海外短信

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No.686 2022年9月

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1.ダイキン 英国のスタートアップ企業ダブリューラボ社に投資

空気質の向上で新たなビジネスを創出
ダイキンは英国ロンドンのスタートアップ企業であるダブリューラボ(Wlab)社に投資した。Wlabはブランド名Sensio Airとしても知られており、空気中のアレルゲンを検知し、タイプ別に特定するセンサーを供給する企業である。ユーザー向けアプリケーションをもとにAIとIoT技術を用いてリアルタイムでアレルゲンをモニターする。ダイキンは室内空気質(IAQ)と空気環境における安全性と信頼性を実現する。この空調ソリューション事業を創出するため2018年からWlabと協業している。

新型コロナウイルスの感染拡大以来、多くの時間を室内で過ごすようになり、IAQの認知度も高まってきている。空気質のモニタリングと向上がますます重要になってきている。ダイキンはWlabの技術を梃に自社の空調製品を用いて、アレルゲンの24時間モニタリングを行い、空気の価値をより一層高める。

ダイキンはテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)に2024年までの5年間で110億円の投資枠を与えている。これまで10社以上に約30億円投資している。今後もいろいろな用途で海外の新たなパートナーと強い関係を構築し、オープンイノベーション計画を加速する。

〔JARN June 25, 2022〕


2.パナソニック 英国のシュナイダーエレクトリックとATW個別空調で協業

消費者のヒートポンプに対する需要の高まりを受けて、パナソニックは英国のシュナイダーエレクトリックのドレイトンとワイザー個別室内対応暖房コントロールシステムを使うために協業する。パナソニックはアクエリア暖房・給湯(ATW)ヒートポンプ及びアクエリアスマートクラウドとサービスクラウドアプリケーションを提供する。ドレイトンのワイザーシステムはエネルギーコントロールとホームオートメーションを行う。この協業により双方のシステムをシームレスに組み合わせることができる。

この新しいパートナーシップは、パナソニックの据付工事店が、ワイザーシステムをアクエリアシステムと結合することによって、個別室内暖房コントロールを顧客に提供することを可能としている。スマートコントロールの組合せは、二つの異なった機器を一つのアプリケーションで制御することによりエネルギー効率を高めている。これにより電気料金を低減し、炭素の排出を削減している。



パナソニックとシュナイダーエレクトリックは協業してATW個別空調を提供

〔JARN July 25, 2022〕



3.三菱電機 トルコの空調機生産拠点を増強
三菱電機は2022年5月27日、トルコの空調機生産拠点である三菱電機エア・コンディショニング・システムズ・マニュファクチャリング・トルコ(MACT)株式会社の新工場に14億4,000万トルコリラ(約109億円)の投資を行うと発表した。拡張工事はMACTのATWヒートポンプの年間生産能力を現行から10万台増強して30万台とする。またRACを現行から30万台増強して110万台とする。生産は2024年2月開始の予定。

三菱電機は2025年までの拡張戦略の下に世界での事業を拡大している。特に欧州での暖房市場に焦点を当てている。従来の化石燃料によるボイラタイプの暖房機は、欧州の脱炭素化方針に沿って、急速にATWヒートポンプに置き換わっている。欧州の脱炭素化方針は、トルコや欧州全体にATWヒートポンプを急速に普及させている。進行する気候変動はRACの需要を増加させている。RACは消費者からぜいたく品ではなく普及品とみられるようになってきている。

工場におけるCO2の排出削減としては、断熱材の増強、排気ガスからの熱回収、及び再生可能エネルギーの効果的な使用などがある。

三菱電機エア・コンディショニング・システムズ・

マニュファクチャリング・トルコ(MACT)

〔JARN June 25, 2022〕



4.富士通ゼネラル オーストラリアで5年連続して‘信頼されるブランド最優秀賞’を受賞
富士通ゼネラルグループのオーストラリアの販売子会社である富士通ゼネラル・オーストラリアは、空調機の分野で‘信頼されるブランド・オーストラリア2022最優秀賞’に空調機の分野で選定された。5年連続しての受賞。

富士通ゼネラルグループはサステナブル経営を推進しており、顧客本位の高品質な製品とサービスを提供している。社会への貢献はサステナブル経営の優先事項。グループは受賞が5年連続していることは、グループがオーストラリアの中で正直で誠実なサービスを長年にわたり実践してきた結果としている。グループは引き続き安全で品質の高い製品とサービスを提供することにより顧客の信頼を得られるように努めていく。

〔JARN July 25, 2022〕



5.ホシザキ 台湾雲林県に営業所を開設
ホシザキの東アジアにおける販売会社であるホシザキ台湾は2022年4月、台湾の雲林県に5番目の営業所を開設した。台湾の中部及び西部での事業を拡大する。

雲林県は台湾の中西部に位置し、南投や嘉義の都市がある地域。これまで既存の営業所でカバーしきれなかった地域となっている。人口は約140万人であり、将来この地域は発展が見込まれている。

ホシザキ台湾は2010年に設立され、製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機、ディスペンサーなど幅広い製品ラインアップを持っている。厨房のレイアウト設計から設置、メンテナンスまで一貫した厨房ソリューションを提供している。経済がさらに発展すると見込まれる雲林県に営業所を開設することで、ホシザキ台湾は現行の卸売り販売だけでなく、直販営業をも実施することで、厨房プロジェクトを遂行し、顧客ニーズの多様化に対応していく。

〔JARN June 25, 2022〕



6.米国ワシントン州 ビル規則を改正 新設の業務用ビルでヒートポンプの設置を義務付け
米国ワシントン州のビルディング・コード・カウンシルは投票の結果、州の業務用ビルのエネルギー規則を改正することを決めた。2023年7月1日から施行。

新しい規則では、4階建て以上のほとんどの新設の業務用ビルと集合住宅用ビルで、空調及び給湯に電動ヒートポンプの設置が義務付けられている。天然ガスを使用した従来の燃焼ボイラを含めて、化石燃料を使用した多くの暖房、換気、及び空調システムは、新しい業務用ビルでは禁止となる。電気の床置形ヒータ、壁掛形ヒータ、輻射暖房装置、及び電気温風機などはもはや許可されることはない。いくつかの例外が州の寒冷地における補助暖房として認められるのみとなっている。

また新しい業務用及び規模の大きな住宅用ビルでの給湯システムは給湯容量の少なくとも50%はヒートポンプを使わなくてはならない。

ワシントン州ビルディング・コード・カウンシルは住宅用ビルのエネルギー規則で化石燃料の使用を制限する提案を前に進めることを可決した。これらの提案では住宅用ビルでヒートポンプの使用を義務付けている。今後数か月の内に採決が行われる見込みとなっている。

〔JARN June 25, 2022〕



7.スペイン、ポルトガル、及びフランスに熱波襲来 電力不足によりエアコンの使用を制限 
ガーディアンは、焦がすような熱波が6月中旬、スペイン、ポルトガル、及びフランスを襲ったと報じている。例年より早く気温が上昇し、フランスでは記録上最も暑い5月となった。スペインでも少なくともこの100年で最高の気温となった。猛暑は高齢者などには大きな負担となり、空調用電力の需要を押し上げている。フランス気象局は最も早い猛暑の到来で、冬から春にかけての異常乾燥により干ばつが更に悪化し、山火事の発生するリスクが高まっていると警告している。

空調機やファンの使用が増加したことにより、フランスは電力を隣国から輸入する事態となっている。フランスの原子力発電の多くは腐食のリスク評価などのため点検中であり稼働を停止している。厳しい熱は河川の水位を低下させており、発電所によっては出力を制限している。原子力発電の冷却水温度が高いため、水路にそのまま戻すと生態系を破壊する恐れがある。スペイン、イタリア、その他の国々ではエネルギーを節約するために、最近はエアコンの使用を制限している。フランスでも同様の動きがでている。

〔JARN July 25, 2022〕



8.スペイン 公務員にはエアコンの使用を制限
スペインの公務員はこの夏、事務所での高い室温に慣れなければならないことになりそうだ。スペイン政府は、電気料金を大幅に削減し、また欧州のロシア産石油・ガスへの依存を減らす方針に協力して、エネルギーの節約を図っている。

エネルギー節約計画は5月にスペイン内閣で承認され、これには公共事務所での室温管理及び公共ビル屋上でのソーラーパネルの大規模設置が含まれている。さらに計画は職員に対して在宅勤務の拡大を奨励している。

計画の草案では、夏季においては、事務所のエアコン設定温度は27℃以下にしてはならず、冬季には暖房温度は19℃以上にしてはいけないことになっていた。

計画には、公共建築物のエネルギー効率の向上を目的とする欧州新型コロナウイルスリカバリー基金から10億ユーロ(約1,360億円)が拠出される。

〔JARN July 25, 2022〕



9.オーストリア ガスボイラの販売を2023年で禁止

オーストリアは再生可能エネルギー暖房法を改正する。これによりロシアに対する大きなエネルギー依存を減少する。ガスボイラを段階的に廃止し、さらに故障している石油や石炭暖房機をグリーンな機器へと交換する。

オーストリアの100万戸の家庭はガスで暖房している。これはオーストリアのガス消費の1/4を占めている。欧州で最もロシアのガスに頼っている国のひとつであり、ガスの80%以上はロシアから輸入されている。

6月13日の記者発表でオーストリアの気候行動担当大臣であるレオノーレ・ゲスラー氏は「我々が廃棄するガスヒーターのひとつひとつすべてがロシア産ガスから脱却するステップだ」
と述べている。

新たなガスボイラの販売は2023年をもって禁止となる。これはこれまで定められていた2025年を繰り上げたものである。石油と石炭による暖房システムの販売は2020年をもって既に禁止されている。現在政府は再生可能エネルギー暖房法の改正によりこれら石油・石炭のシステムの修理も禁止しようとしている。                                    

〔JARN July 25, 2022〕



10.スペイン F-ガスに新たな課税
スペインでは、フロンガスに新たな税を課すという提案に産業界は衝撃を受けている。現在の課税基準は漏えいしたガスのみを対象としたものであるが、これを市場で新たに販売されるすべてのF-ガスに拡大しようというもの。2022年9月1日の施行とされている。

17団体が反対の意見書に署名している。論点の主要なものは、環境保護で認められている“汚染者負担の原則”に反していること、スペイン企業の競争力が失われること、ヒートポンプのような技術に焦点を当てた脱炭素化方針やグリーンウェーブと整合が取れていないこと、及びEUの中での税のレベルと調和がとれていないことなどとなっている。

暖房・換気・空調産業界にとっては先が見通せない状況となっている。これまでのヒートポンプや高効率機器の普及を促進すること、ロシア産化石燃料への依存を急速に減らすこと、及びグリーン社会への移行を早めることなどの方針に新税は反している。スペインと欧州の相互影響により脱炭素化の成功が危ぶまれている。

意見書に署名した団体に属する企業の数は34,000社以上であり、従業員数は462,000人に及んでいる。またこれら企業の総売上高は1,260億ユーロ(約17兆2,000億円)の規模となっている。

〔JARN, June 25, 2022〕


11.中国 
中国工業情報化部は2022年4月24日、2022年第10号通知を公布し、この中でATWヒートポンプについての2つの標準JB/T14077-2022及びJB/T14070-2022を発表した。これらは美的集団、合肥一般機械・電気製品検査協会、及び清華大学が原案を作成したもので、2022年10月1日の施行とされている。

これら2つの標準はATWヒートポンプ産業において初めての権威あるものとなっている。

2つの標準は製品の発展段階をすべての面から客観的、体系的に要約している。新製品と新技術の開発トレンドを反映し、国の方針と市場の需要に取り組むために製品技術についての要求事項を明確にしている。さらに産業の発展と市場での競争を規制するために参考とすべき事項と根拠を提供している。また健全で温和な開発をするように産業界を指導している。またクリーンエネルギーによるATWヒートポンプを促進し、産業界の省エネルギーと排出削減に貢献している。

〔JARN, June 25, 2022〕



12.インド エネルギーレーティングテーブルを改正
効率評価を厳しくしたことによりコストが上昇し、価格もアップの見込み                            インドでは2022年7月1日にエネルギーレーティングテーブルが改正された。レーティングを1段階厳しくしたもので、既存の製品は以前よりも1段階評価が下がることになる。従ってこの夏購入した5スターのエアコンは今回の改正で4スターへと評価が下げられる。より高いエネルギー効率が5スターとなる。産業界では今回の改正で製造コストが上がるためにエアコンの価格は7%から10%上がるものと見られている。


インドのエアコンのエネルギーレーティングテーブル

出典:BEE

 
これまでの在庫を一掃するために7月1日から6か月間の猶予期間が与えられている。しかし新たに生産された製品は新しいエネルギーレーティングテーブルの区分に従わなくてはならない。エアコンのエネルギーレーティング基準は当初2022年1月から改正されることになっていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により過去2年間に在庫が積みあがっていたため、製造業者がエネルギー効率局(BEE)に施行を6か月間遅らせるように要望していたものである。次のレーティング基準の改正は2025年に予定されている。

ロイドの販売責任者であるラジェッシュ・ラティ氏は「エネルギー基準のアップグレードは原材料のコストを1台当たり2,000インドルピー(約3,400円)から2,500インドルピー(約4,300円)押し上げる。これにより価格も上がるが、消費者はより高効率の製品を手にすることになる。新しい基準はインドのエネルギー効率を世界でトップクラスにする」と述べている。

〔JARN, July 25, 2022〕



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