海外短信

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No.687 2022年11月

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1.パナソニック チェコ工場のATWヒートポンプの生産能力を
2025年度までに50万台へ増強
パナソニックは2022年9月2日、ATWの生産能力を増強するためにチェコのピルゼン市の製造子会社パナソニックAVCネットワークチェコ(PAVCCZ)に2025年度(年度末2026年3月)までの間に約200億円投資すると発表した。この投資によりパナソニックのチェコ工場は、既に2018年から生産している室内ユニットに加えて、2023年度から室外ユニットの生産も開始する。2025年度までに生産能力を年間50万台へ増強する。

これまでパナソニックはATWヒートポンプの室外ユニットはマレーシア工場で生産し、チェコに輸送していた。しかし欧州でATWヒートポンプに対する需要が増加したことから、マレーシア工場だけで生産していたのでは需要に対応することができなくなっていた。今回の投資により欧州に所在するチェコ工場はATWヒートポンプの室外ユニットを近接する欧州市場に届けることができる。これによりリードタイムを短縮するだけでなく、海上コンテナの不足による高い輸送費を減らすことが可能になる。パナソニックは大きな市場シェアを獲得し、急激に成長している欧州市場で強いブランドの確立を目指している。


ATWを増産するパナソニックのチェコ工場

〔JARN September 25, 2022〕




2.ダイキン ポーランドにヒートポンプ暖房機の生産工場を建設 
ダイキン欧州は2022年7月7日、ポーランドのウッチに新工場を建設するため3億ユーロ(約430億円)を投資すると発表した。同社のポーランドでの初の生産拠点となる。新工場は住宅用ヒートポンプを生産し、稼働開始は2024年7月。これまでのベルギー、チェコ、及びドイツの欧州生産拠点にポーランドが新たに追加されることになる。この投資額は同社の欧州戦略経営計画「FUSION25」で策定された8億4,000万ユーロ(約1,200億円)の中でトップとなる。これにより2025年までの総投資額は12億ユーロ(約1,720億円)を超えるものとなる。

同社は「FUSION25」でヒートポンプ暖房事業を拡大する上で欧州市場を最優先地域と考えている。ダイキン欧州の坪内俊貴社長は「ダイキンは化石燃料ボイラからヒートポンプへの社会的転換を容易にするための挑戦を始める。このために我々は商品開発とサービス能力を強化してきた。このたびポーランドに新工場を建設することを決定した。この工場はヒートポンプ暖房製品ではダイキン欧州グループで最大の生産能力を持つことになる」と述べている。

欧州では欧州グリーンディール政策により化石燃料からの排出削減についての行動が加速しており、2025年までに少なくとも毎年300万台のヒートポンプが設置されるものと予測されており、これは年率に換算すると約30%の伸び率となる。



ダイキン欧州のポーランドの新工場

〔JARN August 25, 2022〕


3. 三菱重工サーマルシステムズ オーストラリアでベストブランドを2年連続受賞
三菱重工空調オーストラリア(MHIAA)は、2022年ファインダー賞においてベストスプリットシステムエアコンブランドに選出されたと発表した。MHIAAは同賞を2021年にも受賞しており、2年連続2度目の受賞となる。

2022年の評価において、MHIAAは他のブランドよりも性能が優れており、5段階中4.5の総合評価と100%の推薦率を獲得している。項目別には「特徴と機能」及び「暖房と冷房性能」でいずれも5段階中4.7の高評価となっている。また「静音性」と「価格に対する性能」でもそれぞれ4.4と4.5であった。

MHIAAの伊藤雄司社長は「オーストラリアの顧客から2年連続して認められたことはとても光栄であり、オーストラリアのマーケットに最良の商品を届けることに奉仕してきたことの表れだ。我々は空調の専門家としてこれからも消費者ニーズに合った価値の高い商品を届ける。エアコンは多くの消費者にとってひとつの投資であり、オーストラリアの消費者から評価され、受賞できたことは、我々が消費者に対する約束を守ってきた証だ」と述べている。



三菱重工空調オーストラリアは「ファインダー賞」のベストスプリットシステムエアコンで2021年(左)と2022年(右)を2年連続して受賞

〔JARN August 25, 2022〕




4. ジョンソンコントロールズ日立空調 ドイツの「レッド・ドット・デザイン賞2022」を受賞
ジョンソンコントロールズ日立空調が「レッド・ドット・デザイン賞プロダクト・デザイン2022」を受賞した。レッド・ドット・デザイン賞は、製品、ブランド、及びコミュニケーション・デザインとコンセプトを対象としたドイツの国際的なデザイン賞。受賞したairHome400はエアコンの美しさと機能性について、多様な市場での幅広い消費者のニーズを満たしたデザインとなっている。

製品デザイン賞の受賞は、同社が最高の品質と審美眼を持っていることを認めたものである。airHomeのデザインは様々な海外に広がる消費者のニーズに適合している。エネルギー効率の高い運転に自動的に調節する直感的な操作、どのような生活空間にも調和するクリーンなデザイン、及び容易なメンテナンスである。

冷暖房換気の市場ではますます製品とスマートシステムとの統合が行われている。airHomeもスマートな特長によりこのトレンドに沿ったものとなっている。airCloudHomeではスマートホンにより家から離れていてもairHomeに接続することにより帰宅時までに室温を設定温度にすることができる。美的で直感的なデザインによりairHomeはどのような消費者の生活空間でも世界市場での理想的な製品となっている。

〔JARN August 25, 2022〕




5.米国ケマーズ 増加する需要に対応してテキサスのオプテオンYFの生産能力を増強
米国ケマーズは2022年7月28日、オプテオンYF(HFO-1234yf)の生産能力を需要に対応するために拡大すると発表した。市場で低GWP冷媒へ移行する動きが続いている。オプテオンYFとYFのブレンド冷媒は現在世界の数百万台の車と数千件の店舗で使用されている。オゾン破壊係数(ODP)がゼロであり、GWPもこれまでの冷媒よりとても小さい。

8,000万ドル(約115億円)の生産能力拡大プロジェクトは、市場の需要に対応し、またケマーズの企業責任の目標に沿った重要な増産投資であるとケマーズは考えている。高いリターンを生むものであり、企業の目的にかなう。ケマーズが2019年6月に生産を開始してから、オプテオンYFの生産能力は3倍になっている。世界最大のHFO-1234yfの生産設備の一つであり、このプロジェクトで優位性を保つことにしている。すでに実施しているボトルネック工程の改善工事と共に今回の投資により生産能力が約40%増加する。テキサス州イングルサイドのケマーズで生産された冷媒は世界中の急速に増加する顧客のもとに届けられる。

〔JARN August 25, 2022〕




6.欧州 7月に再び猛暑 激しい熱波が襲う
英国BBC放送がこの夏の欧州各地の熱波を広く伝えている。スペイン、ポルトガル、及びフランスの5月と6月の厳しい熱波に続いて、別の熱波がさらに多くの欧州の国々を襲った。

英国ではこれまでの最高となる気温40.3℃を記録したと英国気象庁が伝えている。フランスでは猛暑による警戒警報が発令され、オランダでは7月のこれまでの最高気温が報告された。激しい山火事によりフランス、ポルトガル、スペイン、及びギリシャでは数千人の人々が住宅から避難させられている。スペインとポルトガルでは森林火災により4人が死亡している。

旅行客に人気のあるフランス南西部のジロンド県では7月に激しい森林火災に襲われ、フランス各地からの消防士が2つの火災の消火活動にあたった。この火災により5万エーカー(約200平方km)が焼失した。

スペインとポルトガルでは7月の暑さのために1,000人以上が亡くなっている。ポルトガルでは7月に気温47℃を記録している。

イタリアでも気象予報官が7月の第3週には気温が40℃から42℃まで上昇すると警告を発している。

〔JARN August 25, 2022〕




7.英国 熱波に対応してビルのサービス性を維持向上するには長期的な戦略が必要
英国の建築エンジニアリングサービス協会(BESA)によると、英国の記録的な熱波が建築物の温度、湿度、及び空気質を向上するためには長期的な戦略が必要であることを示している。

多くのビルの所有者や管理者は年間数日の異常気温のための投資には乗り気ではなかった。しかしBESAによると、熱波がビルのサービス性のより広い経済的な影響にスポットライトを当てることになった。調査によるとこれまで在宅で仕事をしていたかなりの数の社員が、空調の恩恵を受けるために事務所に戻ってきているという。ある従業員はこれにより生産性が向上し、在宅勤務からの逆転現象があらわれていると述べている。

米国スタンフォード大学の研究者は、生産性が最も高いのは年間平均気温が13℃であり、これ以上気温が高いと生産性は下がりだすと述べている。英国の年間平均気温は通常約9℃であるが、気候変動を阻止しない限り今後の10年間で上昇に転じる。

BESAの技術の長であるグレアム・フォックス氏は、「空調は鍵となる技術であるが、その他の我々が自由に使っている熱回収型の換気扇、エアーフィルター、及び湿度制御なども重要な技術である。パッシブ型の省エネをもっと取り込むために建築物の構造に工夫を施す必要があり、どのような天気の状況になろうと機器が最適な性能を発揮するために予防保全の考えは鍵となるだろう」と述べている。

〔JARN August 25, 2022〕




8.フランス 空調をしている店舗でのドア開放を禁止
フランスのシュドウェスト新聞によると、アニエス・パニェ・リュナシェエネルギー転換大臣が最近、空調をしている間は、店のドアを開けたままにしてはならないという布告を発令すると述べた。同大臣は店のドアを開けておくとエネルギーの20%を消費しており、これはエネルギーの浪費であり許容できないとしている。フランスのいくつかの都市の店舗では、空調または暖房をしているときに、ドアを開けたままにしておくと750ユーロ(約10万9千円)の罰金を科せられることがある。

電飾広告も欧州のエネルギー節約方針に従って政府からは目を付けられている。このような広告は午前1時から午前6時までの間禁止される見込みだ。空港と鉄道の駅には適用されない。

ブール=カン=ブレス、リヨン、ブザンソン、及びパリなどのフランスの都市では市の条例によって、店舗が空調又は暖房をしている時にドアを開け放していることは禁止されている。他の都市でも同様の措置が取られる見込みだ。フランスはこの夏厳しい暑さを経験したことにより政府は省エネルギー対策を推進している。

〔JARN August 25, 2022〕



9.中国 ほとんどの地域で激しい暑さに見舞われる エアコン販売は伸びる
中国では2022年6月から7月12日まで、気温の高い日が5.3日と例年と比較して2.4日長くなっている。1961年から同時期の記録的な気温の高さとなっている。6月13日から地域によっては今年最初の気温の高い天気となり、広範囲で、持続時間が長く、気温が極端に高くなることが特徴となった。7月12日までに気温の高い日は30日間連続し、中国全土の502.1万平方kmの地域で9億人以上の人々に影響を与えた。

7月13日から安徽省、江蘇省、上海市、湖北省、湖南省、江西省、浙江省、福建省、四川省、重慶市、及び貴州省でところによっては気温が37℃から39℃に達した。江蘇省南部、浙江省北部、四川省南西部、重慶市のほぼ全域、及び雲南省北西部でところによっては気温が40℃を上回った。

エアコンの統計をモニターしているAVCによると、6月27日から7月3日まで、エアコンのオンライン販売金額と販売数量は前年よりも順に80.2%と82.4%増加した。販売店での販売金額と販売数量は順に19.9%と9.1%の伸びであった。

〔JARN, August 25, 2022〕



10.中国 2025年から新たな建築物はグリーンビル標準を遵守しなければならない

中国の住宅都市農村建設部によると、2025年から、中国全土の都市や地方ですべての新たに建設される建築物では、グリーンビル標準を徹底して実施しなければならない。スター・グリーン・ビルが30%以上となる。政府が出資する公共福祉建築と大規模な公共建築はワン・スター標準かそれ以上の達成が必要となる。

住宅都市農村建設部と国家発展改革委員会は最近都市と地方の建設現場での実行計画を発表した。炭素排出のピークを考慮したものであり、都市と地方の建設現場での炭素排出のピークを2030年以前としている。

実行計画によると2030年より前にビルの省エネと廃棄物の資源化のレベルが強化される。エネルギー資源の有効活用レベルは国際的に見てもトップレベルとする。エネルギー消費の対象と方法は一層最適化され、熱の有効活用が図られる。都市と地方での建設の方法では、グリーンで低炭素排出を普及させることは積極的な成長を達成することにつながる。大規模な建設、大規模なエネルギー消費、大規模な炭素の排出は劇的に変化することを示している。

〔JARN, September 25, 2022〕




11.中国 2022年上半期ヒートポンプ給湯機(ATW)が大きく伸びる
チャイナIOLの統計によると、中国のヒートポンプ暖房給湯機(ATW)の販売金額が2022年上半期に71億9,300万元(約1,470億円)に達した。これは前年比で約30%の増加である。この内、国内向けが37億4,300万元(約765億円)で前年比6.82%の増加、輸出向けが34億5,000万元(約705億円)で前年比68.2%の増加であった。

国内向けの用途別内訳は、住宅用ヒートポンプ給湯機(HPWH)の販売金額が17億5,000万元(約358億円)となり前年比で0.34%の減少、業務用ヒートポンプ給湯機は9億1,500万元(約187億円)で前年比5.4%の増加となった。空調市場では住宅用での販売金額は7億3,900万元(約151億円)で前年比24.55%の増加、公営住宅用では3億4,000万元(約69億円)で前年比18.26%の増加であった。

国内市場は伸びが抑えられていたが、輸出は成長が著しかった。ヒートポンプ市場全体の構成でみると、現在の輸出の規模は国内の市場規模と同等になってきている。輸出先を国別でみると、イタリア、ポーランド、オーストラリア、及びスペインが前年比で伸び率が50%を超えている。

〔JARN, September 25, 2022〕



12.中国からロシアへの力強いエアコンの輸出はどのくらい続くのだろうか
ロシアのウクライナ侵攻により、2022年ロシアのエアコン市場も変化している。経済制裁により日本と韓国ブランドがロシアから撤退した後、多くの中国の製造業者がロシアのエアコン事業にこれまでと異なるやり方で参入した。

今年のロシアのエアコン市場は成長に好条件が整っていた。高い気温の日が例年よりも早く訪れたこと、新型コロナウイルスに対する規制が解除されたこと、及び市場では昨年からの在庫がそれほど多くなかったことだ。中国税関によると、今年の1月から5月までの間、中国は約220万台のエアコンをロシアに輸出した。これは前年同期比で63%の増加となる。現在ロシアに輸出されている主な機種はR32を使用したインバータ機となっている。

中国のエアコン製造業者の海外販売の責任者は次のように語っている。「ロシアによる侵攻の後、エアコン販売は短期的には爆発的に売れた。消費者はルーブルの下落を恐れ早くから購入に動いた。しかしもはや熱気はない。現在では市場リスクはとても大きい」

戦争は激しさを増している。ロシア経済はどれくらい耐えることができるのだろうか。この疑問がエアコン市場の先行きに影を落としている。

〔JARN August 25, 2022〕


過去の記事

■2022年 9月号(No.686)はこちら
■2022年 7月号(No.685)はこちら
■2022年 5月号(No.683)はこちら


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