省エネルギーセンター会長賞
東芝キヤリア株式会社

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No.668 2020年3月


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製品・ビジネスモデル部門「冷凍機・PROCOOL」





写真1:表彰される東芝キヤリア株式会社の 政本努 執行役員
フィールド・サービス本部長



1.製品開発の背景
地球環境への負荷低減が重視される昨今において、冷凍機においてもさらなる高性能、高機能化が求められている。当社冷凍機は1~8馬力をラインアップしているが、今回、空冷ヒートポンプ熱源機において高いシェアを獲得している「ユニバーサルスマートX」(以下USX)の機能部品を採用し、小形冷凍機の技術と空冷式ヒートポンプ熱源機の技術を融合させ、新開発の冷凍・冷蔵用大容量ツインロータリー圧縮機の搭載により、20馬力以上の製品開発を行った。本製品を開発することにより単位能力当たりの設置面積を低減させた。また、冷凍機が多く使用されるプレハブ冷凍・冷蔵設備やショーケースの負荷は低負荷での運用が多いため、部分負荷領域の効率を重視し、年間を通じての省エネルギー性を向上させた。


1) 高効率化:定格性能、部分負荷特性の向上
2) 大容量化:単位面積当たりの能力の向上
3) 冷蔵・冷凍領域への対応:圧縮機の運転範囲拡大
4) 付加価値向上:インバータから発生する電源高調波(*1)電流の抑制、力率
   99%により電源容量の低減


当社は上記の4つの課題を解決することにより、大形冷凍機の市場を開拓して社会貢献につながると考えた。 



2.冷凍機「PROCOOL」の技術的特徴
本製品は、20、25、30馬力のラインアップを準備している(図1)。各馬力の製品仕様を表1:に示す。




図1: 冷凍機「PROCOOL」






表1: 製品仕様




本製品は大能力化を図りながら省スペース、高効率、高い部分負荷特性を実現した。技術的な特長について以下に紹介する。


1) 大容量ツインロータリー圧縮機の開発
共にトップシェアの実績をもつ当社小形冷凍機にUSXで培った技術を融合させて、大能力化を図りながら省スペース、高効率、高い部分負荷特性を実現するための冷凍・冷蔵用大容量ツインロータリー圧縮機を開発した。冷凍・冷蔵用ロータリー圧縮機は、部分負荷特性に優れており、冷凍能力12kWにおいて他社製品と比較して10%以上高い運転効率を実現した(図2)。




図2: 圧縮機COPの他社比較(ASHRAE条件、60rps時)



類似機種の実運用データを元に当社試験室で、開発機種と他社製品の部分負荷での性能を取得して、年間の消費電力量について試算した。試算結果では中間期、冬期の電気料金に大きな差が出ている。30馬力のシステム比較では、他社の製品に比べて、年間電気代で約13.5万円削減することができ、約11%の省エネとなる(図3)。




図3:季節別電気料金試算結果の他社比較


また、従来の空調用途よりも更に高圧縮領域で使用するため、液インジェクション方式(*2)の採用、内部流路の最適化、圧縮機への新材料の採用で、耐久性を向上させて冷凍・冷蔵に対応できるように運転範囲を拡大した。さらにメンテナンス時に冷凍機油交換が可能なように、サービスポート、サイトグラスを追加してサービス性を向上させた。



2) PWMコンバータの標準搭載
USXで搭載しているPWMコンバータを、本製品でも標準搭載することで、高調波対策不要のインバータ冷凍機となることに加え、業界No.1(*3)の力率99%を実現したことにより、省電源設計となる。




図4: 力率他社比較




一般的なインバータ冷凍機の高調波抑制対策は、別売による追加対策を行う場合が多く、アクティブフィルタ(*4)方式がオプションとして多く用いられているが、本製品は、USXで開発したPWMコンバータを標準搭載した。PWMコンバータは、半導体を用いた高速スイッチングにより、入力電流をほぼ正弦波にすることができるため、電源高調波の抑制と併せ力率も向上できる。また、実運用上最も省エネルギー性が求められる、軽負荷から中間負荷領域での運転効率を、最大限に高めることに主眼を置き、圧縮負荷に応じてインバータ回路内の直流電圧制御パラメータを最適化した。


部分負荷性能向上のために高巻数(高誘起電圧)モータを採用し、高回転数が回せなくなる課題については、直流電圧をモータ誘起電圧より高く昇圧することで解決した。これによって、低回転時には高巻数を生かしてモータ電流を低減できることから、大幅な効率向上が図れ、高負荷時には昇圧制御によって高回転(大能力)が得られるように改良した(図5)。


図5.昇圧イメージ



3.おわりに
「PROCOOL」は部分負荷特性に優れた製品で,大能力化により大容量設備に対応できるようになり,従来は提案できなかった大型の冷凍・冷蔵設備領域を中心に普及が期待でき、環境負荷低減に貢献できる。

(*1) 周期的な複合波の各成分中、基本波形以外のもので、電流ひずみのこと。
(*2)高圧縮比運転時に圧縮機が高温となるため、液冷媒で冷却する方式。
(*3)2020年2月現在。インバータ冷凍機において。当社調べによる。
(*4)入力電流をセンシングし、高調波電流に対する逆位相電流を流して高調波
          電流の流出を抑制する機器。


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