機関誌「冷凍と空調」 / 2004.10 (NO.521)
委員会報告
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解 説
ルームエアコンディショナの期間消費電力量算出基準
(JRA 4046)の改定について

 

家庭用エアコン技術専門委員会

1.基準改定の背景

 平成9年12月に開催された地球温暖化枠組条約締結国会議・京都会議では,地球的規模の温暖化を抑制すべくCO2などの温暖化ガス排出量目標が設けられ,平成11年には「エネルギーの使用の合理化に関する法律(通称,省エネ法)」の改正がなされており,省エネ化は社会的な取組みとなっている。現在では製造業者だけでなく,消費者においても省エネに関する意識向上がなされている。
 特にルームエアコンは家庭内での電力消費量が最も多い機器といわれ,ルームエアコンの省エネに対する取組みは,地球温暖化問題への対応としての重要性がますます大きくなっている。また,消費者におけるランニングコストの節約という省エネ意識の高まりをうけて,平成11年に日本冷凍空調工業会規格JRA 4046「ルームエアコンの期間消費電力量算出基準」を制定し,家庭において実際に使用する場合を想定した期間消費電力量の算出方法を規定した。これにより公正でかつ多機種の期間消費電力量を,消費者に情報提供を行うことが可能となり,消費者の省エネ意識もますます高まり,地球温暖化問題への対応として大きく貢献した。
 一方で期間消費電力量は消費者には理解しやすい指標であるが,能力が異なる製品間では明確な比較ができない問題がある。そこで,機器開発においては,能力と消費電力の比である効率を用いて省エネ性を評価することとし,従来は定格条件における能力と消費電力の比である,エネルギー消費効率(COP)が省エネ法などの指標として用いられてきた。しかし,従来のエネルギー消費効率(COP)は,定格条件1ポイントで求められてきたため,エアコンの効率は,建物負荷,外気温度,さらに現在の主流であるインバータ機においては圧縮機の回転数等により特性が変化するため,実使用に近い評価指標としては課題がある。そこで,JRA 4046「ルームエアコンの期間消費電力量算出基準」を改定し,より実使用に近いエネルギー消費効率である期間エネルギー消費効率の表示のための必要事項,及び,その検証評価を規定し,実用化を図った。

2.改定内容

(1)期間エネルギー消費効率の表示及び評価方法の規定化
 これまでJRA 4046規格は,期間消費電力量の目安の情報公開を目的としていたため,期間エネルギー消費効率である,冷房期間の期間エネルギー消費効率CSPF(Cooling Seasonal Performance Factor),暖房期間の期間エネルギー消費効率HSPF(Heating Seasonal Performance Factor)及び通年での期間エネルギー消費効率APF(Annual Performance Factor)に関しては,定義を記すのみとし表示に関する規定を行っていない。そこで,JRA規格を改定し,期間エネルギー消費効率の実用化に向けて,表示に関する規定を設けるとともに,表示に対する妥当性検証が行えるように,評価結果を用いて期間エネルギー消費効率の実測値を算出する方法を新たに規定した。

(2)期間消費電力量表示の算出法の見直し
 これまでは,JIS C 9612にて規定された定格,定格中間,さらに暖房では定格低温の諸性能の表示値を用いて,期間消費電力量の表示値の算出を行っていた。
 今回の改正で新たに期間エネルギー消費効率の表示を追加したことで,期間消費電力量の表示を併記した場合,通常は双方とも検証評価が要求される。
 しかし,エアコンの容量帯に応じて建物負荷を定めれば,期間エネルギー消費効率と期間消費電力量とは一義的に定まる関係があることから,期間エネルギー消費効率の表示値から期間消費電力量の表示値を算出する手法に見直しを行った。
 つまり双方の値の相関関係を明確にすることで,期間エネルギー消費効率の検証評価のみで,双方の表示化を円滑に運営できるように配慮した。

(3)建物の想定モデルの明確化
 暖房負荷は,冷房負荷と同一の広さの部屋にて評価すべきという考えの下に,冷房負荷に対する固定比(定格冷房能力と定格暖房標準能力の比)で算出を行う。
 これまで,暖房負荷は,JIS C 9612-1999附属書3に示す,木造住宅や集合住宅を含めた各種住宅における暖房負荷(空冷式)と冷房負荷の比率の平均値より暖房負荷を定めていたが,基準がより明確で,理解しやすくなるように見直しを行った。
 そこで,JIS記載の住宅構造の中で最も代表的と思われる住宅の種類として,木造住宅(南向,和室)を選定し,この条件から求まる冷暖房の建物負荷比と,冷暖房の建物負荷比の概算結果(参考照)とを総合的に判断し,冷暖房の建物負荷比を1.25と定めた。

(4)国際規格との整合化
 暖房極低温条件は,これまで−8.5℃と規定していたが,ISO規格と整合性のあるJIS B 8615-1に定める温度条件を用いるため−7℃に見直しを図り,本規格がより諸外国に提案できる規格作成に努めた。

3.期間エネルギー消費効率算出法の概要

 インバータエアコンの冷房期間エネルギー消費効率を算出するためには2点,暖房期間エネルギー消費効率を算出するためには3点の代表評価点を用いて算出する。
 これらの測定点から,外気温度ごとの機器のエネルギー消費効率を求め,期間中のエネルギー消費効率を算出する手順を,暖房運転を例に説明する。
 図1は横軸に外気温度,縦軸に暖房能力を示す。


図1 暖房能力特性図

(1)期間総合負荷(エアコンが発揮する能力)の算出
 図1において,暖房負荷は冷房負荷と同一の広さの部屋にて評価するために,冷房負荷に対する固定比で算出し,暖房負荷を求めるための外気温度7℃における暖房能力は定格冷房能力の表示値の1.25倍とする。暖房の建物負荷は0℃を基準に扱うため,外気温度7℃における暖房能力に外気温度補正係数0.82を考慮し,これを外気温度0℃における暖房の建物負荷とする(定格冷房能力の表示値×1.25×0.82)。
 また外気温度17℃にて建物負荷が0と定め,双方を直線で結んだ暖房負荷線BLが室内を20℃に保つために必要な暖房能力BLを示す。
 各外気温度における建物負荷BL(tj)を1℃刻みで算出し,各外気温度tjの発生時間njと積し,その総和が暖房期間中の期間総合負荷HSTL(Heating Seasonal Total Load)となる。

 HSTL=(BL(tj)×nj) :(Wh)

 なお,発生時間njは東京をモデルとした値。

(2)期間消費電力量の算出
 図1において,3つの●印が暖房の代表評価点であり,JIS C 9612に基づき評価を行った実測値を用いる。
 そのうち,A0は外気温度7℃の暖房の定格能力測定点を示し,図中に示す温度特性の係数を用いて定格能力と同一の圧縮機回転数で運転したときの暖房能力の外気温度特性(線T)を求める。これにより,定格能力特性と暖房負荷の両線の交点A1の暖房能力が算出できる。同様に線Uは,暖房低温能力と同一の圧縮機回転数で運転したときの暖房能力の外気温度特性を示し,建物負荷との交点B1を算出し,線Vは定格能力の1/2能力である中間能力と同一の圧縮機回転数で運転したときの暖房能力の外気温度特性を示し建物負荷との交点C1を算出する。
 しかし,暖房運転では,外気温度5.5℃以下,−7℃以上の外気温度領域では,除霜運転を行うために,無着霜運転に比べて暖房能力が低下する。
 図中の上記温度範囲で線図が折れているのがこの現象を示したもので,能力低下率は固定値として扱い,無着霜運転時と同様に建物負荷との交点を算出する。例えば定格能力特性は着霜運転を行う外気温度では,建物負荷と交わる点A2になる。
 消費電力においても能力と同様に,各圧縮機の回転数ごとの外気温度特性を求め,A1〜C1,A2〜C2の点の外気温度に対応した消費電力を求める。
 無着霜時では,A1〜C1の点の外気温度に対応した能力と消費電力より,着霜時では,A2〜C2の点の外気温度に対応した能力と消費電力より求まる各3点のCOPをベースに,直線近似により無着霜時と着霜時のCOPの外気温度特性を求める。このCOP特性と各外気温度で必要とする暖房負荷(=バランス暖房能力)から,外気温度tjのバランス消費電力 p(tj) を外気温度1℃刻みで算出する。
 このようにして算出した外気温度tjの消費電力p(tj)と,外気温度tjにおける発生時間njとを積し,その総和が暖房期間消費電力量HSTE(Heating Seasonal Total Energy)となる。

 HSTE=煤i消費電力p(tj)×発生時間nj):(Wh)

 なお,暖房運転の場合はエアコンの最大能力が建物負荷に満たない外気温度では,能力の不足分を電熱装置で補ったとして,これを消費電力に加える。

(3)期間エネルギー消費効率の算出
 暖房期間を通じてのエネルギー消費効率HSPFは次の式より求まる。

暖房期間エネルギー消費効率:
 HSPF= HSTL
HSTE

 これまで暖房運転について説明したが,同様の考え方で冷房期間中の期間エネルギー消費効率が算出できる。
 冷房運転の場合は,暖房のような除霜運転を行わないためシンプルである。

冷房期間エネルギー消費効率:
 CSPF= CSTL
CSTE

通年エネルギー消費効率:
 APF= HSTL+CSTL
HSTE+CSTE
 APF:Annual Performance Factor

4.期間消費電力量の表示関連

 期間エネルギー消費効率の表示する値は,3.で定めた期間エネルギー消費効率の算出方法をもとに評価を行った場合に,表記した値が実測値以上になるように,期間エネルギー消費効率の表示値を定める。
 また,期間消費電力量の表示値は,期間エネルギー消費効率の表記した値により一義的に定まるように,表1による期間総合負荷の値を用いて算出する。

表1 期間総合負荷の例

定格冷房能力kWによる種類 2.2 2.8 4.0 5.0
期間合計 HSTL+CSTL kWh 4,408 5,611 8,015 10,019
冷房期間 CSTL kWh 1,283 1,633 2,332 2,915
暖房期間 HSTL kWh 3,125 3,978 5,683 7,104

暖房期間消費電力量HSTEの表示値
 HSTE= HSTL(表1より)
HSPF(表示値)

冷房期間消費電力量CSTEの表示値
 CSTE= CSTL(表1より)
CSPF(表示値)

期間消費電力量APCの表示値
 APC= HSTL+CSTL(表1より)
APF(表示値)
APC:Annual Power Consumption

 なお,期間消費電力量の表示の単位はkWhとし,小数点第1位で四捨五入した値を表記する。

5.総括

 これまでエアコンの省エネ性を示す指標として,エネルギー消費効率COPを用いてきたが,今回のJRA 4046規格の改定により,エアコンの外気温度の影響を加味し使用実態にあったエネルギー消費効率である期間エネルギー消費効率の運営を可能とした。
 JRA 4046規格の制定以来,多機種に期間消費電力量の情報提供を図り,さらに公正に運用がなされ省エネ化に大きく貢献してきた実績が高く評価され,本規格の考え方は中国GB規格にも規格化に向けて議論されており,またEUでも本規格を代表する性能評価点である中間能力におけるエネルギー消費効率EER(定格の50%),COP(定格の50%)が規格案として議論されている。今回の改正により期間エネルギー消費効率の運営を可能にしたことで,省エネ性を正しくとらえた上で技術開発が推進されるとともに,本規格はこれまで以上に諸外国にも提案ができるものと考えられる。

参考文献:
日本冷凍空調工業会 冷凍と空調1999年8月号
「ルームエアコンの期間消費電力量算出法のJRA規格制定について」


(参考)
冷暖房負荷比の概算

 全国の住宅戸数は約4400万戸*1といわれているが,住宅の断熱性能は40年以上前に着工した住宅から,近年の省エネ化推進とともに進んだ高気密・高断熱住宅と,様々な住宅構造のものが存在している。このため住宅の空調負荷(建物負荷)も住宅により大きく変化することが想定されるが,年度別住宅着工件数のデータ*1などから考えると,住宅の着工からの年数の平均は約20年である。このことから,約20年前の住宅の建物構造が平均的な住宅の断熱構造として考えて冷房と暖房の建物負荷を概算し,冷房と暖房の期間エネルギー消費効率を,同一の部屋の広さで算出するための暖房負荷と冷房負荷の負荷比を算出する。

(建物負荷の概算のための条件)
 木造南向き,地域は東京,部屋の広さ10畳とする。
 暖房における設定温度は20℃,外気温度0℃のJIS条件
 冷房における設定温度は27℃,冷房は33℃のJIS条件
 その他,間取り等は,参考図1に示す。


参考図1 住宅モデルと熱の移動

(1)暖房負荷
 暖房時における建物負荷として熱貫流による負荷,換気による熱損失負荷,起動前に冷却された壁面や天井面等を暖めるのに要する建物の蓄熱負荷がある。
 また,熱貫流による負荷として,室内から屋外への熱貫流負荷と室内から内壁を隔てて隣室への熱貫流率とがある。室内から外気への熱貫流負荷は,住宅性能のQ値からその目安がわかるため,ここでは一般的な住宅の外気への熱貫流率として5.5(W/m2・K)を用いた。
 また,室内から隣室への熱貫流として空気調和・衛生工学会規格HAS-108の冷暖負荷計算表の考え方を適用した。
 室内の発熱は,常に一定の発熱量が期待できないため考慮しない。
 参考表1より,各種建物負荷を合計すると,外気温度0℃における建物負荷は,2882Wと見込まれる。つまり,エアコン能力の外気温度特性を考慮すると,外気温度0℃で,室内を20℃まで暖めるためには,エアコンの定格能力を定める外気温度7℃の条件では,3515Wの能力を必要とすることになる。

参考表1 暖房建物負荷試算結果

(2)冷房負荷
 冷房時における建物負荷として熱貫流による負荷,窓ガラスからの日射負荷,日射による壁面輻射,起動前の過熱した壁面や天井面等を冷却するために要する建物の蓄熱負荷,室内の内部発熱の顕熱負荷があり,冷房時の場合は,さらに潜熱負荷が加わる。
 熱貫流負荷の考え方は,暖房と同一とする。また窓ガラスから入る日射負荷は,(社)空気調和・衛生工学会の標準気象データより,外気温度が約30℃以上の温度になる日射取得量(南,東)を用いて算出した。
 また,日射による壁面輻射量は,日射による壁面の温度上昇を考慮して算出する。
 参考表2より,各種の建物負荷を合計すると外気温度33℃における建物負荷は,2838Wが見込まれる。冷房運転の場合は,外気温度による能力の影響が小さいことから,エアコンの定格能力を定める外気35℃の条件で2838Wの能力を発揮すればよい。

参考表2 冷房建物負荷試算結果

(3)冷暖負荷比
 以上より,冷房負荷と暖房負荷とを,同一の広さの部屋にて評価するためには,エアコンの定格条件における,冷房能力と暖房能力の比率(冷暖負荷比)は

 冷暖負荷比= 3515(W) =1.24
2838(W)
となり,冷暖負荷比はJIS C 9612附属書3より求まる住宅構造の中で,木造南向き(和室)における冷暖負荷比1.25が最も近い値になる。

*1 総務省,住宅・土地統計調査結果 (平成10年度)
*2 出典,空気調和・衛生工学会 「最大熱負荷計算法」

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