「私の海外駐在記 ~台湾~ 後編」荏原冷熱システム株式会社 勇裕章氏

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No.659 2018年9月

 海外駐在記は前号(No.658)に引き続き、荏原冷熱システム株式会社 勇氏の台湾後編をお届けいたします。



1.生活状況
 
(前回3.生活状況の続きから)
 台北のタクシーの運転手は、ほとんど英語が話せず、むしろ日本語のほうが通じる人が多いと感じました。中国語の勉強のため買い物などに出歩く時は、もっぱらタクシーを利用していました。料金は日本の半額以下、極めて安かったです。

 肝心の中国語の習得ですが、台北にいると日本語が通じるところが多く(主に日本人が集まるお店に行っていたのもありますが)、湖口にいる営業のアシスタントの女性はほとんど日本語に不自由がなく、私が訪問時に、「今天一天说中文。(今日は一日中国語で話すからよろしく)」と言うと、「わかりました。」と日本語で返事が返ってきます。これじゃあ、なかなか中国語がうまくならないな、と言い訳にしていました。

 日常の事務所間の移動は基本的に車の為、なかなか台湾新幹線に乗る機会はなかったのですが、同期入社の友人がプライベートで日本から遊びに来た時に、行きたいところを聞いてみると、一つ目はテレサテンのお墓、二つ目は台湾新幹線に乗ることをリクエストされ台湾に駐在して初めて新幹線に乗り台南に行きました。(写真1)新幹線での台南までは、約2時間30分で距離としては、東京―名古屋間といったところです。台北は亜熱帯で盆地であるため一年中湿度が高いのですが、台南は熱帯で気温は高いわりに湿度が低く過ごしやすく感じました。

写真1:台湾新幹線


 テレサテンのお墓は、台湾の最北端の海に面した山の斜面にある高級霊園で金宝山にあります。(写真2)お墓の前は庭園になっており近づくとテレサテンのメロディーが聞こえてきました。すごく見晴らしの良いところです。但し、交通手段がないので車でしか行けないところです。

写真2:テレサテンのお墓


 さて、仕事のところで、台湾の春節の話が出ましたので、NEW YEARである正月の話をします。
 台湾の会社の正月休みは、12月31日と1月1日の2日間しか休まないのが一般的なため、駐在期間中は、一度も日本に帰りませんでした。新年を祝うイベントとして、台湾で一番の高層ビルである 101(イー・リン・イー)の各フロアーから花火が放たれます。日本では考えられない花火です。(写真3)近くまで行くのには非常に混雑し、通常であれば車で20分程度のところが、2時間以上かかります。私のアパートから花火が見えるので、ベランダで仲間と見学して、その後行きつけのお店に行きます。

写真3:101タワーの花火


 日本の蒲鉾などを製造販売しているメーカの駐在員が、正月用の食品として会社より送られてきた『おせち料理』を、お店に寄付していくのです。本人たちは日本に帰るため、遠慮なくお雑煮ともども、頂くことができました。黒豆、蒲鉾など、台湾にいながら日本の『おせち料理』で新年を迎えることが出来て、有難かったです。

 そして、元日の朝には台湾人の方に誘われて有名なお寺『龍山寺』にお参りに行きました。(写真4)
 正面の本殿には、きらびやかな仏教の神様?が祭ってあり、後殿には、漢民族の伝統宗教である道教の寺院がありました。道教の寺院は、一般的に学問、商売、子宝、恋愛などに分かれて横に並んでいるため、各々にお参りします。お参りの順序が決まっていて、まずは、本殿のお参りが先です。同行してくれた台湾人の話では、仏教の寺院の裏に道教の寺院があるのは、台湾は他の国に統治されていたことが多かったため、隠しているのだと言っていたのを記憶しています。

写真4:龍山寺


 もう一つ、笑い話のような話ですが、日本と台湾には国交がなく、パスポートの更新は、日本大使館がないため台湾ではできません。
 荏原冷熱システムに異動したときに、「勇は台湾で何か悪いことをしたのか」と、尋ねられました。というのは私のパスポートの発行官庁の欄にEMBASSY OF JAPAN IN THAILANDと書いてあったためです。知らないうちに、私のパスポートが海を渡り、行ったことのないタイの日本大使館で発行されていました。言われるまで気が付かなかったお粗末なお話です。

 今でもハッキリと記憶に残っているのは、休日に台北の地下鉄に乗っていた時のことです。前の席に座っておられたご年配の女性が、きれいな日本語で「日本人の方ですか?」と話し掛けてこられて、「そうです」と答えると、「昔の日本は良かった。でも今の日本はどうなっているの」と言われてしまいました。電車の中で、15分ぐらい話していると、「台湾の教育制度も上下水道も日本人が作ってくれた。今の日本を見ていると文化も考え方も変わってしまい残念でならない」と嘆いておられました。おそらく、「今の日本人は武士道精神が希薄になっている」と言われているように感じ、日本人として考えさせられる出来事でした。

2.おわりに
 私の教訓ですが、会社の規定通り、赴任前にB型肝炎等の予防注射を接種して行ったのですが、年に1度の会社で義務づけられている海外勤務健康管理センターでの検査で、「勇さんは、どの抗体もできていませんので、屋台では食事をしないで下さい。」と言われました。皆さんも旅行での屋台の食事には気を付けてください。残念なことに抗体が出来ていないと言われて以降、夜市の屋台では、一度も食べていません。

写真5:九份にて

 台湾は本当に住みやすいところですよ。食事は美味しくて、親日で、安全な国だと思いました。個人的にも帰任後、何度か旅行で訪れています。今は、羽田から台北市内に近い松山空港の便がありますので、非常に便利です。

 最後に、一つだけ覚えておいてください。もしご旅行で行かれることがあり、茶葉などお土産を購入するときは、旅行者の値段が100とすると、現地に住んでいると70、台湾人は半額の50です。ネゴは必ず行ってください。台北に住んでいると言っても良いと思います。それだけで、安くなります。

 何はともあれ、仕事の厳しさもありましたが文化の違いを味わった楽しい3年間でした。日本の慣習にとらわれず、文化や考え方は違って当たり前(違うのが普通)という貴重な体験をしたことが、その後の会社人生にとって最も大きな収穫でした。