があった。
 そこで、低回転数では「Y結線」、高回転数では「Δ結線」を電磁リレーで切換える世界初の方式を開発した。結線切換えによりコイルの電圧を可変させて、コイルの巻数を従来比で60%増加しつつ、低回転数と高回転数で二つのピークを持つ高効率運転が可能となる。この技術により、低回転数(中間)での大幅な省エネ改善を実現している。
②住宅の熱損失係数(Q値)の学習
 実際に高断熱・高気密住宅でエアコンを運転させてみると、設定温度に到達した後の冷やし過ぎ(暖め過ぎ)によって快適性が損なわれているケースがあることがわかった。そこで当社実証試験住宅を使用し、外気温と室温の温度差(ΔT)に対する空調負荷をプロットしたところ、ほぼリニアな関数となることがわかった。この関数から住宅の熱損失係数に相当する“Q値”を高い精度で分析・学習できる画期的なアルゴリズムを開発した。この技術により、エアコンを運転する前から住宅の空調負荷を推定することが可能となり、設定温度到達後の冷やし過ぎ(暖め過ぎ)を抑制しつつ、高い快適性も実現出来るようになった。
③先読み運転による節電
 外気温と日射熱の変動を模擬した当社環境試験室において、6時~18時の積算電力を従来機種と比較したところ、約10%節電出来ていることがわかった。暑い寒いを感じる前に先回りして空調することで、高い快適性を実現するとともに、省エネ性も進化させている。

3.おわりに
 低負荷から高負荷の広い範囲において高効率化を実現できる「Y-Δ結線切換えDCモータ」をルームエアコン向けに世界初で開発し、4.0~9.0kW全ての能力帯で業界トップのAPFを達成した。
 また、ムーブアイmirA.I.を搭載し、住宅の断熱性能を学習しつつ、外気温や日射の時系列な影響を加味して、少し未来の体感温度を先読みすることで、従来機種と比較して約10%節電を実現した。



(d)Y結線とΔ結線の電流と電圧の関係            

図1 Y-Δ結線切換えの技術的特徴