鮮度の秘密発見!!首都圏巨大コールドチェーンを支える物流倉庫

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No.654 2017年12月

 横浜ロジスティクス株式会社様「横浜フレッシュセンター」は、横浜市南部にある横浜南部市場内という好立地に位置しています。(写真1、2)2006年に建設されたセンターは、青果物を中心とした生鮮食品流通の拠点となる施設で、3フロアーある倉庫には、温度帯別・食品別・産地別・ユーザー別に管理された様々な生鮮食料品が保管され、スーパーマーケットをはじめとするフードチェーン・量販店などからの24時間・365日配送というタイムリーな要望にお応えする物流サービスを150名を超える社員の方々で手掛けられています。鉄骨造地上5階建の一期施設は、敷地面積 7,078m2、延床面積9,363m2、入出庫ドックシェルター 7基、自動倉庫 784m2と広大で、その倉庫における多温度帯管理(冷凍・冷蔵・常温)用に、2017年1月、冷凍・冷蔵システム(ユニットクーラー・冷凍機)をリニューアル導入いただきました。今回はこれらを見学させていただきました。当日は絶好の晴天、広報委員会のメンバーには晴れ男・晴れ女がいることを実感しつつ、最寄り駅に到着しました。

写真1:横浜ロジスティクス 横浜フレッシュセンター外観

写真2:横浜南部市場

 市場の門を抜け、驚いたのはその敷地の大きさです。建物は見えているのに、歩いても歩いても一向に近づけない感覚。千葉県在住の身としては、横浜南に位置する市場はあまり馴染みがなかったのですが、2015年に中央卸売市場から民営化された横浜南部市場は、日本全国、品物によっては海外からも運ばれてくる食料品を神奈川県南部だけでなく、栃木県を除く関東圏内の外食チェーン・レストラン・ドラッグストア等へも配送し、人々の胃袋を充たす役割を担っています。その需要を満たすための必要な規模というかサイズ感を、少し歩いただけで実感したのでした。
 しばらく歩いたのち、ようやく「横浜フレッシュセンター」に到着。3階事務所にご案内いただき、ご担当者様のお話をお聞きしました。ご担当者様のお話では、「2020年のR22冷媒生産全廃対応」、「省エネへの取組」、「冷凍・冷蔵システムの老朽化」等の課題を抱え、当初は2020年に設備更新(冷凍・冷蔵システム)を計画されていたところ、「2016年度エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」制度を知り、書類申請にて当年度の適用対象となり、急遽、前倒しでの設備更新を実施されたということでした。現在、我々が口にしている食品(特に生鮮食料品)は、農家の方が近所のスーパーマーケットに持ち込むケースは多くはありません。毎日、美味しい物が食べられるのは、全国くまなく張り巡らされた物流網により、その季節の旬の食料品を全国どこでも味わえるよう、コールドチェーンに携わる方々の努力に支えられているからです。施設を見学させていただき、それを実感しました。

☆1階自動倉庫(一期施設)☆
 センターから出荷される生鮮食料品は、こちらにある荷捌きスペースからトラックに載せられ、外食チェーン、スーパーマーケット、ドラッグストア等の顧客に運ばれます。常時200台のトラックが配送に携わっているとのことでした。この荷捌きスペースには、ユニットクーラーが設置されていました。(写真3)7基あるドックシェルターには、極力、外気と室内の空気が接触することを避けるため、トラックの荷台が密着し、ユニットクーラーの冷気がエアカーテンの役割を果たしていました。室内の温度は常時5℃に保たれ、わずかでも生鮮食料品の鮮度を損なうことがないよう、温度管理が徹底されていることがわかります。ただし、5℃という室温は、生鮮食料品にはよくても、そこで働く方々のご苦労には頭の下がる思いでした。休日に、妻のお供でスーパーマーケットに行っても、真っ先に目に入るのはビール売場だった自分としては、反省・恐縮することしきりです。

写真3:冷蔵用ユニットクーラー

写真4:氷で包まれ保存されていたブロッコリー

 こちらで印象的だったのは、ブロッコリーの保管。5℃の室温のままに梱包されたものと、梱包(発泡スチロール)の中に氷を入れられたものとがあり、その温度差で出荷のタイミングを調整しているとのこと。(写真4)旬の野菜を食べられるよう消費者の見えないところでの努力・工夫。これからは、(特に)ブロッコリーを食べるときは、お礼を言ってから食べたいと思います。余談ですが、我が家の娘は小さい時からブロッコリーが大好きで、学校の昼食がお弁当になった今では毎日のように持っていきます。その娘に大好きなブロッコリーのうんちくを語ることができ、父親のカブが上がります。ありがとうございました。それから、旬の松茸の香りも楽しみたかったのですが、こちらは見当たらず、残念でした。

写真5:2℃に保たれているキャベツの芯を見学する各委員

☆1階自動倉庫(二期施設)☆:ユニットクーラー(室温5℃)
 こちらにも沢山の生鮮食料品が出荷を待っていましたが、印象的だったのは荷捌きスペースが某スーパーマーケットの店舗ごとに分けられていたことでした。(写真6)迅速に、間違いなく出荷されるよう配慮されたゾーン分け。多品種多頻度配送サービス。その恩恵にあずかる我々消費者のわがままに応えていただき深謝の極みです。

写真6:荷捌きスペース

☆2階自動倉庫☆:ユニットクーラー(室温5℃)
 こちらは主に生鮮食料品以外の、タケノコの水煮や調理油といった食料品が保管されるゾーンです。ひとことで生鮮食料品といっても様々で、例えばスイカは硬い状態で入ってきて、食べごろを見計らって出荷されるそうです。バナナもしかり。真緑の状態で運ばれてきたバナナは黄色く美味しく熟成されてから運ばれていきます。一方で、葉物野菜は中二日程度で出ていくそうです。このような管理も、昼と夜の温度を変えることで可能となる。果物・野菜は生き物ですから、ご担当者様の目利きが活きてくるんですね。冷蔵庫にリンゴを保管するとき、裸のまま他の野菜とは一緒にしないほうがいいとも教えていただきました。リンゴはエチレンガスを出すので、傷みが早く進むとのこと。保管するときは、新聞紙にくるみ、ビニールに入れるのがいいということでした。熟成を進めたいものがあれば、逆にリンゴと同居させればいいとは、逆転の発想。目から鱗が落ちる思いでした。

写真7:旬を迎えたみかん

写真8:伏見稲荷を思わせる荷台

☆2階管理エリアおよび1階屋根上☆:パッケージエアコンおよび冷凍機
 温度を一括で集中管理する中央管理室を見せていただきました。複数のモニター操作画面では、設定温度や現在温度、警報温度、運転の有無が一元管理され、監視カメラの映像と併せて、何か問題があってもすぐに対処できる体制をとられていました。(写真9)節電を管理するデマンドコントローラーもこちらにあり、24時間365日で管理する要の設備を拝見しました。電力使用量20%削減という高い目標を実現している一助となっていることに、それに携わる業界の一員として誇りに感じました。

写真9:モニター操作画面

 1階の屋根上には、多数の室外機と冷凍機がそのスペースを活用し、設置されています。(写真10)使用冷媒をR22からR410Aに変更し、フロン問題についての課題を解消しただけでなく、様々な省エネ技術を詰め込んだ冷凍機(トップランナー機)は、本体のコンパクト化(設置スペースが従来の半分程度)で、重量軽減化による、建物構造への負担軽減にも貢献できたのではないかと感じました。

写真10:設置面積が大幅に減少している冷凍機

☆3階自動倉庫☆:パッケージエアコン・ユニットクーラー(写真11、12)
 こちらは、常温(20℃)と冷凍(-25℃)の倉庫があります。冷凍倉庫はご担当者様いわく「天国に近いところ」とおっしゃるとおり、体験したことのない寒さでした。防寒用のコートを着ていたにも関わらず、委員全員が初夏のプールに入る小学生の如く、「ひゃーひゃー」言っているのを他人事のように聞きながら、天国を味わいました。
 あまりにも寒くて、ついうっかり何が保管されているのか聞くのを忘れてしまったのですが、アイスクリームや肉魚類、冷凍食品などを保管して(いるはず)います。なぜいま自分がここにいるのか、忘れるくらい楽しい天国の体験でした。

写真11:冷凍用ユニットクーラー

写真12:ユニットクーラー制御盤

 一方で、常温倉庫で印象に残ったのは、まさに旬を迎えている柿でした。(写真13)実は、わたしの実家には柿の木があり、毎年、収穫に駆り出されます。その自家製のものとは明らかに違う外観。本当に美味しそう。形(四角い!)・色・サイズが見事で、まさに「The 柿」が目の前にありました。和歌山産の種無し柿が柿界の王様ということも教えていただきました。ブロッコリーに次いで柿も大好きな娘のため、店頭で巡り合えたらぜひ我が家の食卓でも味あわせていただきたいと感じました。

写真13:まさに旬を迎えている柿!

写真14:パクチーの香りに包まれます

☆所感☆
 見学の時期が秋ということもあり、沢山の旬な食材を拝見できました。今回の見学で、その青果物の高い鮮度を維持するため、卸売市場に隣接した立地という環境に加え、首都圏の膨大な食品需要を賄うため、冷蔵・冷凍技術が大きく貢献できていることを実感しました。今後も工業会の活動を通じて、その一助となれればと思いました。ありがとうございました。

以上
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