海外短信

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No.689 2023年3月

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1.ダイキン メキシコに新工場を建設 北米での生産力を強化
ダイキン・コンフォート・テクノロジーズ・ノース・アメリカ(DNA、以前のグッドマン)は2022年6月28日、メキシコのサン・ルイス・ポトシに7万平方メートルの工場を建設すると発表した。ダイキン・アプライド・アメリカ(DAA)の子会社であるダイキン・マニュファクチャリング・メキシコ(DMMX)に隣接して建てられる。新工場は2024年4月にフル操業を計画しており、推定投資額は2億3千万ドル(約300億円)。

新工場では住宅用インバータエアコンとミニスプリットが生産される。これらの製品は現在タイやインドなどから輸入されているもの。2026年に年間150万台の生産を目指している。生産台数のほとんどは北米向けであるが、将来生産数量を増やしてラテンアメリカにもメキシコ工場から供給し、現地調達も進める。メキシコに生産拠点を設立することにより、アジアからの輸入と比較して、北米市場への供給リードタイムは3か月から2週間へと6分の1に短縮できる。この結果サプライチェーンが崩壊した場合でも部品の調達が可能であり、生産におけるコスト競争力を強化することができる。

〔JARN October 25, 2022〕



2.三菱電機トレーン 米国メイン州にトレーニングセンターを開設 

三菱電機トレーンHVAC米国(METUS)は2022年11月18日、冷凍空調機器の代理店であるベルサイモンズ社が、米国メイン州ウォータビルに三菱電機のトレーニングセンターを新たに開設したと発表した。ベルサイモンズ社は1940年に設立され、ニューイングランド全域の30か所以上に従業員を配置している。このようなトレーニングセンターを運営するのはベルサイモンズ社として初めての試みとなる。

トレーニングセンターの設備により、メイン州の設備業者は三菱電機のヒートポンプ機器の据付とサービスの実地訓練を受けることができる。訓練は2023年夏から開始され、毎月実施される。トレーニングセンターは1,400平方フィート(130㎡)の面積であり、ここに訓練で使用される機器が設置されている。

METUSの北東部事業部住宅事業の取締役であるブライノン・ウイリアムズ氏は「トレーニングはオンラインに移行する傾向にあるが、METUSは技術習得には実地訓練に勝るものはないと信じている。このトレーニングセンターにより設備業者は彼らの顧客に対して優れたサービスとサポートを提供することができる」と述べている。

〔JARN December 25, 2022〕



3.パナソニック マレーシアにトレーニング施設をオープン
パナソニックのアジア・エンジニアリング・センター(AEC)は2022年9月15日、マレーシアのセランゴールに“見て、聞いて、触って”というコンセプトからなる新しいトレーニング施設を開設した。AECはパナソニック・アプライアンス空調マレーシア(PAPAMY)の傘下として2021年4月に設立されたもので、パナソニックのアジア・オセアニア地域での空調事業における技術能力の向上を目的としている。

プロジェクトの第一段階ではパッケージエアコン、VRFシステム、全熱交換器、ビル管理システムなどを学ぶ。マレーシアでのトライアルの後、10月からトレーニング施設はオンラインとオフラインの双方で、アジア及びオセアニアの他の国々にも実際の製品を使用してのトレーニング・セッションを徐々に拡大していく。

2023年4月からはプロジェクトの第二段階として、トレーニング製品にエアハンドリングユニット、ビルマネージメントシステム(BEMS)及び圧力-エンタルピー(P-H)線図モニタリングシステムを追加する。これによりエネルギーマネージメントとP-H線図のモニタリングによる機器の予防保全を行うことにしている。

〔JARN October 25, 2022〕



4.三菱重工サーマルシステムズ オーストラリアでベストブランド賞を2年連続して受賞
三菱重工空調オーストラリア(MHIAA)は、Choice2022最優秀ブランド賞を5年連続して受賞した。MHIAAは連続して受賞した唯一のエアコンブランドとなっている。Choiceは最大の消費者団体であり、毎年広く製品評価を行っている。エアコン部門の評価は、顧客満足度とChoiceメンバーから提出された信頼性の情報、及び4年間のセパレートエアコンのレビューを基にしている。

2022年の評価において、MHIAAは他のエアコンブランドよりも性能が優れており、74%の総合ベストブランドスコアとなり、2022ベストブランド賞を獲得した。信頼度では90%、顧客満足度では94%のスコアとなっている。

MHIAAの伊藤雄司社長は「我々は空調の専門家として高品質で信頼性の高い製品をオーストラリアの市場に届けることを約束している。Choiceから5年連続してこの権威ある賞を受賞できたことは我々の製品を顧客が認めてくれたことの証だ」と述べている。

〔JARN October 25, 2022〕



5.アルケマ R1233zdを世界に供給するために中国と米国に生産拠点を設ける
これまでにアルケマはフッ素化学品R1233zdの供給計画を発表していた。これに沿って、アルケマは2022年10月6日、中国のパートナーであるAofan(山東澳帆新材料有限会社)の生産設備の工事を順調に開始したと発表した。これに加えて、アルケマは米国ケンタッキー州のカルバートシティーの工場でもR1233zdの生産設備の建設に着手した。この2つの生産拠点により今後18か月後には世界中にForane1233zdの供給が可能となる。

アルケマはAofanからのR1233zdの製品供給を受けて販売数量の増加を図る。2022年の初め、アルケマはR1233zdの北米市場での販売を発表していた。

「アルケマはAofanとこれまでに3年以上の提携関係にある。市場の成長を図るためにForane1233zdを生産すべき時が来た」とフッ素化学品事業グローバルグループの社長であるクリストフ・ヴィラン氏は述べている。

アルケマはカルバートシティ工場で新規ラインの建設を始めた。投資金額は6千万ドル(約80億円)で2023年末か2024年の初めには完工の予定となっている。

〔JARN October 25, 2022〕



6.英国政府 ヒートポンプの普及促進計画を策定
英国政府はネット・ゼロ・イノベーション・ポートフォリオ(予算10億ポンド(約1,310億円))の一環としてヒートポンプ普及促進計画を立ち上げた。ヒートポンプの革新的な普及を支援する。ヒートポンプが住宅における脱炭素化の鍵であり、英国が2050年までにネット・ゼロを達成する要となっている。

計画は3つのフローで構成されている。フロー1ではヒートポンプを高密度に普及させるための方策を探るもので、11プロジェクトに対して予算200万ポンド(約2億6200万円)が与えられている。フロー2では住宅にヒートポンプを設置する際に障害になる事柄を除去するためのツールと技術を開発する。24のプロジェクトに対して1,500万ポンド(約20億円)の予算が与えられている。2025年2月26日までに完成する。フロー3ではヒートポンプ普及促進計画全体で得た知識や経験を広めるもので、フロー1とフロー2をもサポートする。英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省はフロー3の契約をカーボン・トラストと締結した。予算は500万ポンド(約7億円)となっている。

〔JARN October 25, 2022〕



7.イタリア 2021年ヒートポンプチラー市場 記録的な伸びを達成 
イタリアのヒートポンプチラー市場は空気熱源ヒートポンプチラー(ATW)と水熱源ヒートポンプチラー(WTW)で構成されているが、2021年台数ベースで前年比113%、金額ベースでは前年比85%という記録的な伸びを達成した。

ATWヒートポンプ
2021年、イタリアのATWヒートポンプの販売は93,000台、前年比115%の伸びとなり、金額ベースでは3億9,700万ユーロ(約570億円)、前年比87%の伸びとなった。容量別には、17kW以下の小型機が82,696台、金額ベースでは2億8,110万ユーロ(約400億円)と市場の大部分を占めており、前年比もそれぞれ134%、143%とすべての容量区分の中で最も高い伸びとなった。小型機の伸びが大きかったのは政府のインセンティブによるところが大きい。 

WTWヒートポンプ
2021年、WTWヒートポンプの販売台数は943台、前年比19%の伸び、金額ベースでは710万ユーロ(約10億円)で前年比21%の伸びであった。容量別では17kW以下の小型機が511台、前年比16%の伸びであった。101から200kWの台数は90台であったが、伸び率は64%とWTWでは最も大きかった。

〔JARN December 25, 2022〕



8.米国 連邦議会上院 キガリ改正を批准
2022年9月21日、米国連邦議会上院がモントリオール議定書キガリ改正を批准するための投票を行った。2016年のキガリ改正の交渉では中心的な役割を担っていた米国であるが、まだ批准していなかった。これまで中国、インド、及びEUなど137の国と地域が批准し、2019年に発効していた。

米国は批准しなくても2021年の米国革新製造法(AIM法)により国内でのHFCの段階的削減は実施されている。AIM法は2021年米国環境保護庁(EPA)に今後15年間でHFCの生産と消費を段階的に85%削減する権限を与えており、これはキガリ改正と同じスケジュールになっている。

米国ではキガリ改正は環境保護団体だけでなく、冷凍空調工業会(AHRI)、米国製造業者協会(NAM)、及び商工会議所など産業やビジネスグループからも支持されている。

米国では憲法の規定により国際条約の批准は上院の2/3の賛成、すなわち上院の定員100人中67人以上の賛成が必要となる。採決の結果、キガリ改正は賛成69人、反対27人で可決された。

〔JARN October 25, 2022〕



9.米国ワシントン州 新築住宅ではヒートポンプの設置を義務付け
米国ワシントン州の建築物規制会議は2022年11月4日、州内の新築住宅とアパートはヒートポンプを設置しなければならないという規則を可決した。2023年7月から施行される。これは4月に同会議が可決した州内に設置される新築の業務用及び産業用ビルにはヒートポンプを設置することという規則を追随した措置となっている。規則ではガスヒートポンプも認可されているが、市場ではあまり普及していない。従ってほとんどの場合電動ヒートポンプが住宅暖房の唯一の手段となっている。補助熱源としてのガスは認められている。

同議会は現在3年ごとにエネルギー効率を改善するという州法に基づいて活動している。2021年に承認された州法ではまた州は温室効果ガスの排出を1990年レベルと比較して、2030年までに45%、2050年までに95%削減することを定めている。同州のジェイ・インスリー知事は2019年5月の施政方針で「1990年から州全体の排出は10%増加しているが、建築物からの排出は50%増加しており、これは他のどの分野よりも大きい」と述べている。法制化された排出削減では今後10年間で建築物のエネルギー効率を70%向上することを求めている。

〔JARN December 25, 2022〕



10.中国 欧州の需要によりヒートポンプの生産が活況に

欧州ではエネルギー価格の上昇により、2021年の後半からヒートポンプに対する需要が急増した。中国税関の統計によると、欧州におけるヒートポンプの需要の高まりにより、中国から欧州へのヒートポンプの輸出額が36億2,000万元(約724億円)と前年比63.2%の増加となった。ヒートポンプ暖房給湯機(ATW)の欧州への輸出は2021年106万1千台であり、中国から輸出するATWヒートポンプの78.1%を占めた。中国の製造業者は組織的に進出を果たした。

技術の面でみると、これまでの空調と給湯器の製造業者は時間をかけて彼らの技術を培ってきた。これにより複雑な複合システムや三重供給システムにもうまく対応することができた。また他の住宅機器と組み合わせることにより住宅全体の優れた暖房システムを顧客に提供することができた。
販売チャネルについては、すべての中国の家電ブランドは国内及び海外で企業向け
(B2B)及び一般消費者向け(B2C)に多くのチャネルを持っており、ヒートポンプの据付やアフターサービスの経験を積んでいる。従ってヒートポンプの長期保証を行うことができる。

〔JARN, October 25, 2022〕


11.中国 データセンター向け空調機の需要が大きく拡大の見込み
クラウド・コンピューティング、ビッグデータ、AI、及びIoTの発展がデータセンター用空調機の使用を拡大してきており、この用途は大きな市場となる可能性を示している。2017年から2021年にかけて、中国のこれまでのインターネット・データセンター(IDC)ビジネスの市場規模は600億元(約1兆2,000億円)から1,200億元(約2兆4,000億円)に平均年率19%の伸び率で成長した。最新の統計によると、2022年9月の時点で、400か所以上のデータセンターが建設中であり、約200か所のデータセンターの建設が計画されている。データセンター向け空調システムはこれまでにない市場機会をつかもうとしている。

データセンター用の空調方式としては空冷チラーが主流になっているが、水冷チラーも伸びてきている。グリーンで省エネであり、高密度で大規模なものへとデータセンターは発展しており、特に大きなインターネット企業が新しく建設するデータセンターでは、チラーの技術向上が今後の課題となっている。チラーが最も重要な冷却装置の要素となっており、現在のチラー技術では欧州と米国のブランドが絶対的な地位を占めている。

〔JARN, December 25, 2022〕



12.インドの冷房市場 調査レポートでは2028年に16億2千万ドル(約2,150億円)と予測
インドの空調機市場 セクター別(個人用と業務用)、インドの業務用空調機市場、用途別(住宅用エアコンと産業用・業務用エアコン)、地域別、トップ3主要州別、競合性、予測、及び市場機会2028F’と題するレポートが発行された。

インドの空調機市場の規模は2022年3億3,964万ドル(約452億円)であったが、2023年から2028年まで年率9.04%で成長し、2028年には16億2千万ドル(約2,150億円)を超えるものと予測している。市場は中流家庭での可処分所得の増加、インド全土での農村地域における電力の整備などの要素により拡大している。またオンライン販売の出現と絶え間ない技術の向上は予測期間においてインドの空調機市場を儲かるものと期待させている。

エアコンの需要は主に気候によっている。インドの気候はほとんどの地域で暑く、夏は長く4月に始まって10月に終わる。夏の気温は45℃に達することが多い。

エアコン市場では個人向けが2022年に69.68%を占めている。予測期間では個人向けが主流を維持する。市場では常に新たな企業が参入し、エアコンの価格は安い。地方においても個人向けの販売チャネルが存在し、エアコンを購入しやすくしている。

〔JARN October 25, 2022〕



過去の記事
■2022年11月号(No.687)はこちら
■2022年 9月号(No.686)はこちら
■2022年 7月号(No.685)はこちら

以上
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