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No.662 2019年3月

トップ・インタビュー
三菱電機 安東正史 空調冷熱システム海外事業部 事業部長
“米国の業務用空調機市場で強い販売網を構築”

三菱電機の空調冷熱システム海外事業部の事業部長に就任された安東正史氏に海外での事業戦略についてJARNがインタビューした。



写真1:三菱電機 空調冷熱システム
              海外事業部安東正史 事業部長



JARN:空調冷熱システム海外事業部の事業部長に就任されての抱負は。

安東 事業部長:三菱電機の空調冷熱システムは、2020年度に向けての成長戦略として、事業拡大に焦点を当て‘アドバーンス&イノベーション2020(AI20)’というスローガンを掲げている。現在の事業だけでは持続性ある企業成長は保証されない。既存の事業の確実な成長に加えて、次のキーとなる事業領域を定めてそこで競争力を付けることが役割だと思っている。2020年の売上目標1兆円を達成するために、AI20を効果的に実行し、次の10年間に必要となる事業構造を創出する。

JARN:三菱電機として優先度の高い海外市場はどこか。欧州と米国のプライオリティは高いのか。

安東 事業部長:欧州では現在強い地位にあるのでこれを継続する。米国ではインガソル・ランドとの協業を開始した。これにより事業拡大を図る。中国は経済成長が鈍ってきたが事業方針は変えることなく事業を伸ばしていく。アジアでは次の2年、3年ではなく今後の10年間という視野で狙いとするセグメントを決めることが重要だ。

JARN:北米ではどのような事業戦略をとるのか。

安東 事業部長:北米ではインガソル・ランドと業務提携したことにより、これまでの販売チャネルにインガソル・ランド、トレーン、およびアメリカン・スタンダードの販売チャネルが加わった。これによりカバレージの高い販売網を構築することができた。同時に、トレーンの持つ強い物件セールスにおける知識を活用することで、大きく事業が伸長することを期待している。

JARN:米国でトレーンの販売店は三菱電機のVRFを販売しているのか。

安東 事業部長:トレーンの販路で扱うVRFはすべて三菱電機の製品となるので、かなり強いコミットメントだと思う。事務所、ホテル、病院、学校、その他の施設に対するトレーンの販売チャネルは全米でトップクラスで強い。トレーンの販売チャネルと三菱電機の製品を結合することにより競争力を大きく高めることができる。

〔出典:JARN November 25 2018〕


パナソニックAP空調設備中国有限会社 幡野徳之総経理
“中国で新たな販売会社でVRFビジネスを拡大”

パナソニックが2018年6月に中国蘇州に設立した販売会社「パナソニックAP空調設備中国有限会社」の総経理に就任した幡野徳之氏にJARNがインタビューした。



写真2:パナソニックAP空調設備
                   中国有限会社の幡野徳之総経理



JARN:中国蘇州に新たに販売会社を設立した背景と目的は。

幡野総経理:2018年8月まで「パナソニックAPエアコン(広州)(PAPAGZ)」と「パナソニックAP空調冷機(大連)(PAPARDL)」の2社がそれぞれ別々にVRFを販売してきた。新会社は両社の販売活動を統合する。これにより販売拡大を図る目的で設立した。

JARN:他社と比べてパナソニックの製品の特長は。

幡野総経理:VRFで差別化するポイントは少なくなってきている。この膠着状態を打開するためにパナソニックは室内機を差別化する戦略を取っている。W-ナノイー(ナノイー+ナノイー-G)とナノイー-Xの特長を使って、空気清浄、除菌、および脱臭機能において室内機の競争上の差別化を図っている。中国では早くからナノイー技術の訴求をしてきたので市場での認知をとても早く得ることができた。エネルギー効率が同レベルのインバーター機において、ナノイーを用いたパナソニックの製品は競合他社よりも高い価格で売れている。このような差別化した室内機を含めてすべての室内機は広州で生産している。

JARN:新販社は主に業務用空調機を取り扱う。RACのような量販店からの注文を扱うのはどの販売チャネルになるのか。

幡野総経理:販売店に対するRACの販売はこれまで通り広州のPAPAGZにて行う。新販社は市場にRACの供給は行わない。プロジェクトでRACが必要な場合は新会社から供給するがこれのみだ。直接販売から収益を得るのは難しい。そのためパナソニックは財務能力のある販売店を経由して製品を販売する方針を取っている。販売店を活用して、大型空調機は新販社から、小型空調機はPAPAGZから製品を供給する。

JARN:新販社の初年度の販売目標は。

幡野総経理:我々は2019年(2020年3月まで)の売上を20億元(約330億円)以上としている。この目標を達成するためにはこれまでにしていないことをしなければならない。同時に製品のラインアップも拡充する。日本のメーカーは自社の住宅向けのミニVRFのみを扱う販売店を整備し、販売店を経由したビジネスで高い収益を上げている。我々もまたパナソニック製品のみを取り扱う販売店のネットワークを拡大しており、今年は800店以上増やす計画にしている。販売店による販売を増やせば、ブランドイメージを高めることができ、不動産開発ビジネスでも好ましいブランドとして認知される能力が高まる。事業を拡大するためにこうした好循環を作っていきたい。

〔出典:JARN December 25 2018〕