IPCC第6次評価報告書でのGWP値見直しに対する日本冷凍空調工業会のスタンスについて

2021年8月9日に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)を発行しました。当該報告書において、HFCを含む化学物質のGWP値の見直しが行われ、多くのHFCのGWP値は従来値よりも大きな値となっています。
例えばR32はフロン排出抑制法で採用されているGWP規制値の750を超える値となっていることから、一部にて指定製品の目標値への影響を危惧した不確実な情報が流れている状況を鑑み、日本冷凍空調工業会として以下に整理報告させて頂きます。

「現在施行されている日本国内法において、従来よりIPCC報告が行われる都度見直しすることは実施しておらず、現法には第4次評価報告書のGWP値を用いることが明記されていることから、日本冷凍空調工業会としては、現法を遵守した対応を継続していきます。」

各国の法規制で採用されている値 【解説】
IPCC第6次評価報告書では、各物質のGWP値が、キガリ改正や各国法規制に採用されている第4次評価報告書の値から大きく上振れしており、R32が675⇒771、R134aが1430⇒1530、R410Aが2088⇒2256と改定されました*1。これに伴い、冷凍空調機器に適用されるHFC混合冷媒に関しても計算上数値が上振れすることが予想されます。

2019年1月に発効した国際協定であるモントリオール議定書キガリ改正、およびそれに基づく各国の冷媒関連法規制は、いずれも第4次評価報告書のGWP100年値を使用し、その数値を固定値としてベースライン量などを計算しています。このGWP規制値は規制策定当時の物性値や技術的可能性、社会経済的影響など総合的に考慮して決定されています。このため、第4次評価報告書から第5次評価報告書でGWP値が変更された場合でも、これら数値の見直しに関連する法規制改訂は実施されてきませんでした。

GWP値は、@基準物質であるCO2の温暖化影響、A物質の大気寿命、B海洋などのCO2吸収率、など多くの要因から算出されますが、随時新たな科学的知見が加味され見直されます。よって算出精度も数十%の幅があることを前提としています。今回、HFCのGWP値が上振れした大きな要因はCO2自体の絶対的な温暖化影響の値が下がったことによる相対的な変化であり、物質自体の絶対的な温暖化影響が大きくなったわけではありません。今後も新たな科学的知見が加味されることによりGWP値は改定されるものと思われますが、日本冷凍空調工業会として現法を遵守した対応を継続していきます。

*1:IPCC Climate Change 2021 The Physical Science Basis Working Group I contribution to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel(Pages 7-125, 7SM-26, 7SM-27)

IPCC第6次評価報告書でのGWP値見直しに対する(一社)日本冷凍空調工業会のスタンスについて