日本冷凍空調学会主催 「最新の冷媒問題への対応と展望 2020」報告

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No.674 2021年1月

公益社団法人 日本冷凍空調学会は「最新の冷媒問題への対応と展望 2020 」と題し、WEBセミナーを行いました。配信期間は、2020年9月14日~9月20日です。以下、概要報告いたします。


最新の冷媒問題への対応と展望 2020
日本冷凍空調学会 関東地区事業推進委員会 
WEB公開期間: 2020年9月14日~20日
主催:(公社)日本冷凍空調学会 関東地区事業推進委員会
※講演者の敬称略

1.基調講演
1.1 冷媒の低GWP化に向けた最近の取組と今後の展望
齋藤潔(早稲田大学)

今後の冷媒開発において注意すべき点は、①冷媒による地球温暖化、②冷媒の燃焼性・毒性に対する安全対策、③機器運転からのCO2排出による地球温暖化、である。①においては、2025年削減目標達成にはグリーン冷媒はじめ低GWP冷媒の普及が求められる。他にも運転・製造・廃棄時のCO2排出量をも勘案したライフサイクル温暖化影響(LCCP)評価も必要である。

またNEDOプロジェクトでは、次世代冷媒選定と機器開発・実用化推進に向けた技術基盤を構築すべく、次世代冷媒の①基本特性評価手法の確立、②安全性リスク評価手法の確立、③次世代冷媒開発が行われており、その進捗状況が説明された。


1.2 オゾン層保護法の改定と今後の展望
田村修司(経済産業省 オゾン層保護等推進室)

オゾン層保護法はフロンの製造及び輸入の規制措置を講ずるものであり、フロン排出抑制法はフロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策を規定し、2019年の廃棄時回収率向上に向けた改正を経て、2020年4月に施行された。

キガリ改正の目標達成にむけた2030年までの取組として、グリーン冷媒の使用を進めるために、安全性を確認した上で「可燃性冷媒をも使いこなす」社会に変化する必要がある。加えて技術的かつ経済的に可能な範囲で冷媒再生技術の向上等に取り組むことも必要である。


2 .微燃性冷媒に関する国際規格の動向
橋本均((一社)日本冷凍空調工業会 冷媒関連国際規格提案検討WG)

家庭用空調機の安全規格では,A2L(微燃低毒性)冷媒の要求事項の緩和を規定する
IEC60335-2-40の第6版が2018年1月に発行された。引き続き作業部会(WG16)では可燃冷媒関連要求緩和を検討し、第7版としての改定作業を進めている。この委員会では、可燃性(A2及びA3)冷媒に関する冷媒充填量制限緩和や安全対策追加の提案内容が委員会原案として発行されている。提案内容は大きく3つの内容で構成され、実漏えい量(releasable charge)基準の評価、ファン攪拌による充填量制限緩和、及び漏えい速度を新たに規定することによる充填量制約の緩和からなっている。

IEC60335-2-40の次の改定(第7版)の審議において、CDV(投票用委員会原案)の審議が5月に完了し、CDV投票が8月7日~10月30日に行われた。その結果、CDV可決となったが、800件近くのコメントが寄せられ、これらの審議が始まっている。この審議完了後、FDIS(最終規格案)投票が行われ、現状では2021年末規格発行の予定で進められている。IEC60335-2-40の改定内容はISOへ提案されISO5149の改定が計画されている。


3 .自然冷媒を使用した内蔵ショーケースのリスクアセスメント
坂本 圭久((一社)日本冷凍空調工業会 内蔵ショーケースリスクアセスメントWG3)

フロン排出抑制法において、今後内蔵ショーケースの指定製品化が予測される。
日本冷凍空調工業会では、R290等のA3冷媒を使用した内蔵ショーケースのリスクアセスメントを検討、輸送・保管・設置・使用・修理・廃棄等、各段階でのリスクの抽出と分析評価を行い、対応策を検討した。その結果、内蔵型冷凍冷蔵機器への要求事項を規定したJRA規格(JRA4078)及び漏洩や施工等の対策について規定したJRAガイドライン(JRA GL-21)を作成した。


4.次世代冷媒・機器開発の状況
4.1 R463A-J 冷媒を使用した冷凍機の開発
有井悠介(三菱電機株式会社)

R463A-JはGWP=1483のA1冷媒で、既存のR410A(GWP=2090、A1)と比べ、GWP値も低く、特性も近い。今回開発した機種は、オールアルミ扁平管熱交換器を採用、過冷却度を確保するため、プレート熱交換器を採用した。また冷媒不足、封入アシストの導入により冷媒漏洩量の削減や適切な冷媒封入を実現した。


4.2 低GWP冷媒(R454C)を用いた空気熱源循環加湿ヒートポンプの開発
岡田有二(三菱重工サーマルシステムズ株式会社)

当製品は、生産プロセスにおいて、空気熱源により温水を発生するヒートポンプ製品で、従来の冷媒R407C(GWP=1620)よりGWPが146と低い、R454Cを採用した。R454Cは、①出湯温度75℃、②マイナス20℃外気からの吸熱可能、③温度勾配が小さい等の条件を満たしている。高温出湯の実現のために二段階サイクルとし、冷凍サイクル最適化設計により、循環加温ヒートポンプとして、高いエネルギー効率COP=3.3を達成した。


4.3 ビル用マルチのA2L化の動向及び安全基準に適合した設計施工について
山口琢也(ダイキン工業株式会社)

ビル用マルチエアコンでは、現在の冷媒R410Aから低GWP冷媒への転換が必要となっている。日本冷凍空調工業会では、ビル用マルチエアコンにR32等の低GWP冷媒を採用する際、安全確保のために設計・施工の業界基準(JRA GL-20,2016)が作成された。当製品はマイクロチャネル熱交換器を使用することで、冷媒量の削減と熱交換率向上を果たした。また冷媒漏洩時の安全確保のための施設ガイドライン(JRA GL-16)に基づき、設計・施工時の制約、注意事項が実例に基づいて示された。


以上
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