 |
住宅事業建築主の判断にもトップランナー基準
―住宅・建築物に関する基準・指針等,改正へ―
|
 |
<住宅・建築物に関する判断の基準等について>
改正省エネルギー法の公布に伴い,判断基準の策定・見直しの作業が始まっている。
住宅・建築物に関しては,経済産業省の総合資源エネルギー調査会
省エネルギー基準部会の住宅・建築物判断基準小委員会と国土交通省の社会資本整備審議会 建築分科会の建築環境部会 省エネルギー判断基準小委員会が合同で検討を開始した。この合同会議ではこれまでの住宅・建築物に関する2つの判断の基準(建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準,住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準)と指針(住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計,施工及び維持保全の指針)の改正のほか,特定住宅の性能の向上に関する住宅事業建築主の判断の基準の策定についても検討が行われている。これらの判断基準・指針は11月にパブリックコメントにかけられ,年内にも各告示が公布される予定となっている。
以下,それぞれの基準について,策定・改正案の概要を紹介する。
なお,工場・オフィス等の判断の基準についても,現在,経済産業省の総合資源エネルギー調査会
省エネルギー基準部会の下部組織である工場等判断基準小委員会において,事業者の判断の基準,セクター別ベンチマーク,共同省エネルギー事業等について検討が行われており,今年中にとりまとめが行われる予定となっている。
1.住宅事業建築主の判断基準の設定について
住宅事業建築主(住宅の建築を業として行う建築主)の判断の基準は,住宅事業建築主が新築する特定住宅について,住宅の外壁や窓を通しての熱の損失の防止や住宅に設けられる設備の省エネルギー性能の向上に関する判断の基準となっており,トップランナー基準が導入されることになっている。
なお,特定住宅については,一戸建ての住宅と定める予定であるとしている。
<判断の基準の考え方>

(1) 目標年次・基準
| @ |
目標年度の設定方法として,各社の建売戸建住宅における商品シリーズのモデルチェンジのサイクルや建築材料等に関する技術開発の見通し等を踏まえて設定するとしている。具体的には,目標年次は5年後とし,2009年施行の予定であることから2013年を目標年次とするとしている。 |
| A |
外壁,窓等の断熱性能に関しては,現行の省エネルギー判断基準(平成11年基準)を満たすものとしている。 |
| B |
断熱性能に加え,空気調和設備等の効率性についても総合的に評価するため,一次エネルギー消費量に着目した基準を設定するとしている。 |
| C |
一次エネルギー消費量の評価に当たっては,住宅の外壁,窓等の断熱性能のほか,住宅に設置されるエネルギーを多く使用する建築設備(空気調和設備その他の機械換気設備,照明設備,給湯設備)を対象とするとしている。 |
| D |
住宅の販売時に備え付けられている建築設備を対象とし,後から持ち込まれる家電機器については評価の対象外とするとしている。 |
| E |
省エネルギー法に基づく建築設備ではないが,太陽光発電設備等の効果についての考慮するものとするとしている。 |
(2) 目標とする水準
目標水準の設定方法として,現時点において,すべての建売戸建住宅の中で,省エネ性能がもっとも優れているものの性能を基本とし,技術開発等による性能の向上の見通しを加味した水準を,国土交通大臣が,全住宅に共通の目標として設定するとしている。
| @ |
外壁,窓等の断熱性能 |
| |
現行の省エネルギー基準を満たすものとした上で,目標水準を定める時点で高効率と評価された高効率給湯設備を導入することによって実現される一次エネルギー消費量を目標とする水準としている。 |
| A |
目標とする一次エネルギー消費量 |
| |
断熱性能に優れた外壁,窓等と高効率の建築設備等の様々な組合せにより達成できれば良いとし,気候条件に応じた地域区分ごとに定めるとしている。 |
なお,この目標水準は,現行省エネルギー判断基準を満たす外壁,窓等を有する一般的な設備を設置した住宅の一次エネルギー消費量と比べ,おおむね10%程度の削減に相当すると,両省ではみている。
(3) 目標水準達成状況の確認方法
| @ |
省エネルギー性能の基準達成率の確認 |
| |
一定戸数以上の建売戸建住宅を供給する住宅事業建築主が1年間に供給した建売戸建住宅について,目標水準とする一次エネルギー消費量に対する評価対象住宅の一次エネルギー消費量の達成率が100%以上になるかどうかを確認するとしている。この場合,必ずしも個々の住宅の省エネルギー性能を把握する必要はないとし,各社の建売戸建住宅のシリーズごとの標準仕様をもとに,地域区分ごとに省エネルギー性能を把握し,それぞれの達成率に供給戸数を乗じたものの合計を全戸数で除することで,省エネルギー性能の基準達成率の平均値を把握するとしている。 |
| A |
一次エネルギー消費量の算定 |
| |
代表的な省エネルギー対策ごとに一次エネルギー消費を示した「早見表」,より広範な省エネルギー対策を詳細に評価するための「支援ソフト」等の整備についても検討するとしている。 |
なお,住宅の一定戸数は,150戸と定める予定であるという。
2.住宅に係る省エネルギー判断基準改正について
現在,住宅に係る省エネルギー判断基準の規定事項は断熱構造化のほか,防露,気密化,日射遮蔽から施工仕様に至るまでの広範にわたり,省エネルギー措置の届出に当たって届出者が準備・提出しなければならない図面・書類は,多種多様なものが必要となっている。
この届出は,これまでは床面積2000m2以上の大規模な住宅だけに義務づけられていたが,5月に公布された改正省エネルギー法では,2000m2未満の中小規模の住宅・建築物にも義務化される。
このため,建築主はもちろんのこと,設計者や施工者等が的確に対応し,届出等が円滑に実施されるよう,これまでに得られた技術的知見や運用の実態等も踏まえ,省エネルギー性能の要求水準を変えることなく,省エネルギー判断基準の明確化・簡素化を行うとしている。
住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準については,具体的には以下について改正を行うとしている。
| @ |
冬期日射有効利用住宅にかかる基準の簡素化 |
| |
これまでの知見と一定の検証結果を踏まえ,冬期日射を利用する住宅にかかる熱損失係数の緩和措置適用の際の評価式を簡素化する。また,その際に用いる地域区分についても5区分から3区分に簡素化する。 |
| A |
開口部の日射遮蔽措置に係る簡易な算出方法の導入 |
| |
開口部の夏期日射侵入率の計算にあたり,開口部上部に共用廊下,バルコニー等日射遮蔽に有効となる庇状のものが存在する場合に乗ずることのできる係数を示し,夏期日射取得係数の算出を容易にする。 |
| B |
削除項目 |
| |
- 換気量の確保についての規定
建築基準法に換気量の確保が規定されたことを踏まえ,省エネルギー判断基準から削除する。
- 気密性の確保についての規定
施工技術・施工精度の向上,使用される建材・工法の変化により住宅構造形式にかかわらず一定程度の気密性が確保される状況にあること,住宅性能表示制度の特別評価方法認定の蓄積により多様な方法による気密性の確保が可能であることが明らかになってきたことなどから,気密住宅に係る定量的基準については除外する。
|
なお,住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計,施工及び維持保全に関する指針については,以下項目について改正を行うとしている。
| @ |
鉄骨造における外張断熱工法以外の熱抵抗値基準の追加 |
| A |
断熱構造化を要しない部分の追加(玄関・勝手口の土間床部分等) |
| B |
鉄筋コンクリート造の構造熱橋部における断熱補強に係る規定の合理化 |
| C |
開口部の断熱構造化にかかる規定の合理化 |
| D |
詳細な仕様規定の合理化 |
| E |
気密層の施工に係る基準の削除 |
3.建築物に係る省エネルギー判断基準の改正について
改正省エネルギー法により,省エネ措置の特定行政庁への届出の義務化対象が拡大されたことから,建築物の建築主が的確に対応できるよう,また,届出等事務が円滑の実施されるよう,2000m2未満の中小規模の建築物について,要求性能をできる限り変えることなく,従来の省エネルギー基準よりも簡便な省エネルギー基準を設定する必要があるとしている。
(1) 現行基準について
現行制度の評価項目は,以下の6つが設定されている。
| @ |
建築物の外皮,窓等を通しての熱の損失の防止 |
| A |
空気調和設備 |
| B |
空気調和設備以外の機械換気設備 |
| C |
照明設備 |
| D |
給湯設備 |
| E |
昇降機 |
また,評価基準として,以下の2つが設定されている。
| @ |
建築物の外壁,窓などからの熱損失の防止性能を評価するもの(PAL) |
| A |
建築物に設ける建築設備に係るエネルギーの効率的利用性能を評価するもの(CEC) |
さらに,省エネルギー性能の評価制度は上記PAL/CECには劣るが,比較的簡単な評価方法であるポイント法(仕様基準)がある。これは床面積2000m2以上5000m2以下の建築物を対象に,熱損失の防止及びそれぞれの設備において評価項目ごとに省エネルギーに係る措置状況に応じて一定の点数を与え,点数の合計が100以上の場合,省エネルギー措置の性能基準レベルを達成しているとするものである。
(2) 改正の概要
今回新たに届出義務の対象となる2000m2未満の中小規模の建築物を対象に,現行のポイント法よりもさらに簡易に評価できる簡易なポイント法を整備するとしている。それぞれの評価項目ごとの概要を表<ポイント法と簡易なポイント法>に示す。
|