2021年度 省エネ大賞
経済産業大臣賞
日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社

印刷

No.682 2022年3月

製品・ビジネスモデル部門
サイドフロー型ビル用マルチ「フレックスマルチminiモジュール」



写真1:省エネ大賞 表彰式の様子
経済産業省 資源エネルギーセンター庁 省エネルギー課長・江澤様 / 当社CEO秋山



1.はじめに
近年、省エネルギー化に対する意識の高まりに加えて、換気ニーズの高まりにより、中小規模ビルなどへのビル用マルチエアコンの普及が増加している。また、空きスペースへの空調機増設需要が増えている。このような需要に応えるには、室外ユニットがコンパクトであることが望ましい。そこで弊社ではビル用マルチシステムをコンパクトなサイドフロー筐体を用いて構築可能な、「フレックスマルチ-miniモジュール」を開発し、製品化した。

2.製品の特長的技術
基本単体ユニットとして、2つの異なるサイズの筐体をラインアップ。スモールサイズ(高さ1650mm×幅1050mm×奥行420mm)と、ラージサイズ(高さ1650mm×幅1190mm×奥行420mm)の2筐体である。なおラージサイズ筐体の実現により、国内初となるサイドフロー型単体ユニットで8~16馬力を実現した。また、本単体ユニットを配管を用いてモジュール接続することで、54馬力(単体ユニットを4台連結)システムを構築可能とした。


写真2:「フレックスマルチ-miniモジュール」RAS-AP1500SSM (54HP)



省エネ性の観点からは新技術を搭載することで、弊社トップフロー型ビル用マルチ(高効率SSシリーズ)と同等のAPF2015=5.1~6.0を達成した。また、コンパクトな筐体で大容量なビル用マルチシステムに対応するために、新型大容量圧縮機の搭載、新形状アキュームレータを採用した。
サイドフロー筐体を用いることでコンパクト化を可能とした。トップフロー型とサイドフロー型を比較すると、設置面積を約27%~46%削減をすることが可能である。これにより、屋上における室外ユニット設置面積の低減につながり、屋上緑化など他用途への屋上スペースの利用や、屋上スペースにこれまで以上に室外ユニットを設置できるようになり、地上やバルコニーなどこれまで室外機に占有されてしまっていた場所の有効利用化が期待できる。



写真3:ビル用マルチエアコントップフロー型と
フレックスマルチーminiモジュール設置面積比較


■省エネ性向上技術 タンデムサブクーリングシステム
サイドフロー筐体はその筐体の特長から、熱交換器の高さを製品の高さとほぼ同等、すなわち縦長な熱交換器の形態とできる。そこでこの縦長熱交換器の形状を活かした、新型パス配列”タンデムサブクーリングシステム”を採用することで、APF向上と冷媒量削減の両立を実施した。熱交換器の中段あたりに、1段目のサブクーラパスを設ける。1段目のサブクーラパスを通過した冷媒は、さらにサブクール量(過冷却量)を増やすために、2段目のサブクーラを通過する。このように、段階的に流路を絞ることで、サブクーラの段数増加と冷媒配管内の冷媒流速の増速を可能とし、少ない冷媒量でサブクール量を確保することができるため、冷媒量抑制とAPF2015向上の両立を果たすことができた。

■省エネ性向上技術 ラウンドクランプ
モータクランプは室外熱交換器用ファンモータを保持する部品であるが、一般的に板金の折り曲げ構造である。この構造は堅牢ではあるものの、モータクランプ周りの通風抵抗が大きいという課題があった。そこで、通風抵抗を抑制するために、通風抵抗が軽減される丸形モータクランプ「ラウンドクランプ」を採用した。また、送風機室と機械室の間仕切り板の形状も、通風抵抗が軽減されるような新規形状とした。以上の効果により、従来サイドフロー型構造に対して、ファン入力を低減し、消費電力削減に貢献した。


写真4:ビル用マルチエアコントップフロー型と
フレックスマルチーminiモジュール設置性比較


■冷媒量の削減
本製品では冷媒量削減にも着目した。16馬力システムにおける、弊社トップフロー型と本製品のシステム冷媒量を比較する。トップフロー型では29.7kgのシステム冷媒量であったものに対し、本製品ではタンデムサブクーリングなどの新技術を25.9kgと約13%の削減に成功した。


写真5:フレックスマルチーminiモジュール搭載新技術



※条件
・最大配管長:90m  ・配管総延長:165m  ・室内ユニット:てんかせ4方向(RCI-GP80K2)×6台


3.終わりに
本製品はサイドフロータイプながらモジュール組み合わせにより大容量化を実現、スペースの有効活用や増設需要などに対応できる、これまでにない画期的なソリューションをお客さまに提供できる製品である。諸新技術により、現行トップフロー型と同等以上の高性能を維持し、使用冷媒量も軽減している。

今日、省エネ性向上や使用冷媒量の削減など、地球環境保護への継続的対応が求められている。本製品にて得られた技術的知見をさらにブラッシュアップし、更なる技術革新を推進し、お客さまの省エネルギー化、環境負荷低減に貢献していく。


以上

Topへ戻る