海外短信

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No.653 2017年10月

欧州EPEE EU加盟国に速やかなモントリオール議定書キガリ改正の批准を要請
 欧州における冷凍空調の業界団体である欧州エネルギー・環境パートナーシップ(EPEE)は、EU加盟国に対してモントリオール議定書キガリ改正の速やかな批准を要請した。これにより世界でのHFCの段階的削減を開始することができる。
 EPEEのアンドレア・フォクト事務局長は「EUは気候変動に取り組む世界での努力をリードする。正式にキガリ改正を批准する用意はできており、EU加盟国による批准を待っている」と述べた。
 キガリ改正を2019年1月に発効させるためには20カ国の批准が必要であり、これはEU加盟国だけで達成できる。(写真1)



ドイツ HFO R1233zdの禁止を主張
“オゾン層破壊係数がゼロではない”
 ドイツの環境庁(UBA)は欧州委員会(EC)に、オゾン層破壊物質の見直しの一環として、HFO R1233zdは禁止すべきだと述べた。HFOは低GWP冷媒として今後主要な代替冷媒になろうとしている折から、この発言は冷媒産業界に波紋を広げており、自然冷媒の熱心な推進者はこれを機会に自分たちの正当性を主張している。
 欧州委員会は、オゾン層破壊物質規制を評価するとともにこの法律が目的に合致するかどうか判断するための工程表の立案に関する協議への対応を公表したばかりである。ドイツ環境庁はロードマップのまとめでオゾン層破壊物質の厳格な禁止を求めており、オゾン層破壊物質にはターボ冷凍機用に開発されたHFO R1233zdも含めるべきだと主張している。この根拠として最近の調査でHFOはオゾン層破壊係数(ODP)が0.00034と報告されたことがある。この値はきわめて小さなものであるが、UBAはこのレベルでも環境に負の影響を与えると懸念している。「ODPがゼロではないにもかかわらず、この物質は生産され、冷凍の分野で新たな用途に使われようとしている」と強調している。
 R1233zdはハネウェルによって生産され、ソルスティスzdとして販売されている。ターボ冷凍機に使用されていたR123がオゾン層破壊物質として生産を停止し、この代替物質として広く使用されている。ハネウェルは「科学的にR1233zdはオゾン層に影響を与えることはないと立証されている。国連環境計画(UNEP)の技術委員会でもオゾン層破壊物質ではないとされている。また今日現在ほかに代替物質はない」と述べている。
 欧州委員会の対応が注目されている。
〔RAC, September 2017〕


欧州 低GWP冷媒を取り扱う技術者の育成基盤を整備

冷凍空調技術者の世界標準を目指す
 欧州の冷凍空調産業界は、HFCの段階的削減に伴い、代替となる低GWP冷媒を取り扱うことのできる技術者の育成に取り組んでいる。
 育成基盤を整備し長期的に技術者を育成する。EUの環境気候行動基金が資金を拠出し、欧州における共同事業体としてリアル・オータナティブ・フォー・ライフを設立。自然冷媒と微燃性冷媒の双方を含めた代替冷媒に焦点を当てて、教材や技術を開発している。
 狙いは欧州全体に“低GWP冷媒を取り扱える技術者”の共通した基盤を創造することにあり、世界でHFCの段階的な削減が進むにつれて、このコンセプトを世界に広げていくことにしている。
 教材の開発と共に、実際の作業の実施訓練も導入する。“低GWP冷媒を取り扱うためのスキルと要求事項の世界標準を目標としている”と共同事業体は述べている。プロジェクトではベストプラクティスを普及促進すると共に、認識、経験、および知識の増加を図っていくことにしている。プログラムは13言語、15か国で実施される。
〔RAC, August 2017〕


米連邦高裁“EPAのHFC段階的削減を停止”
現状ではHFCは大気浄化法の適用外と判決
 米連邦高裁が“大気浄化法では環境保護庁(EPA)がHFCの使用を禁止することはできない”との判決を下した。メキシケムフロー社がEPAを訴えていた事案で、コロンビア特別区連邦控訴裁判所は、2対1で原告の訴えを認めた。判決では、大気浄化法612項はオゾン層破壊物質についてのみ規定しているため、この条文でHFCを禁止することはできないとしている。
 高裁は“連邦議会はまだ気候変動全般についての法律を制定していない。EPAが法律の空白を埋め、HFCを規制しようとする努力は理解するが、EPAは連邦議会による法制化のもとで活動すべきである”と述べている。
 米国冷凍空調工業会(AHRI)のステファン・ユーレク会長は「この判決は我々の産業にとって重要な意味を持っている。EPAの対応を注目していく。高裁からはこのような判決がでたが、工業会としては地球規模でHFCの使用を段階的に削減していくキガリ改正を批准し、実施していく立場には変わりない」と述べている。


〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News August 21, 2017〕


米EPA ケマーズの“オプテオンXP44,XP40,XP10”をSNAPで承認
 米ケマーズは7月21日、“米国環境保護庁(EPA)が低GWP冷媒であるオプテオンXP44、XP40およびXP10の使用を承認した”と発表した。
 オプテオンXP44(R452A)は冷凍車および冷凍食品用のリモートコンデンシング・ユニットでの新規またはレトロフィット冷媒として使用が許可された。オプテオンXP44はGWPがR404Aのほぼ半分であり、吐出ガス温度はR404Aとほぼ同じとなっている。
 XP40(R449A)は冷凍倉庫および産業用プロセス冷凍装置での新規とレトロフィットでの使用が承認された。
 XP10(R513A)については住宅用の新規およびレトロフィットでの除湿器での使用が認められた。
Chemours July 21 news
〔JARN, August 25 2017〕


中国 インテリジェント無人店舗がオープン
冷凍装置の新たな需要先として伸長の見込み
 中国ではオンラインとオフラインを結び付けた無人店舗が新しい時代のトレンドになろうとしている。(写真2)
 アリの無人アモイコーヒーが7月にオープンした。スマートフォンをかざして入店し、セルフサービスでオーダーするだけで、現金での支払いは不要になっている。サン・アート・リテイル・グループは無人のコンビニエンス・ストアーを6月にオープンし、1年以内に5,000店まで拡大する計画である。
 コストが安いため、中国では今後10年間で無人店舗の数は20万店にまで増加する見込みとなっている。一つの店舗で5台から10台の冷凍装置が装備されるため、新たな業務用冷凍装置の需要は100万~200万台に達する。ひとつの冷凍装置の価格を5,000人民元(約8万円)とすると無人店舗の冷凍システムの総需要規模は50~100億人民元(約800~1600億円)と見込まれる。

写真2:上海の無人コンビニエンス・ストアー
〔JARN, August 25 2017 Unmanned Retail Opens to Meet Demand from the Cold Chain Industry


中国 国家戦略“インターネット+”のもとでコールドチェーンの開発を加速

冷凍車の温度管理が厳しくなる模様
 中国国務院弁公庁はコールドチェーン・ロジスティックスの開発加速についてのガイドラインを発行した。ガイドラインでは冷凍車についても規定されている。
 ガイドラインは関係部門の責任を明らかにしており、冷凍車の温度のモニタリングについては技術基準や試験方法を規定しなければならない。温度のモニタリングに要求される事項は、国家基準として明確化され、冷凍車の性能評価のベースとなる。
 ガイドラインでは冷凍車は全地球測位システム(GPS)、自動温度モニタリングシステム、記録システム、および制御システムを装備することになっている。コールドチェーン・ロジスティックスでは、モバイルインターネット、クラウド、IoTなど中国の国家戦略である“インターネット+”のもとで、冷凍倉庫と冷凍車を統合しようとしている。
〔JARN, August 25 2017 Refrigerated Trucks Require More Stringent Temperature Management

以上
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