海外短信

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No.663 2019年5月

英国東芝 冷凍空調機器の据付業者に対して可燃性冷媒のトレーニングを開始

東芝キャリア英国は、据付業者に対して可燃性冷媒のトレーニングプログラムを開始した。据付やサービス時におけるR32とその他の可燃性冷媒の安全な取り扱いを訓練する。2018年に東芝はセパレートエアコンのR32への転換を決めており、2019年中ごろからAir to Water(ATW) ヒートポンプ式温水暖房・給湯システムについてR32を採用する。Fガス規制によるR410Aの段階的削減に沿ったものである。

R32はA2L(微燃性)冷媒に区分され、A2(燃焼性)やプロパンのようなA3(強燃性)冷媒よりも燃焼性は低い。しかし英国の安全衛生法と輸送規則では、R32は可燃性と定められており、A2LとA2/A3の区別はない。そのため東芝のトレーニングプログラムではすべての可燃性冷媒の安全な取り扱いを訓練し、据付業者にA2LとA2/A3を取り扱う能力を身に着けさせる。東芝は顧客に対してプログラムのコストを負担しており、英国の産業訓練組織であるビジネスエッジ・プラクティカル冷凍トレーニングセンターに加わっている。


R32冷媒ロゴ

〔JARN, February 25, 2019〕




パナソニック SaaS型のサービスを提供する米国エクゼノ社の資産取得手続きを完了
業務用冷凍装置の運転経費を削減するソフトウェアをクラウド経由で提供

パナソニックは、北米の子会社であるハスマン社の傘下にあるハスマン・サービス(HSC)社を通じて、エクゼノ社の保有する資産の取得手続きを完了した。

エクゼノ社はソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)型のサービスを開発しているスタートアップ企業。業務用冷凍装置の運転経費を削減する遠隔監視/分析ソフトウェアをクラウド経由で提供している。

ハスマン社は食品流通業界において冷凍機器の製造/販売に注力するだけでなく、機器のメンテナンスビジネスにも力を入れている。エクゼノ社の資産の取得をビジネスチャンスとして、SaaS型のサービスを自社の事業に加えることにより、さらなるエネルギーの節約と故障予知による優れた保守管理を実現する。サービス内容の向上により顧客の要望に的確に対応する。

〔JARN, February 25, 2019〕



富士通ゼネラル オーストラリアのプリサイス・エアー・グループを買収
サービス・メンテナンス事業に進出

富士通ゼネラルは2018年12月12日、オーストラリアのプリサイス・エアー・グループ(PAG)の買収を完了した。PAGはオーストラリアでも有数の冷凍空調、火災、および機械・火災・電気・配管のメンテナンスサービスを行う企業。オーストラリア全土に事業を展開し、大企業、政府機関、資産保有者、および資産管理者など広範囲にサービスをおこなっている。PAGは現在富士通ゼネラルの100%子会社となっている。

オーストラリアの空調機の販売・据付の市場規模は約3,000億円、サービスとメンテナンスの市場は約2,500億円と推定される。

富士通ゼネラルのオーストラリアにおける主要な事業は空調機の販売であり、同社は量販店ルートにて家庭用エアコンではトップシェアを有している。さらに中小規模ビル向けに業務用エアコンの販売を拡大し、設備チャンネルでの販売拡大も積極的に行っている。

〔JARN, January 25, 2019〕




三菱重工サーマルシステムズ トルコの有力企業と合弁会社の設立で合意

三菱重工サーマルシステムズは2019年1月31日、トルコのイスタンブールにおいて冷凍空調機の販売とサービスを行うための合弁会社の設立でフォームグループと合意した。目的は両グループの緊密な連携によりトルコにおける販売ネットワークを強化し、マーケットシェアを伸ばすことにある。取り扱う製品は三菱重工サーマルシステムズのセパレート型家庭用エアコンおよび業務用エアコン、およびVRFマルチエアコンとしている。

フォームMHI気候システム産業貿易と呼ばれる合弁会社は2019年4月に設立される。三菱重工サーマルシステムズの子会社で欧州における空調機の販売・サービスを統括する三菱重工エアコンディショニング欧州が、フォームグループの傘下企業で2011年より三菱重工サーマルシステムズの空調機を販売しているフォームVRF気候産業貿易の一部株式を取得することで発足する。

合弁会社はトルコの最大の都市であるイスタンブールに本社を置き、アンカラ、イズミール、ブルサ、アンタルヤ、およびアダナに営業拠点を置き、トルコ全土をカバーする。合弁会社はフォームグループの高い営業技術力および幅広い顧客ネットワークと、三菱重工グループの技術力との融合を図ることにより事業を拡大する。

〔JARN, November 25, 2018〕

以上
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ダイキン英国 冷凍空調産業賞2018のファイナリストに選出される

RAC誌が主催する冷凍空調産業賞2018の授賞式が2018年12月にロンドンで行われた。この賞は事業が優れており、審査員が高く評価したものに贈られる。2018年は冷凍のコンサルタントであるウェーブ・レフリジレーション、洗浄の専門会社であるジェル・クリアー、それとダイキン英国の3社がファイナリストに選出された。

ダイキン英国が審査員から評価された要素の一つはトレーニングの徹底である。同社はR32の使用に対して先頭に立って施工業者の指導に当たってきている。R32は微燃性冷媒であるため技術者はその特性を適切に認識し使いこなすことが重要である。

ダイキン英国はR32の使用に当たりトレーニングコース“R32システムの施工-準備はできていますか”を2016年11月に開設して以来、今日までに約1,700人の据付業者の訓練をおこなってきている。



ダイキン英国のグラハム・ライト氏(左)
とRAC誌の編集者アンドリュー・ゲーブド氏(右)


〔RAC January 2019〕


モントリオール議定書キガリ改正発効
世界でHFCの段階的削減始まる

モントリオール議定書のキガリ改正が2019年1月1日に発効した。政府、民間機関、および市民に十分に支持された場合、オゾン層を保護しながら、今世紀に0.4℃分の温暖化を回避することができる。パリ協定の目標達成にも大きく貢献する。

キガリ改正の締約国は実施に当たって、HFCの破壊についての技術や新しいデータの報告など具体的な取り決めを定めている。

キガリ改正の目標は3つのグループに分けて定められている。先進国はHFCの削減を2019年から実施する。開発途上国の第一グループはHFCの消費を2024年に凍結、また第一グループに属さない開発途上国の数か国は第二グループとして2028年に凍結する。

キガリ改正はこれまで65ヵ国で批准され、モントリオール議定書は197ヵ国で批准されている。

〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News January 21, 2019〕




米国冷凍空調工業会(AHRI)のビル・スティール新会長
キガリ改正によるHFCの削減を約束

米国冷凍空調工業会(AHRI)の新会長が、米国はキガリ改正の下での義務を果たさなければならないことを強調した。

ビル・スティール新会長はRAC誌に「高GWPのHFC冷媒への依存を抑制するためには国としてのアプローチが必要だ。工業会としても優先度の高い問題であり、会長としてリーダーシップを発揮していきたい」と述べた。

バード・マニュファクチャリング・カンパニーの社長であるスティール氏は「キガリ改正で定められた世界のHFCの削減スケジュールの実行に向けてAHRIは注力していく。既に上院議員のメンバーやトランプ政権とキガリ改正に従うことのメリットを生かすために活動している」と述べた。

「コネティカット、メリーランド、ニューヨーク、およびカリフォルニア州では既に州独自のHFC削減規則を採用している。米国でもしキガリ改正がタイムリーに批准されないとしたら、州レベルでの規制の統一は製造業者にとって必須のことだ。また同時にHFCを段階的に削減していくためにSNAP(重要新規代替物質政策プログラム)の変更についてもEPAと初期の作業を行っている」と話した。

〔RAC, January 2019〕




スペイン 新法が制定されるまでの過渡的な措置により
A2L微燃性冷媒の使用が可能に

2018年末、スペイン政府は産業および商業部門の経済を発展させるための緊急対策として新法を制定した。この法は過渡的な条項から成っており、R32、R452B、およびハイドロフルオロオレフィン(HFO)などの微燃性冷媒A2Lを使用した機器について言及している。欧州標準「EN378:冷凍システムおよびヒートポンプ-安全および環境についての要求事項」に従って機器を据え付ける場合の規制を緩和する。

過渡的な条項は、A2L冷媒を使用した機器の据付範囲を拡大するもので、冷凍空調における現行の安全基準の要求事項を削除するものとなっている。

新しい法の導入部分のポイントⅣでは、「スペイン政府は冷凍空調システムに対して現行の安全基準は障害となっていることを認識している。行政的な一連の要求事項を課しており、A2L冷媒の使用を不可能にしている」と述べている。A2Lを使用した冷凍空調システムに対して、現行法を改正する新法の承認プロセスはすでにスタートしている。

2019年半ばより前に新法の承認を得ることは不可能であるため、緊急対策として過渡的な条項が発効した。これにより冷凍機の据付についての現在の安全基準における要求事項は削除してよいことになった。

〔JARN, February 25, 2019〕



米環境保護庁(EPA) 大気浄化法608条におけるHFCの規定を廃止することを提案
冷凍空調業界に懸念が広がる

2018年9月、米環境保護庁(EPA)が新たな提案をした。HFCなどの代替冷媒を50ポンド(約23kg)以上有する機器のメンテナンスと冷媒の漏えい修理の規定を廃止するというもの。HFCに適用される冷媒管理規定の608条を過去に引き戻すことになる。

EPAは2016年11月にオゾン層を破壊する物質にだけ適用されていた608条をHFCにまで拡大して適用することを決めた。しかし2017年に控訴裁判所がEPAはHFCを禁止する権限を持っていないと判決したことにより、EPAは608条によりHFCを規制する権限もないものと決めた。

もし提案通りHFCについての608条の規定が廃止されると、機器の所有者は次の事項を実施する必要がなくなる。

 ●冷媒を機器に追加充てんする際の漏えい率の計算
 ●規定の漏えい率以上の漏えいをしている機器の修理
 ●修理後の検証テスト
 ●規定の漏えい率以上の漏えいをしている機器について定期的な
  漏えい検査、など機器のメンテナンスと漏えい修理についての
  規定以外でも次の事項の廃止についてEPAはコメントを
  求めている。

 ●冷媒を購入するものは608条で定めた認証技術者であること
 ●機器を廃棄する時、機器内部の圧力が規定値以下になるまで
  回収機を用いて冷媒を回収すること、など

EPAは2018年秋にパブリック・ミーティングを数回開催している。これをもとにEPAは2019年早くに新たな規定を公布する予定となっている。

〔Air Conditioning, Heating and Refrigeration News January 14, 2019〕




英国政府 スマート機器についての標準を準備

英国では、スマート機器を普及するために、空調機におけるスマート機器の製造者に対して、新たな技術標準の作成を要請する見込みとなっている。標準の改訂はデータの扱い、消費者の保護、異なったブランド間での互換性などに焦点を当てている。政府はスマート機器をどのように区分し、使用するかについて規定を導入することを約束している。

ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、規定を現在準備中であり、どのような法にするかは議会での採決とEUからの離脱交渉の状況によっていると述べている。

規定における要求事項はまず空調機器、換気装置、暖房機、およびバッテリー技術に適用される。国における電力消費の動向によっては適用される機器は拡大される。スマート機器としてのラベリングや区分なども規定の一環として検討されている。

〔RAC, November 2018〕




中国のオンラインセールス 中国ブランドが強みを発揮


中国における家電製品のオンラインセールスはJD.com、T-モール、サニングが主流になっている。2018年前半、JD.comが60.5%の市場シェアを獲得し、T-モールとサニングが残りを分け合った。最新の家電製品オンライン購入レポートによると、中国ブランドがオンラインセールスで強い成果をだしており外国ブランドの地位は低い。

e-コマースでの物流、据付、およびアフターサービスの最適化により、エアコンのオンラインセールスは急速に伸びている。2018年には販売量の構成比で35%に達した。

オンラインストアーは消費者のオンラインでの評価に注意を払っている。製品やサービスにおいて悪い評価が付くと直接販売に影響がでる。オンラインストアーが消費者の苦情に適切に対応しなかった場合は、消費者は払い戻しを要求することができる。苦情がプラットフォームのレベルまでエスカレートした場合、プラットフォームは仲裁に入り、オンラインストアーは罰金を払い、時には撤退させられることもある。

〔JARN, February 25, 2019〕




中国 エアコンの過大在庫が常態化

エアコン商戦が過熱してくると2つの現象が現れる。ひとつは生産能力の増強であり、もうひとつは在庫が過大になることである。現在中国のエアコンの年間総生産能力は1億8千万台である。一方、2018年10月時点での在庫の総量は、チャイナIOL.comによると4,260万台となっている。

2018年中国のエアコン市場は在庫レベルの高い状態が続いた。需要が大きく伸びなかったことに対して、生産能力の拡大が続いた。3,500万台以上の在庫が生じていた。過大在庫が常態化することにより産業の再編、販路の革新、競争の激化を生じ、これにより利益率の減少を招いている。

消費が高級志向へと移っており、中国のエアコン市場でもここ数年高級機が売れ始めている。これにより製品価格も上がってきている。しかしエアコン産業全体でみると2019年値上がりはスローダウンしてきている。オール・ビュー・コンサルティング(AVC)のデータによると、エアコンの平均価格は2016年末に3,511元(約58,500円)が2018年6月末に3,814元(約63,600円)と1年半の間に8.6%値上がりした。2019年の価格上昇は大きいものではなく、むしろ平均価格は在庫の消化過程で下が

ることも予想されている。

〔JARN, February 25, 2019〕