機関誌「冷凍と空調」 / 2002.8 (NO.495)

法規メモ

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建築物環境衛生管理基準を改正へ
―「ホルムアルデヒド」指標に換気基準を強化―

 

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「ビル管法」)に基づく建築物環境衛生基準の改正作業が進められています。シックハウス症候群問題への対策として,百貨店や事務所ビルなどの新築時にホルムアルデヒドなどの濃度の測定を義務付ける内容となっています。この秋に政令と省令が改正され,来年4月1日施行の予定です。
(編集係)

●建築基準法改正と連携

 7月12日に建築基準法が一部改正となったが,化学物質の観点からの換気設備の義務の強化が主な改正内容となっている。近年,シックハウス症候群の問題が持ちあがり,その対策の一環として,化学物質の放散を防ぐ建築資材の使用と換気設備の設置を義務付けている。法律の改正が終わり,国土交通省では関係する政令と告示の改正作業に入っている。
 建物を建てる際の基準は,建築基準法で規定されているが,厚生労働省の通称「ビル管法」,正式名称は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」は,ある一定規模のビルが建てられた後についての衛生管理をどう担保するという観点からの基準で,現在,この法律の政令と省令の改正を10,11月頃行う予定で進められており,来年の4月1日施行の予定である。

●個別空調方式の建物も適用

 この法律では,特定建築物という建物を定義している。その要点とは,特定用途といわれる用途として,集会所とか学校などの施設を定め,それに加えて,延べ面積が3000m2を超えるような建物を対象に,届出を義務付け,管理を行うものである。
 空調関係に特記した改正の内容の一つのポイントは中央管理方式の限定の撤廃である。ビル管法の中で空気環境の調整の項目には特定建築物の中の空気調和設備と機械換気設備がある。空気調和設備が取り付けられている建物については空気環境の基準がある。現状では,高層ビルで中央管理室のようなものがあり,すべて一か所で管理して熱源システムが一つというものに限定されているが,エアコンの大型化などにより,室外機がそれぞれ別にあり,中央管理室を設けないで管理している建物が増えてきて,必ずしも中央管理方式に限定しないことが望ましいとの議論があり撤廃することになった。これが空調関係の一番大きな改正点となる。

●シックハウス対策に

 次にシックハウス症候群の対策である。シックハウス症候群というのは医学的に証明された病名ではなく,総称で用いられているものだが,建物の高気密化と,建材,接着剤などの化学物質の使用が増えたことが要因と考えられている。シックハウス症候群に関しては,新聞紙面や雑誌では化学物質に特記した記事が目立つが,それ以外にもカビやダニ,埃などさまざまなものでアレルギー症状や体調不調を訴える人が増えてきている。シックハウス症候群の予防として,一番大事なのは換気で,化学物質も一つの原因であることから原因物質の一つである化学物質,つまりホルムアルデヒドの量をチェックしたうえで使っていくことが必要ではないかという提言を踏まえて,換気基準に加えたことがある。建物の場合,新築,増改築,大規模な修繕などの際に,測定をし,労働厚生省の定めた基準値(0.08ppm)以下を満足するよう定めている。
 シックハウス症候群の原因物質としてはホルムアルデヒドだけでなく,他にもいろいろあるが,ホルムアルデヒドが一番影響が出ると考えられている。その理由として,建材や内装材,接着剤,塗料などに幅広く使われているケースが多いからで,この問題に関して測定の義務付けが予定されている。

●レジオネラ対策にも基準

 三番目に冷却塔や加湿装置の問題がある。空調設備の中で冷却塔や加湿装置で問題になるのはレジオネラ菌などによる水の汚染である。レジオネラ菌については浴場施設や24時間風呂の事例がよく知られてており,空調による弊害の報告はないが,発生の危険性はあることから,点検,清掃を義務付けることになった。空気調和設備自体の中の衛生管理についての条項を設けている。


建築物環境衛生管理基準等の改正について
(意見募集に当たっての改正内容を示した「別紙」による)

平成14年7月8日
厚生労働省健康局生活衛生課

 

 

1. 空気環境の調整について
(1)  建築物環境衛生管理基準にしたがって空気環境の調整を行わなければならない空気調和設備及び機械換気設備について,現行,中央管理方式のものに限定している規定を削除すること。
(2)  浮遊粉じんの量及び一酸化炭素の含有率の測定回数について,現行「2月以内ごとに1回」としているのを,禁煙,分煙の措置を講じている場合は「4月以内ごとに1回」とすること。
(3)  「ホルムアルデヒドの含有率」を基準に追加すること。
1)基準値は,0.08ppm(100μg/m3)とすること。
2)建築物の新築・増改築,大規模の修繕又は大規模の模様替を行った後,測定することとする(基準値を下回るまで)こと。
3)測定は,2,4−ジニトロフェニルヒドラジン捕集−高速液体クロマトグラフ法により測定する機器,4−アミノ3−ヒドラジノ−5−メトカプト1,2,4−トリアゾール法により測定する機器又はこれらと同程度以上の性能を有する測定器を用いて行うこと。
(4)  空気調和設備を設けてる場合は,レジオネラ属菌等の病原生物によって建築物内の空気が汚染されるのを防止するため,冷却塔や加湿装置の点検,清掃等の措置を講じること。
2. 給廃水等の管理について
(1)  現行,飲料水として供給する場合に限って水道法の水質基準に適合することとしているものを,炊事用,浴用その他人が直接接触する可能性のある用途に用いるため供給する場合も同基準に適合させることとすること。
(2) (1)以外の用途に水を供する場合は,人が吸引・誤飲するなどして健康を害することを防ぐための措置等を講じること。
3. ねずみ・昆虫等の防除について
 ネズミ・昆虫等の防除について,現行「6月以内ごとに1回,定期に,統一的に行うこと」としているのを,「2月以内ごとに1回,生息状況の調査を行い,必要に応じて行うこと」とすること。
4. 特定建築物の要件について
(1)  特定用途(興行場,百貨店など特定建築物の要件として定められている用途)に供される延べ面積3000平方メートル以上の建築物のうち,特定用途以外の用途に供される部分の延べ面積が特定用途に供される部分の延べ面積の10%を超える建築物を,特定建築物の対象に加えること。
(2) もっぱら事務所の用途に供される特定建築物について,建築物衛生上必要があると認めるときは,保健所等が立入検査等を行えるようにすること。


<参考>
建築物における衛生的環境の確保に関する法律について

1 制定経緯
 多数の者が利用する建築物においては,空気環境が空調等により人工的に調整されるなど利用者の意思による室内環境の調整が困難であるため,不適切な維持管理により,建築物の利用者の健康に多大な影響を及ぼすおそれがある。
 そこで,建築物の衛生設備及びその維持管理について,国民の健康の保持・増進の観点から必要な基準等を設けるものとして,昭和45年に議員立法により制定された(昭和45年10月13日施行)。

2 目的
 多数の者が使用し,又は利用する建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項等を定めることにより,その建築物における衛生的な環境の確保を図り,もって公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とする。

3 法律の概要
(1) 法律の適用を受ける建築物
 興行場,百貨店,店舗,事務所,学校等の用に供される相当程度の規模を有する建築物で,多数の者が使用・利用し,その維持管理に環境衛生上特に配慮が必要なものを「特定建築物」と定義し,本法律の対象としている。
(2) 建築物環境衛生管理基準
 特定建築物の所有者,占有者その他の者で建築物の維持管理について権限を有する者(以下「所有者等」という。)は,建築物環境衛生管理基準に従って,建築物を維持管理しなければならない。
(3) 建築物環境衛生管理技術者
 特定建築物の所有者等は,その建築物の維持管理を監督させるために,建築物環境衛生管理技術者の免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。
(4) 行政庁による特定建築物の監督
 都道府県知事(保健所を設置する市・特別区にあっては,それらの長)は,建築物の衛生的環境の確保のために必要がある場合につき,特定建築物への立入検査,改善命令等の権限が与えられている。
(5) 登録制度
 建築物衛生関係の8業種について,一定の基準を充足することを要件として都道府県知事に登録することが認められている。

 

建築物における衛生的環境の確保に関する法律の制度概要

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