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地球温暖化対策強化を提言
―産業構造審議会と中央環境審議会― |
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| 前号では,京都議定書の第1約束期間である2008年〜2012年に向けて,温室効果ガスの排出の現状と2010年の見通しについて,現状の対策をベースにした経済産業省の産業構造審議会・総合資源エネルギー調査会のまとめを中心に紹介しました。今回は,環境省の中央環境審議会の見通しなどを含めて,今後の対策の立案にあたってどのような議論が進められているのかをみてみます。 |
(編集係) |
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前号では,経済産業省の産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会の関係部会で作業を進めた2010年の見通しを中心に紹介したが,ここで改めて概観する。
京都議定書に基づく日本の温室効果ガスの総排出量の基準年の実績は図1のように12.37億トンであり,これを第1約束期間である2008年〜2012年に排出量を6%削減することが国際的責務とされている。この6%削減には,約4%を森林によるCO2吸収でまかなうことが予定されるなどしており,直接的な温室効果ガスの排出は12.31億トンに抑制することが政府の地球温暖化対策大綱の目標である(図1)。2002年にはこの総排出量はすでに13.31億トンに達しており,これをベースにすると8%近い削減が必要となり,経済成長を実現しながらの達成は事実上困難と見られているものである。
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図1 温室効果ガス排出の基準年と大綱による目標 |
●産構審の2010年の見通し
産業構造審議会(産構審)のまとめでは,現在の政策を進めていった場合の2010年の温室効果ガスの総排出量はCO2換算で13.05億トンと推定され,基準年における総排出量12.37億トンに比べ5.5%増加,地球温暖化対策推進大綱による目標に比べては6.2%高い水準にある。このうちの大部分を占めるエネルギー起源のCO2排出は11.06億トンで,基準年である1990年の10.48億トンから5.5%増加,大綱による目標である10.24億トンを0.82億トン,8%超過すると予測している(図2)。
産業構造審議会の見通しは,経済社会のこれまでの傾向的変化は続くことを前提に,これまでの温暖化対策を着実に推進する場合の見通しとして「現行対策推進ケース」と呼んでいる。一方の中央環境審議会(中環審)の見通しでは対策の削減効果を確実性の高いものに限定して見込んだ場合として「現状対策ケース」と称している。
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産構審の2010年の見通しでは,現行対策推進ケースとして部門ごとの見通しを示したうえで,「革新的技術開発の導入」による削減効果を総量として織り込んだものを見通している。今回のデータは,この分を反映させていないデータを用いているため,若干の差異が生じている。 |
エネルギー起源CO2以外の温暖化ガスについては,非エネルギー起源のCO2,メタン,一酸化窒素の合計でCO2換算で1.33億トン,基準年の1.39億トンに比べ基準年の総排出量対比で約0.5%分削減に寄与,大綱の目標(基準年の総排出量の0.5%分削減して1.33億トンとする)をほぼ達成する見込みとなっている。また,HFC,PFC,SF6の代替フロン等3ガスについては,0.74億トンで基準年の0.50億トンから0.24億トン(基準年の総排出量の約2%分)増加するとしており,大綱の総排出量対比2%増にとどめるとの目標を達成できる可能性があるとしている。全体としては,エネルギー起源のCO2排出について,大綱の目標達成が厳しいというが見通しの概要である。
●中環審の見通し
環境省の中環審のまとめでは,2010年の温室効果ガスの見通しのうちHFC,PFC,SF6のいわゆる代替フロン等3ガスについては精査中として明らかにせず,エネルギー起源のCO2と,非エネルギー起源のCO2,メタン,一酸化窒素についてのみ公表している。このため,温室効果ガスの総排出量の見通しは不明である。
中環審によるエネルギー起源CO2の排出見通しは11.37億トンで,基準年の10.48億トンに比べ8.4%の増加を見込んでいる。これは大綱による目標である10.24億トンを1.13億トン,11%超過すると予測していることになる(図2)。
中環審の見通しは,産構審の見通しより0.39億トン大きく,これはこの差だけで大綱による目標のエネルギー起源CO2排出量の4%近い量になる。
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図2 エネルギー起源CO2排出の実績と見通し |
このような差がどのような部門から生じてくるか,見通しを部門ごとに比較すると図3〜図5のようになる。これによれば,産業,運輸部門はそれほど大きな差がないのに対し,民生部門の見方には大きな差が生じている。なお,ここではエネルギー転換部門は省略してある。
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図3 産業部門のエネルギー起源CO2の排出 |
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図4 運輸部門のエネルギー起源CO2の排出 |
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図5 民生部門のエネルギー起源CO2の排出 |
この民生部門をさらに区分してみると,図6・図7のようになる。業務部門の見通しの差が顕著になっている。
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図6 民生家庭部門 |
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図7 民生業務部門 |
今回,産構審と中環審が軌を一にして2010年の温室効果ガスの見通しをまとめたのは,政府の地球温暖化対策大綱において,2004年までを第1ステップとしてその見直しの時期を迎えているからである。今後,各省庁間での調整のうえで新しい大綱が作成されることになる。その経過の中での議論にあたっては,両審議会のまとめがベースになろう。以下,どのような対策が提言されているかを概観する。
●産構審のまとめの考え方
両審議会とも,程度の差はあるが現状の対策のみでは第1約束期間での目標達成は困難としており,今後の追加対策が必要としている点は共通である。しかし,その方向性,具体的内容は大きく異なっている。まず,産構審のまとめでは,今後の対策の方向性として,中長期な観点から「環境と経済の両立」をはかることを大原則として立案する重要性を強調,具体的には部門ごとの「削減ポテンシャル」を見出して顕在化することを重視し,国民生活を抑制したり,国内産業に海外移転を強いることによるような政策は採用すべきではないとしている。
各部門ごとの記述では,産構審のまとめでは今後の温室効果ガスの排出削減の可能性について,次のような分野で追加的な削減効果を生む可能性があるとしている。
- 産業部門でのエネルギー起源CO2について,複数の事業者が連携することによる更なる排出削減
- 産業部門でのエネルギー起源CO2以外のうち,代替フロン等3ガスについて,脱フロン技術開発,フロン回収率向上対策等による排出削減
- 民生部門において,トップランナー基準を上回る製品などエネルギー効率の高い製品の普及の可能性
- 業務部門において,事業者のエネルギー利用効率向上によるメリットの認識による対策の進展
- 運輸部門において,自動車の燃費基準を超過達成した製品の普及の進展
- 貨物における物流の効率化
- 電力事業において,使用端電力CO2排出原単位の更なる改善
結局,産構審のまとめでは,上記の可能性についての数量的評価については,総合資源エネルギー調査会の需給部会・省エネルギー部会による検討結果に基づいて,追加対策を講じることにより,2010年度のエネルギー起源CO2の排出を基準年である1990年の10.48億トンとほぼ同じ水準に抑える可能性があるとしている。そして,この可能性を実現するため,国民各層・各主体の「挑戦」的な課題として大きな国民運動につなげていくことを期待している。
| 表1 |
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産構審まとめによる追加対策の期待効果による
2010年のエネルギー起源CO2排出 |
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| (単位・億トン) |
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現行対策推進
ケースでの見通し |
追加対策による
期待効果 |
追加対策実現後の
見通し |
| CO2排出合計 |
11.06 |
▲ 0.53 |
10.53 |
| 産業部門 |
4.41 |
▲ 0.08 |
4.33 |
| 民生部門 |
3.35 |
▲ 0.30 |
3.05 |
| 家庭部門 |
1.56 |
▲ 0.21 |
1.35 |
| 業務部門 |
1.79 |
▲ 0.10 |
1.69 |
| 運輸部門 |
2.61 |
▲ 0.11 |
2.50 |
| 転換部門 |
0.68 |
▲ 0.03 |
0.65 |
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この中で,「産業界の挑戦」として掲げられている項目を列挙すると次のようになる。
- 生産工程等で投入・消費されるエネルギーの利用効率を改善させるために,省エネルギー,脱フロン等の技術開発,投資等,更なる削減可能性を追求する不断の努力を行う。
- 自らの事業活動に関する環境情報の開示の中で,温室効果ガスの排出量についても主体性をもって積極的に公表する。
- エネルギー効率の高い民生機器や自動車の開発・生産,業務部門となる本社ビルや関連会社の省エネルギー,荷主としての物流効率化に向けた取組み,製品のライフサイクル全体における排出削減等の活動を通じて,民生・運輸部門における削減に貢献する。
- 生活者が環境に配慮した適切な選択,行動を行うことを後押しし,円滑化するために,提供する商品,サービス等に関する情報提供等を積極的に行う。
- 個別企業が取組課題を明確化し,そのための体制を構築するとともに,社員に対する環境教育を含め具体的な行動を積極的に実行する。
●中環審のまとめの考え方
中環審のまとめでは,前提として京都議定書での温暖化ガスの6%削減の約束について,日本は実現に向けて全力で取り組む責任があり,確実に達成をはかるべきとし,このためこれまでの大量生産,大量消費,大量廃棄型の価値観の転換や意識改革を進めるべきとしている。
こうした上でまとめは,現在の地球温暖化対策推進大綱の目標設定について,代替フロン等3ガスと一括して扱われているのに対し,温室効果ガスごとに区分して対策の立案と評価を行うこと,従来「革新的技術開発」や「国民各層の努力」といった抽象的な表現でエネルギー起源CO2の2%削減とされてきた目標を,産業,運輸,民生の各部門ごとに割り振ることを主張,対策ガス別・部門別の削減目標の割当て的な発想での記述が目立っている。表2は,革新的技術開発と国民各層の努力として基準年総排出量の2%分の削減をするとしてきた大綱の目標を,各主体別に割り振った場合の追加目標である。
| 表2 |
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革新的技術開発・国民各層の努力(2%分)の
部門別割当て |
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| (単位:%) |
| 分野 |
技術革新 |
国民の努力 |
| 産業 |
0.40 |
− |
| 運輸 |
0.07 |
0.10〜0.20 |
| 家庭 |
0.08 |
0.90〜1.20 |
| 業務その他 |
0.06 |
0.30〜0.50 |
| 転換 |
0.02 |
− |
| 合計 |
0.60 |
1.30〜1.70 |
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中環審のまとめでは,こうした目標設定に関する考え方をふまえて,横断的対策として,データ整備による評価方法の確立,普及啓発・情報提供の徹底,事業者による温室効果ガス排出量公表制度の導入,自主行動計画の推進と外部チェック,国内排出量取引制度の整備,温暖化対策税制の導入等を進めるべきとしている。この中で特に,事業者による温室効果ガス排出量の公表制度の導入,温暖化対策税制の導入に触れていることが,今回の特徴である。
このような大枠での議論に加え,個別ガス別の対策の強化として次のような項目をあげている。
- エネルギー供給サイドの対策として,CO2排出の少ない天然ガス活用の推進と原子力の基幹電源としての位置付けと活用,再生エネルギーの利用の一層の拡大。
- 産業部門の対策の強化として,各業種の目標値の設定
- 運輸部門の対策の強化として,交通需要対策の強化と自動車の燃費向上など単体対策の強化,バイオエタノール混合ガソリンの取組みなどの推進
- 業務その他部門の強化として,建築物の省エネ性の向上,BEMS,ESCO等の事業の普及,業務用機器の省エネルギー基準の強化・目標年度の前倒し等の対策推進,業務用コージェネの導入拡大・業務用ボイラーのバイオエタノールの利用等
- 家庭部門の対策強化として,住宅の省エネ性能向上の確実な推進,家庭におけるエネルギー需要管理システムの市場導入,家庭用機器の省エネ性能向上のための基準の強化と目標の前倒し,待機時電力の削減,省エネ家電への買換え促進,高効率給湯機の普及促進
| (2) |
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非エネルギー起源CO2,メタン,一酸化二窒素の対策の強化,混合セメントの利用拡大や焼却施設での燃焼の高度化,廃棄物の減量化等 |
- SF6フリーマグネシウム製造方法の開発,HFCエアゾールの代替化の促進
- 発泡・断熱材のノンフロン化の促進
- 業務用冷凍空調機器のフロン回収に関する制度の抜本的見直しを含めたフロン回収の徹底
中環審まとめではこれらの追加対策により,次のように削減を進めることが可能としている。
| 表3 |
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中環審まとめによる追加対策を講じた場合の
2010年の温室効果ガスの排出量見直し |
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| (単位・億トン) |
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現行対策
ケース |
追加対策による
削減 |
追加対策実施後の
見通し |
| CO2排出合計 |
11.37 |
▲ 0.82 |
10.54 |
| 産業部門 |
4.47 |
▲ 0.30 |
4.17 |
| 運輸部門 |
2.60 |
▲ 0.06 |
2.54 |
| 民生部門 |
3.56 |
▲ 0.40 |
3.17 |
| 家庭 |
1.29 |
▲ 0.18 |
1.41 |
| 業務その他 |
1.44 |
▲ 0.22 |
1.76 |
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以上みてきたように,今後の地球温暖化対策の要となる“大綱”の改定に向けて,産構審と中環審のまとめには,経済活力の維持を前提にして基本的に各部門ごとの促進策を重点においた提言と,京都議定書の約束達成を最重点にして環境税の導入等の新たな国民負担をあえて求めても対策を強化すべきというように,基本的な姿勢が大きく異なっている。冷凍空調機器に関連しても,省エネルギー政策の強化,フロン回収に対する制度的見直しなど,大きなテーマが横たわっている。
京都議定書の発効を控え,今後政策の具体的方向をめぐって議論が活発になろうとしている。
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