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本格化する“温暖化対策税”導入議論
議定書発効控え環境省が効果の試算発表 |
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| 日本の温室効果ガス“6%削減”達成が危ぶまれる中,京都議定書発効のスケジュールが具体化してきたことを契機として,「温暖化対策税」(環境税)導入の議論が活発になってきました。ここでは最近の環境省ベースの資料を中心に,どのような考え方で検討が進められてきたかを紹介します。 |
(編集係) |
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京都議定書の発効が具体的日程に入りつつあるなか,日本の温暖化対策の強化のため,「温暖化対策税」の導入をめぐる議論が活発になりつつある。環境審議会では,この8月に地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しのため中間報告をまとめたが,この中で温室効果ガスの各区分や部門にまたがる横断的対策・施策の1項目として「温暖化対策税制」を取り上げ,これまでの検討結果として,(1)炭素トン当たり3500円程度の低率の温暖化対策税を導入し,その税収を地球温暖化対策に用いることが提案されていること,(2)規制的措置がとれない分野での対策を確実にするための経済的手法として有力な手段であると考えられることなどから,さらに議論を深めることが必要として,環境審議会の中の「施策総合企画小委員会」での検討が行われることを期待するとしていた。
これを受けて,総合政策部会と地球環境部会の合同部会のもと,「施策総合企画小委員会」がまとめを発表,平成17年度の環境省の税制改正要望でも,「地球温暖化対策を推進するため,環境税(仮称)の創設等,必要な税制上の措置を講ずること」をトップに掲げている。また,同税制に反対している産業界との意見交換を実施するなどの動きを始めている。
●環境税と温暖化対策税
今回議論となっている税制は,環境税とも炭素税ともいわれるものだが,環境省では,少なくとも最近の文章では「温暖化対策税」と呼んでいる。
環境税という場合には,地球温暖化防止といった目的以外に,広く環境負荷の低減のための税制といった意味で使われることもあり,また逆に,炭素税といった場合には,CO2の発生につながる化石燃料中の炭素にほぼ限定した意味合いになる。環境省が使用している「温暖化対策税」という用語は,今回の提案では,実質的には炭素税に近い内容を目指しているとみられるが,フロンなど他の温室効果ガスについて,前提として除外しているわけではないことから,こうした名称を用いているものと思われる。
環境省でのこうした税制についての検討は,1991年(平成3年)の「環境税研究会」などから始められ,名称,組織の位置付けを変えながら,継続して進められてきている。現在,議論の元になっている「温暖化対策税」は,2001年(平成13年)10月,中央環境審議会の総合政策・地球環境合同部会の下にスタートした「温暖化対策税制専門委員会」により作業が進められ,昨年8月に基本的考え方をまとめた「温暖化対策税制の具体的な制度の案〜国民による検討・議論のための提案〜」として発表された。これを受けて,さらに合同部会の下「施策総合企画小委員会」で具体化が進められ,今回,中間とりまとめとなったものである。
以下,ここでは環境省のこれまでの各種の検討内容から,進められようとしている税制の概況を紹介する。
●なぜ「温暖化対策税」なのか
地球温暖化対策税の必要性について,まず指摘されるのが京都議定書で日本が約束した6%の削減の困難さである。これについては,すでに2回にわたって紹介してきたが,温暖化ガスの大部分を占めるエネルギー起源CO2の排出が,民生・運輸部門のエネルギー消費の増大を中心に増大していること,これらの分野では,規制的手段によっては削減は困難であることをあげている。そして,こうした多くの小規模な発生源には,規制的な手段を追加してもその徹底が困難であり,新たな発想に基づく温暖化防止への動機付けを与える制度が必要とし,このために温暖化対策税などの経済的手法が考えられるとしている。
「温暖化対策税」は,温室効果ガス又は化石燃料に課税することによって,化石燃料の使用や温室効果ガスの排出を控えるよう促すとともに,使用機器・設備をより省エネ型のものへ代替するよう促す効果が期待できるからだとしている。また,このような効果を実際に発現させるには,相当高率な税制が必要で非現実的との指摘に対しては,税収を効率的に温暖化対策に用いることにより,低い税制でも高率の税を課した場合と同等の効果をあげることが可能としている。
●どのような税制を想定しているか
これまでの各種の資料を基に,環境省の想定している税制の概要を示すと次のとおりとなる。
<課税対象>
二酸化炭素又は化石燃料を対象にして,二酸化炭素排出量又は化石燃料の消費に応じて課税――が基本。
今回のまとめでは,当面,エネルギー起源CO2あるいはその原因となる化石燃料に焦点を絞っている。しかし,他の温室効果ガスを前提として除外しているわけではない。HFC,PFC,SF6などの課税の適否については,その排出源や排出形態が多様であるため,いずれも2004年の大綱の評価・見直しを踏まえてさらに検討することが適当と判断したとしている。加えて,これらへの課税の検討にあたっては,化石燃料課税の場合とは別の制度設計の検討を必要としている。
<課税段階>
化石燃料の課税段階としては,課税事務の関係から,最上流(輸入時点)又は上流(製造所からの出荷時点)とする案が有力としている(こうした段階での課税では,消費者への供給段階で課税する場合に比べ,価格インセンティブ効果が出にくいとの指摘に対しては,小売業者の領収書に税額を表示する方法があると指摘)。
<税率の水準>
これまでの議論では,低い税率でも税収を前提とした助成措置を導入すれば効果があると指摘。炭素1トンあたり3400円(CO2
1トン当たりでは約927円に相当)の課税により,税収をすべて温暖化対策に用いると,この施策でエネルギー起源CO2の1990年の総排出量に比べ9.5%分の削減効果が見込まれ,現在の基準年に比べ10%高い水準から,2008〜2010年の目標である0.5%分増に抑制することができるとしている。この試算を部門別に示したのが表1である。家庭用,業務用部門に大きな効果を示すとの結果になっている。
| 表1 炭素1トンに3600円を課税したときの効果の試算 |
| (単位:温室効果ガス排出量=CO2百トン,( )は1990年を100とした指数) |
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1990年度 |
2000年度 |
2010年度 |
| 市場選択 |
課税 |
課税+補助金 |
| 産 業 |
490 |
495(101) |
480( 98) |
478( 98) |
448( 91) |
| 家 庭 |
138 |
166(120) |
174(126) |
172(124) |
147(107) |
| 業 務 |
124 |
152(122) |
164(132) |
158(127) |
137(110) |
| 運 輸 |
212 |
256(121) |
240(113) |
240(113) |
236(111) |
| エネルギー転換 |
77 |
86(111) |
86(111) |
85(110) |
78(101) |
| 合 計 |
1,042 |
1,155(111) |
1,144(110) |
1,133(109) |
1,047(100.4) |
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| 注1) |
市場選択ケースとは,省エネルギー技術を導入するかどうかの判断に当たって,初期投資のコストと設備の運用に必要なエネルギーコストの双方を勘案し,各部門の主体が合理的な機器選択を行うケースであり,現状対策ケースに相当する。 |
| 注2) |
3.6千円+補助金ケースにおける二酸化炭素排出量である1047百万トンは,90年における温室効果ガス総排出量比で+0.4%である。地球環境部会対策強化ケースでは,2010年における追加対策ケースの二酸化炭素排出量を同+0.5%に抑制するほか,非エネルギー起源CO2,メタン及び一酸化二窒素で−1.4〜−0.8%と推計し,代替フロン等3ガスは精査中としている。中央環境審議会においては,今後も温室効果ガス排出量の精査を進めることとしており,最終的に調整を図り,6%削減目標の達成を図ることとしている。 |
| 注3) |
CO2削減量,経済影響とも,2010年における温暖化対策税や他の追加的な温暖化対策を導入しなかった場合との比較である。また,CO2削減量の%は,1990年のCO2排出量に対する割合である。 |
| 注4) |
炭素トン当たり3.6千円の税を課し,税の軽減をしなかった場合,税収は約1兆100億円となる。 |
●税制批判への反論
これまで報告書等では,温暖化対策税制についての各種の指摘に対して,一方で賛成論からの意見という形で反論を行っている。
- 景気への悪影響や企業の活力を奪うとの指摘に対しては,税収を温暖化対策を行う主体へ貫流させることにより,石油危機時のような所得の海外への流出とは異なり,マクロ経済に与える影響は軽微と考えられること,多くの製造業のエネルギーコストの割合は5%に満たないという指摘もあげている。
- 国際競争力の面で,アジア諸国や米国など,競争相手であり,かつ京都議定書の削減義務を負っていない国々との間でハンデを負うことになるとの指摘に対しては,工場の海外移転は海外との労働コストの差の起因によるものが多く,課税によるエネルギーコストの増加は大きなウエイトを占めるとは考えにくいとしている。
一方で,国際競争力への影響を緩和する措置も検討すべきとしているが,例えば輸出品への還付,輸入品への課税については検討の必要があるとしているが,これは技術的に困難な問題があるとしている。
●他の税制との調整も
以上,中環審のまとめから想定している税制の概況をみたが,現在,日本にはすでに多くのエネルギー税制が存在している。まとめでは新たな税制として提案されているが,現行の税制との調整で実質的に温暖対策税的な内容の税制を組むことも否定できない。
●産構審は慎重論
こうした環境省・中央環境審議会の考え方に対し,経済産業省・産業構造審議会が同じ8月にまとめた報告では,次のように完全には反対の立場には立っていない。
「化石燃料に課税することによりエネルギー起源CO2の排出量の抑制・削減を企図する,いわゆる環境税については,価格弾力性を通じて各主体の温室効果ガス排出の抑制を図ることが重要であり,京都議定書の約束達成を図る観点から,環境税を手法の1つとして検討すべきとの指摘があった。他方,環境税は,エネルギー消費の増大が著しい民生・運輸部門の対策としての効果が不明確であること,米国や中国等と厳しい競争関係にあるわが国産業に対して既存のエネルギー諸税に加えて新たに税負担が増大すれば,国際競争力に悪影響を及ぼすのみならず生産の海外移転を促進し地球規模の温暖化防止に逆行する恐れがあること,温暖化対策のための予算は既存の枠組みの中で十分に確保されておりその有効活用が先決であることなどから,その導入には反対であるとの指摘もなされた。経済的手法としての環境税の取扱いに関しては,こうした意見を十分踏まえるとともに,他の方法との比較や国際的な動向,これまでの地球温暖化対策の実績と評価などを十分考慮しつつ,総合的かつ慎重に検討することが重要である。」
●産業界は反対
こうした環境省側の意向に対し,産業界を代表する形で日本経団連が反対を表明している。別項1にその概要を示す。
<別項1>
日本経団連の環境税に関する意見(要旨)
1.技術革新と省エネ努力が基本
環境税は,国民や企業の健全な経済活動を制約し,わが国の経済活力を大きく殺ぐものであり,絶対に容認できない。地球温暖化対策は,経済と環境の両立を基本に据え,税や経済統制色の強い政策ではなく,技術革新とその普及,省エネ努力を進めるための情報提供・啓発を中心に進めるべきである。
2.環境税は問題解決に逆行
わが国産業は世界最高水準のエネルギー効率を達成しており,さらなる省エネの余地は小さく,一方,限界コストは極めて大きくなっている。また,現在の経済下では,消費者への転嫁は困難で,事実上の企業課税となる。
こうした状況での環境税の導入は,企業の国際競争力を失わせ,産業の空洞化をさらに進めかねない。
わが国のエネルギー課税は重畳的に行われ,すでにすべての化石燃料に対して温室効果ガス排出量を加味した課税が行われている。環境税はまったくの重課税である。
温暖化対策に必要な財源は,石油・石炭税の使途をグリー化するなど,今でも必要な財源は措置されており,新たな財源が必要であるなら,既存の1兆2億円の厳格な評価が必要である。
3.国内排出量取引制度にも断固反対
温室効果ガスの排出枠を政府が割り当てる国内排出量取引制度についても,エネルギーの適正な使用量を政府が事前に決めるという極めて規制色,経済統制色の強い施策であり,産業構造の転換,高度化を阻害する要因となることから,断固反対する。
4.産業界は自主行動計画を中心に貢献
産業界はこれまで環境自主行動計画の推進など積極的な取組みを進め,産業部門において着実な成果をあげてきた。今後は計画の信頼性,透明性の一層の強化に加え,民生・運輸部門においてもさらなる貢献を行っていく。
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