2024年度 省エネ大賞
資源エネルギー庁長官賞
パナソニック株式会社 空質空調社

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No.704 2025年5月

【製品・ビジネスモデル部門/家庭分野】
新除湿方式 エコ・ハイブリッド搭載 「衣類乾燥除湿機 F-YEX120B」



写真1 衣類乾燥除湿機 F-YEX120B



  1. 1.はじめに
    除湿機は、お部屋の湿気対策に加え、洗濯物の乾燥用途へと使用用途が拡大しています。また、花粉症の増加、黄砂やPM2.5の影響もあり、室内衣類乾燥のニーズは高まりを見せており、雨の多い梅雨時期にとどまらず、1年中室内衣類乾燥を行うユーザーも増加しています。さらに、新築住宅においても、洗濯家事を行う専用のランドリールームを設けるなど、室内衣類乾燥を前提としたライフスタイルも定着してきています。
  2. このような背景から、当社はこれまでも冷凍サイクルを用いた「コンプレッサー方式」、吸着材を用いた「デシカント方式」、これら2方式を融合させた「ハイブリッド方式」の開発を行い、速く衣類を乾かすことを求める市場のニーズにお応えしてきました。

  3. さらにコロナ禍以降、在宅時間の増加に伴い、室内衣類乾燥においては、乾きムラや、部屋干し臭が発生するなどのお困りごともあり、お客様の室内衣類乾燥のストレス低減も重要な要素となっています。また、昨今の電気料金の高騰もあり、衣類乾燥の省エネ意識が高まっています。
  4. 今回の開発では、室内衣類乾燥の省エネ性を追求するとともに、お客様のストレスを低減することを目的に、新しい衣類乾燥除湿機の実現を目指しました。具体的には、

  5. ① 新たな除湿方式として、従来のハイブリッド方式より大幅に省エネ性を向上できる
  6. 「エコ・ハイブリッド方式」の開発

  7. ② 衣類乾燥状態と衣類の量を見極め、衣類が乾燥したら運転を止めることで無駄を省く、独自の衣類乾燥制御技術である「エコナビ制御」の開発

  8. ③ 部屋干し臭の抑制を目的に除菌、脱臭効果を有する当社独自のデバイスであるナノイー技術の活用を推進を実現することで、省エネと衣類乾燥ストレスフリーを実現する衣類乾燥除湿機の提供を目指しました。



  1. 写真2 表彰状とトロフィー


  1. 2.製品の技術特長
    ■新除湿方式「エコ・ハイブリッド方式」によるハードの省エネ
    新しい省エネ性に優れた除湿方式を開発するにあたり、冷凍サイクルの冷却器で冷却された空気の温度に着目しました。この冷却された空気の温度は、室内空気の露点温度を大きく下回る温度となっています。すなわち、この冷却された空気は、室内空気をさらに結露させる能力を有していることになります。以上のことから、冷却器出口の低温空気に着目し、空冷式熱交換器によりこの冷熱を有効利用することで除湿効率の向上を目論みました。

  2. 「エコ・ハイブリッド方式」の概略図を図1に示します。冷凍サイクルの冷却器で室内空気を冷却結露し、さらにこの冷却された空気と別経路からの室内空気を空冷式熱交換器で熱交換し、冷却結露させることで除湿を行う方式となっています。冷却器における冷凍サイクルによる冷却結露に加え、空冷式熱交換器における冷却空気との熱交換による冷却結露が付加されることになり、除湿量が向上することになります。すなわち、同じ冷凍サイクルを搭載した場合でも、より多くの水分を結露させることができ、除湿能力の大容量化、除湿効率の向上が可能となります。以上、これまで利用されなかった冷熱を活用することによって除湿効率を向上することで、省エネ性に優れた除湿方式を実現しました。

  3. 図1 エコ・ハイブリッド方式概略図


  4. ① 室内空気が冷却器で冷やされ、空気中の湿気が結露して水滴になる
    ② 冷却器で冷やされた空気と室内空気(サブ風路)が熱交換し、結露して水滴になる
    ③ 湿気を奪われた空気を、放熱器で暖め、乾燥風として室内に放出する


  5. ■衣類乾燥の無駄な運転を無くすエコナビ制御によるソフトの省エネ
    「エコナビ制御」は、温湿度センサを用い、その温湿度から独自のアルゴリズムを構築し、温湿度とその変化を見極めることで、衣類乾燥状態と衣類の量を見極め、運転の無駄を省く衣類乾燥制御です。

  6. 室内衣類乾燥における乾燥のしやすさは温度と湿度によって左右されます。これを乾燥係数Ttとして数値化しました。この制御アルゴリズムで1分毎に乾燥係数Ttを積算した値Dxは、衣類の量に応じて変化点が発生します。これは、衣類が放出する水分量と除湿機が水にする水分量が逆転するときに生じます。

  7. この乾燥係数の積算値Dxの変化点は衣類の水分量すなわち衣類量によって発生する時間との相関があるため衣類量を推定できます。衣類量が推定できれば、それに合わせて乾燥完了までの時間想定の精度が向上し、結果的に無駄な運転を削減することができました。


  8. 図2:エコナビ制御のイメージ



  1. ■ナノイーによる除菌、脱臭効果による部屋干し臭の抑制
    商品企画段階のアンケート調査では室内衣類乾燥のニオイに関するご不満が抽出されました。当社は2010年より独自のデバイスであるナノイーを搭載、年々進化を遂げ、2018年からはOHラジカル量が当初の10倍(ナノイーX 4.8兆)となり、2022年からはさらにOHラジカル量が当初の100倍(ナノイーX 48兆)に到達しています。

  2. そして、カビ菌の抑制・除菌や空間臭の低減を実現してきました。除湿機においては、部屋干し臭の原因となる菌の除菌や、部屋干し臭の脱臭についても効果検証を行い、濡れたバスタオルに付着した菌の除菌効果や、ナノイーの進化に伴う脱臭効果の検証を実施しています。部屋干し臭を1ランク低減させるための時間は当初のナノイーに対し、ナノイーX4.8兆で1/10、今回のナノイーX48兆では更に1/4となり、従来比4倍のスピード脱臭を実現しました(図3参照)。

  3. また、ナノイー放出と除湿運転制御とを組み合わせた「ケアモード」も搭載し、衣類乾燥のみならず、お部屋やクローゼットのニオイケアとしても使い勝手の良い除湿機としています。




  1. 図3-1:ナノイー効果検証結果



  1. 図3-2:ナノイー効果検証結果


  2. 3. おわりに
    当社は、省エネと衣類乾燥ストレスフリーを実現する衣類乾燥除湿機の開発を目的とし、独自の除湿方式、独自のセンシングと制御技術、独自のデバイス技術を高めてきました。

  3. 家庭用除湿機においては、冷凍サイクルを用いた「コンプレッサー方式」、吸着材を用いた「デシカント方式」、これら2方式を融合させた「ハイブリッド方式」の3つの除湿方式が主流でした。当社では、高まる除湿機の室内衣類乾燥ニーズへの対応を念頭に、省エネ性能を向上する除湿方式の開発に取り組みました。
  4. 独自の制御技術である、衣類乾燥状態と衣類の量を見極め、運転の無駄を省く「エコナビ制御」を開発するとともに、新たな独自除湿方式として、冷凍サイクルの冷却器で室内空気を冷却、除湿し、さらに、この冷却された空気と熱交換し、別経路からの室内空気を冷却、除湿する空冷式熱交換器を搭載した「エコ・ハイブリッド方式」を開発。従来のハイブリッド方式より、消費電力を約1/3とする省エネを実現しました。

  5. 地球環境や室内環境がこれまで以上に重要視される現代社会において、当社では、これからも省エネかつストレスフリーな家事・生活環境づくりで、社会に貢献していきます。

以上

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