機関誌「冷凍と空調」
/ 2007.10 (NO.557)
資料紹介
HCFC,途上国への規制強化で合意
―モントリオール議定書締約国会合―
9月17日〜21日,カナダのモントリオールで「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第19回締約国会合」が開催されました。この会合で,HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の規制スケジュールの強化を内容とした「モントリオール調整」が決定しました。
規制スケジュール等について紹介します。
(編集係)
<HCFC削減スケジュールの前倒しについて>
●現行のHCFCの規制
先進国のHCFCの規制は消費量と生産量とでは異なっており,消費量(生産量+輸入量−輸出量)についての規制は1996年に始まった。「HCFCの1989年の消費量+CFC(クロロフルオロカーボン)の1989年の消費量×2.8%」を基準量とし,2004年からは35%の削減,2010年以降は65%の削減,2015年以降は90%の削減,そして2020年全廃となっていた。ただし,冷凍空調設備の補充用の冷媒に限り消費量の基準量の0.5%を上限として2029年まで生産が認められていた。また生産量については,2004年より生産量の基準値「HCFCの1989年生産量・消費量の平均値+CFCの1989年生産量・消費量の平均値」を超えてはならないとなっていた。
モントリオール議定書では途上国におけるHCFCの生産量と消費量について,規制が開始されていない。現行の規制では基準年は2015年となっており,2040年の全廃期限まで段階的削減義務も負っていない。しかし,中国を中心とする途上国の生産量・消費量が急増しており,2002年のモントリオール議定書の科学評価パネルの報告でオゾンホールは2050年ごろには1980年以前状態に回復するとされていたものが,2006年の報告ではオゾンホールの回復は5年から15年遅れる見込みとなった。また,HCFCにはオゾン層破壊効果のみならず高い温室効果もあるため温暖化への影響が懸念され,削減スケジュールの前倒しの必要性が指摘されていた。
<HCFC生産量の推移>
<2005年のHCFCの世界の消費量>
●モントリオール調整について
今回の締約国会合では,途上国におけるHCFCの生産量・消費量の削減スケジュールの前倒しを決定した。途上国の削減スケジュールの前倒しはモントリオール議定書採択以来20年で初めてのことである。また先進国についても途上国の取組みをリードするという視点から,消費量の段階的削減幅の一部を深掘りし,また生産量の削減スケジュールに段階的削減と全廃を追加した。
○途上国の前倒し内容
途上国の削減スケジュールとしては,これまで2015年としていた基準年を2009年と2010年の平均に前倒しし,規制開始も2016年から2013年とした。また全廃については,消費量が2040年,生産量に関しては規定されていなかったものを,消費量・生産量ともに2030年とし,既存機器用の補充用冷媒については2030年〜2040年の間は平均2.5%/年まで認めるとした。
また,これまでは消費量の全廃までの段階的削減の義務を負っていなかったが,消費量・生産量ともに2015年以降は10%の削減,2020年以降35%の削減,2025年以降67.5%の削減と段階的削減が義務付けられた。
<途上国のHCFC削減スケジュール>
消費量
生産量
旧
新
旧
新
基準量
2015年
2009〜2010年平均
1989年
2009〜2010年平均
凍結
2016年
2013年
2016年
2013年
段階的削減
−
2015年−10%
2020年−35%
2025年−67.5%
−
2015年−10%
2020年−35%
2025年−67.5%
全廃
2040年
2030年
(2030〜2040年の間,平均2.5%/年の補充用冷媒を認める)
−
2030年
(2030〜2040年の間,平均2.5%/年の補充用冷媒を認める)
<途上国の消費量前倒しスケジュール>
<途上国の生産量前倒しスケジュール>
○先進国の前倒し内容
先進国はこれまでのスケジュールでは,消費量については段階的削減の中で2010年からは基準年から65%の削減となっていたが75%の削減へと強化された。
生産量に関しては,これまで段階的削減も全廃も課されていなかったが,2010年には基準年の75%の削減,2015年には90%の削減が義務付けられた。また,全廃スケジュールも消費量と同じ2020年と規定され,消費量同様2030年〜2040年の間は既存機器の補充用冷媒として基準量の平均0.5%/年まで認めるとしている。
<先進国のHCFC削減スケジュール>
消費量
生産量
旧
新
旧
新
基準量
1989年*
1989年*
1989年*
1989年*
凍結
1996年
1996年
2004年
2004年
段階的削減
2004年−35%
2010年−65%
2015年−90%
2004年−35%
2010年−75%
2015年−90%
−
2010年−75%
2015年−90%
全廃
2020年
(2020〜2030年の間,0.5%の補充用冷媒を認める)
2020年
(2020〜2030年の間,0.5%の補充用冷媒を認める)
−
2020年
(2020〜2030年の間,0.5%の補充用冷媒を認める)
*消費量の基準量は,HCFCの1989年消費量+CFCの1989年消費量×2.8%
*生産量の基準量は,HCFCの1989年生産量・消費量の平均値+CFCの1989年生産量・消費量の平均値
(注) 消費量=生産量+輸入量−輸出量
<先進国の消費量前倒しスケジュール>
<先進国の生産量前倒しスケジュール>