関連法規 / オゾン層保護法
1996年3月,化学品審議会オゾン層保護対策部会中間報告
back

 

1996年3月,化学品審議会オゾン層保護対策部会中間報告

next

 通産省(当時,現経済産業省)の化学品審議会オゾン層保護対策部会(当時,現産業構造審議会化学・バイオ部会)は1996年3月14日,中間報告をとりまとめた。オゾン層の保護対策については,CFC等の全廃,HCFC規制の開始等があり大きな節目を迎えているが,この報告書では,<1>HCFC及び臭化メチルの規制への対応,<2>CFC等全廃への対応,<3>発展途上国におけるCFC等削減の支援等,新たな課題への取組みを検討,明らかにしている。中間報告のほぼ全文を紹介する。

I.はじめに

1.オゾン層保護対策の経緯

 上部成層圏(地上約20km〜40km)のオゾン層がCFC(クロロフルオロカーボン)等のオゾン層破壊物質により破壊されているおそれがあることが初めて指摘されてからすでに20余年が経つ。
 その間,オゾン層保護対策については,1985年に「オゾン層の保護のためのウィーン条約」,1987年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され,地球環境問題の先駆けとして各国の協力のもとに対策がとられた。
 モントリオール議定書は,オゾン層を保護する観点から,CFC等のオゾン層破壊物質の大気中への放出量を抑えるために,CFC等の生産量及び消費量(生産量+輸入量−輸出量)を段階的に削減し全廃することとしている。これは,オゾン層破壊物質が化学的に非常に安定であるとともに,その需要が多岐にわたっているため,末端の使用段階における排出規制が困難なことから,供給段階での規制が採用されたものである。
 その後,科学的知見の蓄積に伴い規制強化の必要性が認識され,1990年及び1992年に議定書の改正が行われた。
 こうした国際的な枠組みに的確に対応するため,我が国においては,1988年に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)が制定され,1989年からCFC等の生産規制等が開始,その後,モントリオール議定書の改正を受けてオゾン層保護法が2度にわたり改正された。
 さらに,昨年12月には,議定書締約国会合において,先進国におけるHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)及び臭化メチルの規制強化や発展途上国におけるCFC等の全廃期限の設定等を内容とする議定書の調整が決定された。

2.我が国におけるオゾン層破壊物質の削減状況

 CFC等は,その化学的安定性等の優れた性質から,電子部品等の洗浄剤,カーエアコン,業務用冷凍空調機器,家庭用電気冷蔵庫等の冷媒,断熱建材,家庭用冷蔵庫の断熱材等の発泡剤,エアゾールの噴射剤等の多岐にわたる分野で使用されており,規制開始時には,これら全ての用途について代替物質・代替技術へ転換し,需要を削減していくことには相当の困難が予想されていた。
 しかしながら,政府の施策や関係者の理解と積極的な取組により,他の先進国と同様に,ハロンについては1993年末をもって,CFC,1,1,1-トリクロロエタン,四塩化炭素,HBFCについては昨年末をもって,我が国においても生産・消費の全廃が達成された。とりわけ,この間の産業界の真摯な努力は,世界でも有数のCFC消費・生産国であった我が国の円滑な全廃を実現する上で看過することはできない。
 また,臭化メチルは昨年から,HCFCは本年から規制が開始されている。

3.今後のオゾン層保護対策の検討

 以上のように,昨年から本年にかけて,<1>オゾン層保護対策の重要課題であったCFC等の全廃,<2>HCFC及び臭化メチルの規制の開始,<3>発展途上国におけるオゾン層破壊物質の削減スケジュールの決定等があり,オゾン層保護対策は,大きな節目を迎えている。
 今後これまで以上に効果的なオゾン層保護対策を講じていくためには,こうした節目に,新たな課題への対応策を明らかにする必要がある。このため,今次「今後のオゾン層保護対策の在り方」について,昨年9月から検討を行ってきたものである。

 

II.オゾン層の破壊の現状及び今後の見通し

 国連環境計画の評価委員会(アセスメントパネル)は,最新の科学的知見に基づいて検討し,現在までの取組の成果及び今後の見通しを,以下のとおり報告している。

  • 1992年,1993年及び1994年の南極域オゾンホールは,記録に残る最大のものであった。
    1970年代末に初めて出現して以来,南極域オゾンホールは,毎年季節的に出現し続け,この数年間の発生は特に顕著である。1992年,1993年及び1994年の南極域オゾンホールは地域的広がりが最大であるとともに上空のオゾン全量も最小であった。
  • 記録的に低いオゾンレベルがこの数年間に全地球的に測定された。
    異常なオゾン減少が1992年と1993年に南北半球の中緯度で観測された。1979年から1994年の期間に,南北半球の中緯度において,10年当たり約4〜5%のオゾン濃度の減少が観測された。
  • 大気中のCFC等の濃度の増加率は鈍化してきている。
    CFC-11,CFC-12等の大気中濃度の増加は減速しつつある。また,大気寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンの濃度は,既に低下してきている。これは,モントリオール議定書による規制の効果が現れてきたものである。
  • 成層圏の塩素濃度は今後3〜5年で減少に転ずる。
    対流圏における塩素及び臭素の量は1994年にピークに達し,成層圏における塩素及び臭素の量は3〜5年のタイムラグを経て今世紀末にピークに達するものと見込まれている。
    注)成層圏中の塩素等の濃度が増加するとオゾン層は破壊され,逆に,塩素等の濃度が低下するとオゾン層は回復するという関係にある。
  • オゾン層は21世紀初頭から回復に転ずる。
    全ての締約国が1992年改正議定書に基づく規制を遵守すれば,来世紀初頭からオゾン層は回復に転じ,南極のオゾンホールも2045年頃までには出現しないようになると予測されている。
モントリオール議定書による規制強化の推移
区 分 制定時(1987) ロンドン(1990) コペンハーゲン(1992) ウィーン(1995)
特定フロン
特定ハロン
998:50%以下
1992:100%以下
2000:全廃
2000:全廃
1996:全廃
1994:全廃
1996:全廃
1994:全廃
その他CFC
四塩化炭素
トリクロロエタン


2000:全廃
2000:全廃
2005:全廃
1996:全廃
1996:全廃
1996:全廃
1996:全廃
1996:全廃
1996:全廃
HCFC
HBFC
臭化メチル




2030:全廃
1996:全廃
1995:100%以下
2020:全廃
1996:全廃
2010:全廃
注:議定書では,各物質の消費量(生産量+輸入量−輸出量)と生産量を,基準年の生産実績をベースに規制(ただしHCFCは消費量のみ)。

 

III.今後のオゾン層保護対策の在り方

1.基本的な考え方

 オゾン層保護対策の基本は,モントリオール議定書で定められた国際的な義務を的確かつ円滑に実施することであり,新たに規制が開始されたオゾン層破壊物質の削減・全廃を着実に推進する必要がある。また,我が国が地球環境の分野において世界に貢献すべき立場にあり,オゾン層の保護に率先して努力すべきことを踏まえれば,国際的義務の遵守に留まらず,発展途上国におけるオゾン層破壊物質の削減支援や機器に含まれているオゾン層破壊物質の回収・再利用・破壊等についても一層努力していくべきである。

特定フロン等の各用途における転換状況
用 途 従来の使用物質 現在の主な転換先

  

カーエアコン CFC-12 HFC-134a
家庭用電気冷蔵庫 CFC-12 HFC-134a
HCFC-22/CFC-115 HCFC-22
業務用冷凍機器
(冷凍ショーケース等)
CFC-12 HCFC-22,HFC-134a
HCFC-22/CFC-115 HCFC-22
大型冷凍空調機
(遠心冷凍機,スクリュー冷凍機等)
CFC-11 HCFC-123
CFC-12 HFC-134a
HCFC-22
ルームエアコン HCFC-22
パッケージエアコン HCFC-22

 
硬質ポリウレタンフォーム
(冷蔵庫等の断熱材等)
CFC-11 HCFC-141b
軟質ポリウレタンフォーム
(クッション等)
CFC-11 塩化メチレン,水,空気発泡等
ポリオレフィンフォーム
ポリスチレンフォーム
CFC-12 HCFC-225,塩化メチレン,水系洗浄剤等

金属,精密部品等洗浄 CFC-113 石油系洗浄剤,水系洗浄剤等
ドライクリーニング CFC-113 石油系洗浄剤,水系洗浄剤等
スプレーの噴射剤 CFC-12 LPG,HFC-134a

2.具体的な取組

(1) HCFC及び臭化メチルの規制への対応

 HCFCは,我が国では主にCFCの代替物質として冷媒用,発泡用等に約5万トン(1995年)が生産されているが,オゾン破壊係数はCFCの1/10〜1/20程度と小さい。我が国では本年1月から規制を開始しているが,昨年12月の議定書締約国会合において,各国が遵守すべき消費量の上限を引き下げるとともに,全廃期限を2030年から実質上2020年に前倒しすることが決定されたところである。

我が国におけるCFCの消費量の推移

 臭化メチルは,我が国では検疫燻蒸用,土壌燻蒸用等に8千トン(1995年)が生産されているが,オゾン破壊係数はCFCと同程度に高い。我が国では,昨年3月より規制を開始しているが,昨年12月の議定書締約国会合において原則2010年全廃が定められるとともに,そのオゾン破壊係数が最近の科学的知見の蓄積を踏まえ0.6に改正されたところである。
 これらの規制物質については,関係者が円滑に対応できるよう,政府は従来より我が国が遵守しなければならない消費量等の基準限度を公表しているが,今般の規制強化措置に係る改正をすることが必要である。また,臭化メチルに係るオゾン破壊係数の修正についても,法令上所要の整備を行う必要がある。
 これらの規制物質については,議定書上の削減スケジュールを基本としつつ,技術的・経済的な水準・動向を十分勘案し,可能な限り早期に円滑な削減を図るべきである。
 我が国におけるHCFC等の使用状況,代替物質・代替技術の開発状況等を踏まえ,技術的・経済的な消費量の削減・全廃の可能性について検討した場合,昨年12月の議定書締約国会合で決定されたスケジュールに基づいた削減・全廃の円滑な実施を確保するためには,事業者,政府等は,次のスケジュールを目標に削減・全廃を達成するべきである。

○HCFC-22 (1)冷媒(新規)  2010年全廃
(2)冷媒(補充用) 2020年全廃
○HCFC-141b

(1)洗浄剤 2000年以降漸次削減
  (2000年までにおいても極力増加を抑制する。)
(2)発泡剤 2004年全廃
○HCFC-142b 発泡剤 2010年全廃
○HCFC-225 洗浄剤 2010年以降漸次削減
○臭化メチル 消費量・生産量を漸次削減する
(なお,今後の我が国における代替物質・代替技術の開発・普及等の進捗状況等を踏まえ,
必要に応じ本スケジュールを見直すことが適当である。)

 このため,事業者等は,代替物質・代替技術の開発,HCFC及び臭化メチルの排出抑制・使用の合理化に努めるべきである。
 政府としても,これらの削減・全廃が円滑に行われるよう,情報提供・広報活動及び代替物質の開発を促進するとともに,今後の削減状況等を見つつ,必要に応じ,税制・金融措置等の代替促進策を講じていくことが必要である。
 また,政府は,オゾン層の破壊のメカニズム等についての研究やオゾン層の状況に関する観測・監視に引き続き努めることが期待される。

我が国におけるHCFC削減目標

 

HCFC品目別・用途別出荷量
(1995年)        (単位:千トン ( )内ODPトン)
  冷媒 発泡 洗浄 その他 合 計
HCFC-22 30.6 0.8 0 0.1 31.5(1,731)
HCFC-141b 0 8.6 2.1 0 10.7(1,177)
HCFC-142b 0 3.7 0 0.1 3.8(249)
HCFC-225 0 0 1.2 0 1.2(31)
HCFC-123 0.5 0 0 0 0.5(9)
HCFC-124 0 0.02 0.02 0 0.04(1)
合 計 31.1 13.1 3.3 0.2 47.7(3,198)
(日本フルオロカーボン協会調べ)

(2) CFC等全廃への対応

 我が国においては,モントリオール議定書の削減スケジュールを遵守し,社会的・経済的に大きな混乱もなく,昨年末にCFCの生産等の全廃を達成した。
 しかしながら,中小企業の洗浄分野等では,資金や技術的知見の不足等から,未転換の事業者が少なからず存在しており,早急な転換が必要である。政府としては,これら未転換の事業者の早期転換を支援するため,金融・税制上の措置,中小企業事業団による指導事業等を引き続き講じることが必要である。
 なお,塩素系の溶剤をはじめ代替洗浄剤については,一般に大気,水質等の環境保全,労働安全等の観点から種々の規制の対象となっているが,使用の際にはこれらを遵守徹底するとともに,事業者自らが排出の抑制等に努めることが必要である。
 また,議定書締約国会合で,CFC等の必要不可欠な用途(エッセンシャルユース)として生産・消費の全廃の例外に認められているもののうち,量的に上限が定められていない試験研究及び分析用途について,我が国においても例外とするよう,法令上の所要の措置を講じる必要がある。

(3) 発展途上国におけるCFC等削減の支援

 発展途上国については,議定書上,規制の導入に10年間の猶予期間が与えられ,1998年末まで規制が実施されないこともあり,多くの発展途上国においては,産業の発展とともにCFC等の使用量は増加傾向にある。
 昨年12月の議定書締約国会合で発展途上国に係るCFC等の削減・全廃スケジュールが決定されたところであるが,発展途上国における規制が的確に実施されなければ,先進国におけるCFC等の全廃の効果が薄れてしまうばかりか,再びオゾン層の破壊が広がり始めることが懸念される。
 こうしたことから,発展途上国におけるCFC等の削減は,今後のオゾン層保護のためには最も重要な対策の一つであり,その支援をすることは,我が国の国際社会の一員としての責務である。
 我が国としては,発展途上国におけるCFC等の削減を円滑にするよう,これまでに蓄積した技術の積極的な発展途上国への移転を図るべきである。
 このため,政府としては,我が国における削減・全廃の技術や経験が散逸しないように努めるとともに,発展途上国のニーズを十分調査・把握し,代替技術の移転,民間ベースでの国際協力の促進等をこれまで以上に充実させていくことが必要である。特にアジア太平洋地域については,我が国と密接な関係にあり,同地域における円滑な転換は,オゾン層の保護の観点ばかりでなく,我が国産業にとっても望ましいことから,特に重点的に対策を講じるべきである。
 発展途上国の日系企業については,議定書によるスケジュールや各国が独自に定めた削減・全廃時期を遵守することは当然であるが,発展途上国における削減・全廃に積極的に協力し,自発的な早期全廃を図ることが期待される。

発展途上国におけるCFC消費量の推移
  1991 対前年比 1992 対前年比 1993 対前年比
先進国 433 368 75% 251 68%
途上国 80 128 160% 134 105%
(出典:UNEPデータ等)

 

モントリオール議定書で定められた発展途上国の規制スケジュール規制開始
  規制開始 全廃時期 基準年
CFC 1999年 2010年 1995年〜1997年の平均
ハロン 2002年 2010年 1995年〜1997年の平均
1,1,1-トリクロロエタン 2003年 2015年 1998年〜2000年の平均
HCFC 2016年 2040年 2015年
臭化メチル 2002年 凍 結 1995年〜1998年の平均
(1995年ウィーン調整による。)

(4) CFCの回収・再利用・破壊の促進

 CFCの回収は,<1>今後も補充用等に必要となるCFCの確保に資すること,<2>CFCの大気中への放出を抑制し,オゾン層破壊の進展の軽減に資すること,という意義を有している。

a)再利用需要が存在する分野
 カーエアコンの冷媒等のように再利用需要が存在する分野においては,基本的に市場メカニズムの活用による事業者の取り組みにより回収等が進められている。昨年末でCFCの生産が全廃となり,今後補充用冷媒への新規の供給がなくなることから,事業者等は引き続き回収・再利用に努めることが重要である。

b)再利用需要が存在しない分野
 家庭用電気冷蔵庫の冷媒等のように再利用需要が存在しない分野においては,事業者,地方自治体により自主的な取組が始まっている。今後は,こうした自主的な取組を拡大していくことが必要であり,CFC破壊技術の早期確立・普及及び回収処理に関する社会的システムの形成を図ることが重要である。
 社会システムの構築には,回収処理の役割分担やコスト負担の在り方について,地方自治体,事業者,消費者の関係者がコンセンサスを形成する必要があるが,その場合,コストについては,地方自治体や事業者だけでなく,廃冷蔵庫の消費者等機器のユーザーにも合理的な負担が求められるべきであると考えられる。
 このため,政府としては,技術確立後の普及の可能性をも勘案した上で,多様な破壊技術の早期確立を図るとともに,回収処理の役割分担やコスト負担の在り方に関する関係者間のコンセンサス形成のため,事業者等に対して一層の努力をするよう要請するべきである。特に,地方自治体による廃棄物処理と密接に関係する廃冷蔵庫等からのCFCの回収については,地域の実情に応じたものにすることが適当であり,政府は,参考となるような地域における取組の実践例を広く関係者に周知するべきである。また,関係省庁がより効率的なCFCの回収が行われるよう一層連携を深め,取組の充実を図ることが必要である。
 なお,発泡分野で使用されているCFCについては,技術的に回収が困難であり,今後回収技術の開発等が望まれる。

○産業界における取組状況

<1> カーエアコン
 自動車メーカーは,1991年より自動車販売店に全国で約16,000台の回収機を配備し,カーエアコン等の修理時や,使用済車から冷媒を回収し,カーエアコンの補充用として再利用を実施している。
<2> 冷凍空調機器
 冷凍空調業界は,冷媒用CFCの回収・再利用のため,埼玉県に「冷媒フロン再生センター」を建設し,回収された冷媒を補充用に精製しているほか,技術講習会を開催し,回収技術者の技術教育を行うとともに,回収を容易にするための機器設計基準や確実な回収を行える装置の普及のための回収装置の能力等に関する業界規格の策定に努めている。
<3> 家庭用電気冷蔵庫
 家電メーカー等は,多くの都道府県で設置されている特定フロン回収協議会に参加し,廃冷蔵庫からのCFC回収の社会システムづくりに努力している。
 また,家電製品メーカー及び流通業で組織する廃家電品適正処理協議会が,CFC回収機約300台を全国の自治体に無償で供与したところである。

(5) 代替物質が有する温室効果への配慮
 CFC等は,オゾン層破壊物質であるとともに,強力な温室効果ガスでもあるため,それらの削減・全廃は,地球温暖化防止の観点からも相当の効果があったものと考えられる。
 しかしながら,CFC等の代替物質として使用又は有力視されているHFC(ハイドロフルオロカーボン),PFC(パーフルオロカーボン)等の地球温暖化係数は,CFCに比べれば小さいものが多いが,CO2に比べれば約1000倍〜10000倍とされている。
 地球温暖化については科学的に未解明な部分が残されているが,今後HFC等の消費は増加することが見込まれるため,事業者等は,今後の事業活動に際しては,これら物質の温室効果を踏まえて,HFC等の排出の抑制,使用の合理化,代替物質の開発等に努めていくことが期待される。
 特に地球温暖化への影響については,HFC等の大気への放出による「直接的な温暖化効果」だけでなく,HFC等が使用されている機器が消費するエネルギー等に係るCO2による「間接的な温暖化効果」も含めて「総合的な温暖化効果」を勘案することが必要である。
 政府は,今後の気候変動枠組条約等の国際的動向を踏まえつつ,我が国のHFC等の毎年の生産量,消費量等を把握するなど,CFC等の代替物質や工業プロセスにおける副生HFC等による地球温暖化問題への対策を着実に推進していく必要がある。

我が国におけるHFCの生産量の推移

○産業界の取組状況

<1> カーエアコン
 自動車業界は,従来から省冷媒型エアコンの開発及び冷媒の低漏洩化を図っており,今後,エアコン機器メーカーと連携し,使用合理化を一層推進する。
<2> 冷凍空調機器
 冷凍空調機器業界は,TEWI(総合温暖化因子)の考え方に基づき,(a)機器に適用した場合のエネルギー効率を最大にするように冷媒を選定する,(b)冷凍空調機器の地球温暖化に与える影響の総合評価を推進する等,冷凍空調機器がライフサイクルにわたり地球温暖化へ与える影響を最小化する機器の開発に取り組んでいる。また,設備業界もTEWIの考え方を踏まえて設備の設計・施工・運転・保守を推進している。
注)TEWI(総合温暖化因子):直接温暖化効果+間接温暖化効果
<3> 家庭用電気冷蔵庫
 家電業界は,TEWIの考え方に基づき,冷蔵庫のライフサイクルにわたる地球温暖化への影響を最小化するように冷媒及び断熱材用発泡剤を選定するとともに,そのエネルギー効率の改善に引き続き取り組んでいる。
<4> 半導体のエッチング
 半導体業界は,地球温暖化防止の観点から,半導体製造工程において排出されるエッチングガス等をエネルギー効率良く(CO2をなるべく出さずに)除去する手法を開発中である。更に,今後,エッチングガス等のリサイクル型除去技術及び代替物質の開発に向けて調査・検討を行う。
<5> フルオロカーボン製造工程
 フルオロカーボンメーカーは,プラント稼働中に副生する温室効果ガスの排出抑制のため,最適条件でのプラント稼働を実施するとともに,副生成物の新規用途の開発に取り組んでいる。

CFC及びその代替物質の有する温室効果
(出典:IPCC1995年報告書等)
物 質 名 オゾン
破壊係数
(注1)
地球温暖化係数
(100年間)
(注2)
寿命
(年)
(注3)
主 な 用 途
CO2 0.0 1.0 50〜200  
CFC-11 1.0 4000 50 ウレタンフォームの発泡剤
CFC-12 1.0 8500 102 カーエアコン,家庭用冷蔵庫等の冷媒,
ポリエチレンフォーム,
ポリスチレンフォームの発泡剤,
エアゾールの噴射剤
CFC-113 0.8 5000 85 電子部品等の洗浄剤
HCFC-22 0.055 1700 12.1 ルームエアコン等の冷媒
HCFC-141b 0.11 630 9.4 ウレタンフォームの発泡剤
HCFC-142b 0.065 2000 19.5 ポリエチレンフォーム,
ポリスチレンフォームの発泡剤
HFC-134a 0.0 1300 14.6 カーエアコンの冷媒,家庭用冷蔵庫の冷媒,
エアゾールの噴射剤
HFC-125 0.0 2800 32.6 ルームエアコン等の代替冷媒(開発中)
HFC-23 0.0 11700 264 HCFC-22の副生成物
PFC-14(CF4 0.0 6500 50000 半導体製造用エッチングガス,
超低温冷凍機用冷媒
PFC-116(C2F6 0.0 9200 10000 半導体製造用エッチングガス,
半導体製造装置クリーニングガス
PFC-51-14(C6F14 0.0 7400 3200 整流器用冷媒,溶剤
SF6 0.0 23900 3200 半導体製造用エッチングガス,
遮断器・変圧器用絶縁ガス
(注1)   オゾン破壊係数(ODP):大気中に放出された単位重量の当該物質がオゾン層に与える破壊効果を,CFC-11を1.0として相対値として表したもの。
(注2)   地球温暖化係数(GWP):大気中に放出された単位重量の当該物質が地球温暖化に与える効果を,CO2を1.0として相対値として表したもの。
(注3)   寿命:当該物質の大気中における平均寿命。

 

top