地中熱と冷房排熱を熱源とする給湯機能を持つ戸建住宅用設備
「地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システム」の開発について
旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都新宿区,代表取締役社長:波多野信吾)は,北海道大学大学院工学研究科長野克則教授の協力のもと,日立アプライアンス株式会社,株式会社日立空調SEと共同して,戸建住宅用量産システムとしては初めて地中熱と冷房排熱を給湯熱源に利用する「地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システム」を開発しました。既に基本技術の開発と試作モデルによる検証を終えて,8月より量産モデルでの実証試験を開始し,来年1月を目処に当社商品ヘーベルハウスの設備仕様として発売する予定です。
当社では,地中熱を熱源とすることで消費電力を削減してCO2の排出を抑制し,冷房排熱を外気に排出しないことから都市部のヒートアイランド現象の抑制効果が期待される「地中熱利用冷暖房システム」を,平成16年7月よりヘーベルハウスの設備仕様として販売してきました。これは,販売エリアの大部分が都市部である当社にとっては特に,環境貢献という面からも大変有効な技術と言えるものでした。
今回開発した新システムでは,地中熱冷暖房に自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯機(エコキュート)と同様の機能を組み合わせることで,戸建住宅用量産システムとしては初めて,地中熱を熱源とする給湯システムを開発しました。冬期は地中熱利用により,また,夏期は冷房排熱の有効利用により給湯効率や省エネ性を向上し,CO2排出量の削減を実現しました。
なお,CO2排出問題に大きく影響する家庭部門におけるエネルギー使用の約6割は,冷暖房および給湯が占めています。今回の新システムは,その冷暖房と給湯の熱源に地中熱(および冷房排熱)を利用することでCO2排出量削減に貢献するものです。
1. 開発の背景
最近は当社でも,オール電化住宅の普及とともに,給湯システムにエコキュート(ヒートポンプ式給湯機)が採用されるケースが増えています。特に地中熱冷暖房はオール電化・エコキュートと合わせて採用される傾向が強いと言えます。しかし,従来の当社地中熱冷暖房は給湯システムと全く別々であり,生活エネルギーの約3分の1を占める給湯エネルギーに関しては空気熱源を利用する形となっていました。そこで,冷暖房と合わせて給湯熱源も地中熱に変更することで,消費電力を抑えCO2排出量を更に削減できると考えて,環境省の平成18年度地球温暖化対策技術開発事業としての助成も受けて研究・開発を進めてきました。
2. 新システムの特徴
今回開発した地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システムは,ヒートポンプ式給湯機を地中熱冷暖房と組み合わせて給湯熱源を空気から地中熱に変更することにより,ヒートポンプ式給湯機の省エネ性を更に高めました。冬期の給湯では,地中熱暖房と同じく,空気よりも温度の高い地中熱を熱源とすることで,空気と地中熱との温度差分だけ省エネ性が高まります。夏期の給湯では,従来は地中に捨てていた冷房排熱を給湯熱源として利用することで,エネルギーの有効利用により省エネ性が高まります。
これにより,冷暖房と給湯を合わせたトータルでのランニングコスト・CO2排出量を低減しました。
また,従来は冷暖房用と給湯機用の2台必要であったヒートポンプユニットを,機能を集約して1台の多機能システムとすることで,従来の地中熱冷暖房とエコキュートを組み合わせて設置する場合に比べて省スペース化するとともに,低価格化も実現できる見込みです。
3. 新システムの構成
新システムは,主に「地中熱交換器」「ヒートポンプ熱交換ユニット」「給湯機」「冷暖房室内機」から構成されます。
(1) 地中熱交換器(従来システムと変わらず)
従来システムと同じく地中熱交換器には,建物建設における軟弱地盤対策用に旭化成建材株式会社が製造・販売している旭化成独自の鋼管杭EAZET(イーゼット)を転用しています。これにより,一般的な地中熱冷暖房の場合に必要となる深度50〜100メートルという大掛かりな掘削工事が不要となり,6〜10メートル程度の鋼管杭を専用の小型重機で数本ねじ込むだけの簡易な施工で済みます。
地中に埋設したEAZETの中に,熱交換器として金属強化ポリエチレン管のUチューブを通し,そのチューブの中に不凍液を循環させることにより熱交換を行います。
(2) ヒートポンプ熱交換ユニット
ヒートポンプユニットの寸法は幅950×奥行315×高さ1100ミリメートル。コンパクトなサイズですが,冷暖房機と地中熱,給湯機と地中熱,冷房機と給湯機の間の熱交換を全てこれ1台で対応できます。空気ではなく地中熱を熱源とするため,一般的な(従来のエコキュートも含めた)ヒートポンプユニットと違い冬期運転時の着霜がなく,霜取り運転による能率ダウンがありません。また,排熱ファンがないため効率ダウンを心配する必要がなく,隣地境界までの距離が短い狭小スペースなどにも設置しやすくなります。
(3) 給湯機
給湯機の寸法は幅625×奥行730×高さ2165ミリメートル(460リットル),日立製エコキュートの貯湯層を転用しています。一般市販品をベースとすることで開発コストを抑えています。
(4) 冷暖房室内機
冷暖房室内機は日立製ヒートポンプエアコンのマルチタイプ室内機(一般市販品)を利用しているため,開発コストが抑えられるとともに,壁掛け型,1方向天井カセット型,4方向天井カセット型,床置き型,埋込み型など多様な選択肢の中から間取りなどに合わせて選ぶことができます。