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No.682 2022年3月

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米国セパレートエアコン市場 カーボンニュートラルへ向けて動き出す


2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、世界各国で具体的な取り組みが行われている。冷凍空調産業も低GWP冷媒への移行を加速させている。

米国においては、地域の厳しい安全基準やビル規則により、次世代冷媒への移行が世界の他の国々に対して遅れている。しかし、世界でC02排出削減目標が高まるにつれて、米国でも最近低GWP冷媒への移行に向けての対策が取られるようになってきた。

空調機の中でも、セパレートルームエアコンではR22(GWP 1,810)とR410A(GWP 2,090)がこれまで主要な冷媒として世界で使われてきた。最近、ダイキンなど日本メーカーがR32(GWP 675)HFC冷媒を使用したダクトレスのセパレートルームエアコンやパッケージエアコン、またVRFシステムを世界で販売している。

2020年、R32を使用したセパレートルームエアコンの世界需要は、約4,000万台に達したものと推定される。内訳は日本1,000万台、中国1,700万台、その他アジア、欧州、オセアニアが1,300万台である。

米国の空調市場ではR410Aがまだ主流である。冷媒を充てんした一体型のルームエアコンでは既にR32は使われているが、セパレートタイプではまだ許可されていない。R32やその他多くの次世代冷媒は米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)によって微燃性(A2L)冷媒に区分されており、微燃性(A2L)冷媒の使用を規制する安全基準やビル規則は、R32を使用したセパレートルームエアコンの普及を規制している。従って、地球温暖化の影響を減らすためには安全基準やビル規則が改正されなければならない。

2021年5月、米国環境保護庁(EPA)は規制を緩和し、住宅と小規模の業務用としてセパレートエアコンにR32を使用することを、米国安全基準UL60335-2-40及び各州で制定されているビル規則と適合することを条件に、認可した。

米国冷凍空調工業会(AHRI)は米国で微燃性(A2L)冷媒の採用が加速するように安全移行タスク・フォースを立ち上げた。機器メーカー、部品メーカー、冷媒メーカー、その他設備業者、安全グループ、及びエネルギー業界などを代表する団体が、発言権を有するメンバーとしてタスク・フォースに参加している。

このような追い風を受けて、2021年12月21日にダイキン・ノース・アメリカはR32を使用したセパレートルームエアコンを北米で初めて発売した。現在フロリダ、オレゴン、及びワシントン州で販売されている。これらの州ではビル規則が緩和されてきている。同社はR32を使用したセパレートエアコンを米国及びカナダの全州で販売できるようにロビー活動ほかを行っている。

米国の空調市場ではダクトレスのセパレートエアコンは全ユニタリーシステムの中で台数ベースではわずか1/8でしかない。米国市場で最大のシェアを持つユニタリーシステムにおいて、キヤリアやジョンソン・コントロールなど米国を拠点とする製造業者はHFO冷媒の採用については前向きな反応している。しかし実際には全製品の市場投入を開始するようにはまだ見られない。

従って、R32のセパレートエアコンの市場投入は米国の空調市場におけるR32冷媒への移行の促進にとっては限定的な影響でしかない。しかしセパレートタイプのルームエアコンの潜在需要は大きい。実際JARNはセパレートタイプのルームエアコンは2021年に米国で前年よりも14.1%増加したと推定している。エネルギーの節約、快適性、高性能ヒートポンプ、据付の容易性などのダクトレスセパレートタイプのエアコンの長所は、将来米国市場でさらに認められるであろう。冷媒についても米国市場でR32など次世代冷媒へと間違いなく移行することになるであろう。

〔出典:JARN January 25, 2022


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