2025年度 省エネ大賞
省エネルギーセンター会長賞
ダイキン工業株式会社

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No.711 2026年5月

【製品・ビジネスモデル部門】

カーボンニュートラル実現に貢献する空冷モジュールチラー『ヘキサゴンGX』

写真1:授賞式の様子

写真1:授賞式の様子

1.はじめに
カーボンニュートラル実現のため、大型ビルや工場では省エネの取組が加速しています。

大型ビルや工場では、大規模な空調やプロセス用途での使用が多いため、セントラル熱源が多く採用されています。

日本の部門別二酸化炭素排出量においては、工場にあたる産業部門や、大型ビルにあたる業務部門の割合が高く、それぞれの消費電力の比率においても、空調や冷凍機に関する比率が高くなっており、セントラル熱源に関連する比率が高くなっています。

そこで、セントラル熱源市場において、市場の中心となっている空冷モジュールチラーの省エネ化がカーボンニュートラルの実現には重要と考え、受賞商品の開発に取り組みました。

図1:日本の部門別二酸化炭素排出量と製造業・オフィスビルでの消費電力比率 

2.製品の技術的な特徴

受賞商品では、空冷モジュールチラーの省エネ化のために

冷凍サイクルの改善による省エネ性向上と称呼性能に表れない実省エネ性向上

の大きく2つの観点で開発に取り組みました。

1つ目の冷凍サイクルの改善による省エネ性向上の観点では

・冷媒回路・冷媒制御変更

・新型スクロール圧縮機の開発

・マイクロチャネル熱交換器を採用

という3点の取組を行いました。

2つ目の称呼性能に表れない実省エネ性向上の観点では

・水搬送動力の低減

・待機電力の削減

という2点の取組を行いました。

(1)冷媒回路・冷媒制御変更 

高圧レシーバー回路から過冷却度が調整できる低圧レシーバー回路に冷媒回路を変更し、COPが最大となる過冷却度に調整する冷媒制御に変更することで、業界トップクラスの省エネ性を実現しました。

能力は エンタルピ差 × 冷媒循環量 であるため、エンタルピ差を拡大することで、同じ能力を発揮するための冷媒循環量を減らすことができ冷媒循環量低下は圧縮機出力低下となるため、省エネになります。

しかし、エンタルピ差を拡大するというのは、過冷却度を大きくすることであり、過冷却度を大きくすると、空気熱交換器の性能が悪化するため、過冷却度を大きくし過ぎると、圧縮機出力低下の効果を空気熱交換性能悪化の影響が上回るため省エネ性が悪化します。

圧縮機出力低下の効果を最大限に受けられる過冷却度に調整することで、業界トップクラスの省エネ性を実現しました。

図2:COPと過冷却度の関係

(2)新型スクロール圧縮機の開発

スクロール、軸受、モータ、それぞれに新しい技術を投入し高効率化、及び高信頼性を実現しました。

スクロール部では、渦巻押付力・給油量の最適化により、シール性を向上しつつ摺動損失を低減させ、効率を従来機比で4.3%向上させました。

軸受部では、ハウジングにプラグ溶接構造を採用し、軸傾きに対して熱影響を受けない構造とし、信頼性を向上させました。

モータ部では、集中巻モータを採用し、効率を1.4%向上させました。

集中巻モータは、コンパクトで高効率化できる反面、胴体とコアの間のスペース確保が難しく、潤滑油コントロールが難しい課題があります。コア形状の一部を2段とし、潤滑油を整流化させることで、圧縮機からの排出油量を低減させ、課題を解決しました。

図3:スラスト軸受小型高効率技術

図4:8極12スロット高効率モータ油上り低減技術

(3)マイクロチャネル熱交換器の採用 

冷却専用機、ヒートポンプ機それぞれに最適なマイクロチャネル熱交換器を採用し、

熱交換性能を向上させ冷媒の高低圧の差を小さくし、圧縮機の消費電力を低減しました。

マイクロチャネルの多穴管構造により、熱交換効率の向上と通風抵抗の削減で省エネ性を向上させました。冷却専用機においては、凝縮使用に特化した構造とすることで更なる軽量化、省冷媒、高伝熱性能を実現しました。

オールアルミ製の熱交換器を採用するうえでは、伝熱管の保護と熱交換器の寿命との両立が難しいという課題があります。当社では独自の技術で、電位設計を工夫し、伝熱管の保護と熱交換器の寿命との両立を実現させました。

図5:マイクロチャネル熱交換器

(4)水搬送動力の低減 

チラーは冷温水で二次側の空調機に熱を供給するため、水を搬送する動力が必要です。そのため、水搬送動力を低減することで、実省エネ性向上には大きな効果があります。本製品は、水圧損失の小さい水熱交換器を採用し、水搬送動力を従来機比で約31%低減させました。

図6:水搬送動力の低減

(5)待機電力の削減 

空調機は起動時に冷媒と油が一緒に圧縮機外へ排出されることでの油切れによる圧縮機故障防止のため、圧縮機の油ヒータが停止時に常時ONしています。そのため、油ヒータの電力を低減することで、実省エネ性向上には大きな効果があります。

しかし、油ヒータをOFFすると、冷媒が油に溶け込み、圧縮機起動時の故障のリスクが増加します。外気温度と油温度の変化の関係性から、信頼性を確保できるON/OFFの制御を確立しました。

油切れの信頼性を確保しつつ、通電時間を抑制することで市場の運転データを用いた試算で約15%程度の電力消費を抑えることを実現しました。

図7:油ヒータのON/OFF制御

3.おわりに

今後も、低GWPの冷媒に転換した商品開発、実省エネ性の高い商品開発、実省エネに貢献できるソリューション開発に取り組みカーボンニュートラル実現に貢献してまいります。