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同時開催セミナーより
フロン問題を巡る今後の方向について |
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2月12日〜15日のHVAC&R JAPAN 2008の開催期間中,ビッグサイトの会議棟でセミナーが開催され,冷凍空調をめぐる講演が行われました。このうちのいくつかの講演の要約を,今後,冷凍と空調で紹介していきます。
今回は,経済産業省製造産業局化学物質管理課オゾン層保護等推進室長 勝山潔氏による「フロン問題を巡る最近の動向と今後の方向について」を紹介します。 |
(文責:編集係) |
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経済産業省 製造産業局 化学物質管理課
オゾン層保護等推進室長 勝山 潔 氏 |
| Ⅰ.2007年の出来事 |
本日は,フロン問題を巡る最近の動向と今後の方向について述べさせていただきたいと思います。 まず,昨年を振り返りながら,最近の動向がどんな位置づけになるか分かっていただこうと思います。昨年を振り返ると,何点か大きな話がございました。
○モントリオール議定書
まずはモントリオール議定書20周年という節目の年でございました。世界のオゾン層破壊物質―CFC,HCFC等ですが,この消費量は基準年比で申しますと2005年のデータで95%の削減が達成されています。先進国だけでみますと,この数字は99%を超えます。
昨年の9月,モントリオール議定書の20周年を記念する総会におきまして,途上国のスケジュールを中心にHCFCの前倒しの削減が合意されました。わが国では既に,HCFCにつきましては基準年の15%程度までに削減済みで極めて順調に進んでおり,約10年の前倒しを実現しているといっても過言ではないと思います。これもひとえに関係者のたゆまぬ努力のおかげであると思っております。
昨年は,モントリオール議定書の関係でも地球温暖化の関心のほうがむしろ強くなってきていると思います。そういう意味でCO2換算しますと,わが国は規制開始の1989年比で約8億CO2トンの削減をしているところです。 |

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○京都議定書目標達成計画
2点目ですが,京都議定書の目標達成計画の評価・見直しです。代替フロン等3ガスの排出抑制につきましても順調で,直近の排出量は2006年データで基準年の約3分の1にまで削減しています。
今後の見通しとしまして,代替フロンの使用機器の廃棄時期がいよいよ到来すること等により,排出量の増が見込まれるわけですけれども,第1約束期間中は5年平均でとりあえず基準年の約6割程度の排出量にとどまるものと推計いたしました。最新の推計では,約3100万トンの見通しとなります。これを目標との関係で申しますと,量的には2000万CO2トンを超えるほどの超過達成ということができます。また,基準年総排出量比で申しますと,プラス0.1%までに抑えるというのが現行の目標ですが,これがマイナス1.6%まで引き上げることが可能と,いわゆるマイナス6%のわが国の約束達成に向けて,大きくこの分野は貢献できて来ているのではないかということです。
○COP13での合意
最後ですがCOP13,バリ・ロードマップの件でございます。昨年12月,ポスト京都の枠組みづくりの議論が本格的に始まったと考えております。2009年までに合意をうることとされ,まさにあと2年でポスト京都議定書の議論を集中的にするということになるわけです。
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| Ⅱ.2008年を迎えて |
次に2008年を迎えての大きな前進と,その前進を踏まえました私どもの問題意識に触れさせていただきます。
○カーエアコンの新冷媒
まず第1番目ですが,カーエアコンの冷媒転換のための新しいガスの登場です。欧州規制に応じるために,カーエアコン冷媒のための新しいガスが昨年登場いたしました。直近では昨年の11月の末にイタリア・トリノで開かれた会合や先月の末に東京で開かれた会合におきまして,新しい冷媒の評価・結果報告がなされています。3つのガス―HFC134a,CO2,HFC1234yfが評価されたわけです。すなわち1234yfというガスが新しく登場しつつあるということです。これが欧州規制に応じるべく開発されたガスで,GWP値が4と聞いていますが,劇的に小さい,極めて画期的なガスではないかと思います。いろいろな課題が克服されきったわけではないようですけれども,その評価・結果報告によれば,このガスも有望ではないかと感じるところです。そしてその波及効果をどう捕らえるかと,いうことになろうかと思います。
ヨーロッパの規制は2011年からの新型式車両につきましてGWPが150を超えてはいけないという規制だったわけで,そのガスが開発されなかったならば,ヨーロッパでこの規制の背景となりましたCO2の冷媒になったかもしれないわけですが,今やCO2か1234yfということになるのかもしれません。
○中長期的な対応ステージへ
次に特定フロンから代替フロンへの転換に原因しますところの中長期的な対応へのステージに入ってきたということです。年があけ,世の中の雰囲気としては2050年を目指した,2012年より後の話に議論が移ってきていると感じます。それを代替フロン等3ガス分野にもってきて,はたと考えますと,この中長期的な対応へのステージに入ってきたといえるのではないかと思います。
従来から一番冷媒で使われてきましたHCFC22を例にいたしますと,国内では新規向けは2009年末をもって全廃するスケジュールになっております。昨年度末をもって特定フロンの新規製品への充てんはすべて終了できるほど前倒しされていると聞いておりましたが,現実には少しばかり遅れている模様です。いずれにしましても新規製品への充てんは,ほぼ終われる状況です。これはすなわちHFCにかわってくるということで,代替フロンの排出量増はむしろこれからであるということを意味するわけです。なぜならば,製品の機器の寿命は10年以上はあるものです。その機器からの排出が本格化するのは機器が捨てられるタイミングということになりますから,むしろこれから後のことになるということです。
この排出が最も多く見込まれる廃棄時の対策ということになりますと,回収破壊制度をすでに実現しており,わが国におきましては昨年10月からフロン回収破壊法を改正して,その対策も強化しているわけです。それでもなお,排出量の増加ポテンシャルといったものが今後さらに急速に増大する見込みです。少なくとも,フロン回収破壊法の改正目標であります回収率の達成は全力を期して達成しなければならないということになっておりますが,こういった排出ポテンシャルを考えますと,それだけで十分かという議論になってくるわけです。
まとめますと,2008年を迎えまして,新しい冷媒が登場したという極めて明るい話と同時に,代替フロン等3ガス分野は,特に代替フロンを中心に,これからものすごく排出ポテンシャルが大きくなるといったこと,この両面を捕らえて対応を考えていかなければいけない段階になってきています。
ポスト京都の枠組みづくりの議論がこの2年間に集中的に行われようとしています。もう少し平たく言えば,わが国におきましてはカーエアコンの冷媒というものは,いつ,何に転換されるのだろうか,また,めどが立ったカーエアコンはともかくといたしまして,それ以外のエアコンの冷媒については転換がなされないのだろうか,または回収のほかに出来ることはないのだろうかといったことがこれからの中心課題となると思っています。
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| Ⅲ .今後の方向性 |
2008年を迎えましたこのような問題意識の中で,今後の方向を考えていきたいと思います。 今後の方向でございますが,今申しました新ガス,中長期的な排出ポテンシャルということを考えれば,そこからおのずと答えが出てくるわけですが,早期の冷媒転換と当面の漏えい対策が極めて重要になってくるのではないかと認識しています。
○冷媒の早期転換の必要性
冷媒の転換の効果が本格的に表れるのは,先ほど申しました機器の寿命を考慮いたしますと10年以上後のことということになります。例えば,来年から冷媒を転換したとしましても,その排出が本格化するのはおそらく2020年以降ということになり,できる限り早い段階で転換を実現していかないと,その効果はなかなか得られないということになるわけです。冷媒を転換するということになれば,早い段階でとにかくしっかりと技術開発に努めなければいけないと思っております。
○当面の目標時期
もう一方は,ポスト京都の枠組みづくりの中での当面の目標時期までの間というものです。2050年という長期的なターゲットはあるのですが,その間の,例えば2020年とか2030年といったときにおいてはどうだという目標が定まらないと,なかなか説得力ある議論ができないという観点から,当面例えば2020年を目標にしましょうという議論が行われたといたします。そうしますと,2020年の目標を立てようとしたときに,代替フロン等3ガス分野というものは,過去に特定フロンから代替フロンに転換した分野であるから,どうしても排出増が不可避であるということを理由に「手立てはありません」という議論だけでもつのだろうかということです。排出量増が不可避な分野であれば,それだけに対策としてあらゆる手立てを講じなければならないという姿勢が求められるのではないかと思うわけです。
○政策の転換が必要
今後の方向性は,そういった観点から,早期の冷媒転換と当面の漏えい対策といったことになりますが,こういうことを申しますと,これまでの我々の政策を少し転換するような形になってくるのではないかと思います。これは技術が発展することにより政策の主脈が転換されるということになると思っています。分かりやすく申せば,これまではHFCに代わる代替物質が見当たらない。だから,しっかりと回収・破壊をしようではないか。並行して技術開発を一所懸命やる。このようなスタンスでした。これからの主脈というものは,代替物質に光が見えてきた。これを前提にすることが必要になってくる。
代替物質に光が当たってきたことで,少しロジックが変わってくると思います。それは,これまでの技術開発の成果の実用化のフェーズに入ってきたということです。もう少しいえば,これまでのような特殊機器での低GWP化ではなく,家庭用エアコンですとか業務用のパッケージエアコンといったメインストリームの機器での転換に主軸を移すべきではないか。併せて新しい冷媒の開発も早急に行うべきではないか。そのために,どんな手段が適切なのかを考える必要があるのではないか,という考え方になるのではないかと思っております。
○ストック対策について 一方,ストック対策につきましてもポスト京都の枠組みづくりの議論の過程においては,冷媒転換と同様に重視されるべきであるというようになってくると思います。経済産業省側の立場から申し上げますと,こういう対策といったものは,ストック対策よりは転換する方が社会費用的にも有効だという認識を持っています。1回製品として市場に出てしまったものに対して,大気放出を抑制するというのは非常に困難なことであります。しかし,冷媒自体を変えてしまえば,市場に出てしまったものはやむをえないかもしれませんが,やがてはその効果は劇的に生じるといった観点で,むしろ転換,そのための技術開発に力を入れてきたのが私ども経済産業省のスタンスであります。 しかし,当面の目標となるであろう2020年ぐらいをみますと,私どもも,ポスト京都の議論の中で我々の分野だけ右肩上がりが許されるのですということは,到底いえないのではないかと思います。まだ,手当てできるところがあるのではないかといわれれば,それは確かにあると思います。 そういう意味におきまして,冷媒転換と同様に,先ほど述べたような漏えい対策も非常に重要になってくるという認識でございます。
○まとめ
今後の方向をもう少しまとめますと,ポジティブな発想の徹底ということがこれから重要ではないかと思います。わが国におきましてこれまで培われてきた技術力,そしてそのポテンシャルを持ってすれば,環境規制というものは,改めて申すまでもなく,むしろチャンスなわけでありますので,わが国の産業の競争力確保のためにも高いハードルをおそれずに,むしろ自ら高い目標を掲げるぐらいの他の追随を許さない積極的な取組みが期待されるのではないかと思っております。 このようにGWP値が低いフロンというものが現実化してきますと,ODPもありませんしGWPも何百,何千,何万というものと違って一桁,これは自然冷媒といわれるようなものと同じですから,フロンと呼んでいいのかどうかも分かりませんし,むしろ違う性質の物質ということになるのではないかと思います。こういったGWP値がここまで下がったものを開発された方々のご努力は並々ならぬものがあったと思います。それをさらにまた応用するような形でよりよいものが見当たっていけば,長年にわたりますフロン問題というものの決着も遠くないと確信する次第でございます。
結論は確かに製品寿命が尽きる10年より後のことになるかもしれませんけれども,早く開発されればその時点で将来が見越せるということになりましょうから,長年の問題もそのへんで終われるのではないかと,かなり楽観的な見通しかもしれませんけれども,私なりに感じるところでございます。
以上で終わりにさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。 |