コロナ禍での海外赴任体験。日本人住みたい国ランキング1位のマレーシアでの海外駐在記 ダイキン工業 原田

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No.696 2024年3月

さあ、皆さんお待ちかねの海外駐記です(パチパチパチ)。今回は東南アジア・マレーシア編です。ダイキン工業 原田様による海外駐在記をお届けします。コロナ禍での海外生活の情報はとても貴重です。では前編スタート!


過去の海外駐在記はこちらから


1. はじめに
私にとっては2回目の海外赴任として、2021年4月1日から2023年3月31日までダイキンマレーシアへ単身赴任しました。ここは首都クアラルンプールからは車で30分ほどの距離に位置し、東南アジアにおける主力工場の一つです。僅か2年という短い期間でしたが私のドタバタ経験談を紹介したいと思います。




写真1:ダイキン マレーシア




2.コロナ禍での海外赴任 乗客はわずか4人!? ~天国と○○~
日本からマレーシアに異動したのは2021年3月20日 春分の日。古来春分の日とは24節気では太陽が生まれ変わる日ともいわれ、また最近では宇宙元旦とも言われるそうです。まさに新生活スタートにふさわしい日だと一人で勝手に盛り上がり、いざ出陣。

当日は成田空港からの出国。ロビー、カウンターは閑散とした中、出発ゲートへ向かいます。しかし、そこには乗客の姿が見当りありません。ある程度予想はしていたものの、ここまで人がいないものかと不安になってきます。実際当機に乗り込んだ乗客はわずか4人、広い客室を貸し切り状態。利益度外視でも運航される航空会社にただただ感謝です。しかし恥ずかしながら “これだけ空きスペースがあるなら無料でビジネス席を使わせてよ” と、心の奥底からは我欲の呟きが湧いてきます。

普段CAさんと込み入った話しをする機会などありませんが、今回は特別。ある会話のきっかけから、思わぬ展開へと発展します。

『何日間のご出張ですか?』とCAさんから優しいお声がけ。
『3年か、長ければ5年ですかね。明解に期間を言い渡されていないのでわかりませんが』決してボケてるつもりはなく、目前に60歳を迎えるタイミングだったので、これが最後のご奉公、現地で骨を埋めるつもりでおりました。しかし、この返答にCAさんはしばらく無言です。

『今のコロナ禍で海外赴任するなんて、実はやばいヤツなのか。それとも相当痛いヤツかもしれん。下手に関わらんとこ』って思われたのかな。

そんなやりとりがあった後、しばらくしてからCAから声をかけていただき、そっとプレートが差し出されました。しかし目の前の光景を前にして、ビジネス席を使いたいという心の声が漏れていたのか? 何が起きたのか理解できず頭は混乱しています。

少し間をおいて冷静になってお礼を述べることは出来たものの、未だに信じがたい出来事でした。奇跡のような出来事から、至上の幸福感に包まれながら機上をおりることになります。


CAさんからの嬉しいプレゼント
写真2:天使からの贈り物



3.防護服でお出迎え、スーツケースに容赦なく消毒液が散布され・・
空港到着したのは深夜12時頃。ハッピーオーラを発しながら降り立つも、薄暗く閑散とした施設管内はなんとも不気味。入国手続きも数時間かかり、気分は落ち込んできます。

そこに追い打ちをかけるような出来事が。やっとのことで空港から脱出したところで出迎えてくれたのは防護服を着た方々。しかも、農薬をまくが如く、スーツケースに消毒液をぶちまけてくれます。

しかもホテルまで送ってくれるドライバーさんまでも防護服を着ているではないですか。日本では経験することの無かった出来事に、世界で起きている現実を直視せざるを得ず、僅か半日の間で起きた気分のアップダウンに初日から疲労困憊です。



防護服でスーツケースを消毒される
写真3:強烈な現地での洗礼




4.隔離から脱出して感じたさらなる現実の厳しさ
1週間の隔離を経ての仮住まいは、クアラルンプールから北西部に位置するモントキアラという地区のホテルです。コロナ禍で住居の下見もできず、現地赴任してからの家探しという強行です。結局、ホテルに隣接するコンドミニアムに契約をしましたが、ここは日本人をはじめ外国人が多く住む居住区で、自然も多く落ち着いた佇まいも感じます。



写真4:現地で契約したコンドミニアム



当時隔離を終えた4月頃には、レストラン内での飲食は禁止なるも、スーパーでの買い物や付近の散歩は自由にできる状況でした。気分転換に近隣を散策してみると、なんとコンドミニアム裏手にマレーシアの方々の居住区があることがわかりました。コンドミニアムから普段見える世界は、高層マンションが並ぶ近代的な風景。一方 直線距離にして数百メートル離れた場所には、ムスリムの方々が住む世界が広がっています。

そこは、昔見たことのある田舎の原風景のような既視感も感じます。しかし目の前に見える高層マンションとムスリムの方々の住む世界の違い、これ程近い距離で異なる文化圏が併存できていることにカルチャーショック。映画の世界に迷い込んだのかと思うくらいの浮遊感が襲ってきます。そのような中、さらなる衝撃的な出来事が起きます。


5.感染者確認で、まるごと隔離される地域
感染者は拡大一方の中で拡大防止対策の一つとして、ある一定数の感染者が確認されると対象地域を丸ごと閉鎖し、その地域からの出入りを禁止するという措置が発令されました。なんと私が住むコンドミニアム裏手の居住区がその対象になってしまいました。道路には迷彩服を着た警備員が立ち、塀には有刺鉄線が設置されています。さすがに、この様子には気分が滅入りました。




写真5:有刺鉄線で閉鎖された様子


前編の終わりはものものしい雰囲気ではございますが(笑)、後編は陽気で寛容なマレーシアの人達について触れていきます。お楽しみに…


後編は5月(697号)につづきます。


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中国駐在記 (日冷工 安田)
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