海外短信

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No.678 2021年7月

1.東芝キヤリア インバータエアコンの開発と量産化の功績で「IEEEマイルストーン」を受賞
東芝キヤリアは1980年に業務用、1981年に住宅用として世界で初めてインバータエアコンの開発と量産化に成功した。電気・電子関係の学会であるIEEEは昨年9月、東芝キヤリアの世界初のインバータエアコンを電気・電子の分野における歴史的な偉業として「IEEEマイルストーン」に認定した。IEEEは3月16日、東芝キヤリアの静岡県富士事業所において式典を開催し同社に記念銘板を贈呈した。式典にはIEEE関係者、富士市長、学会、及び産業界から著名な関係者が対面又はリモートで約70名出席した。


IEEE前年度会長福田敏男氏(左)から「IEEEマイルストーン」
記念銘板を受ける東芝キヤリア(株)久保徹社長(右)

 

今日まで世界で200件以上の良く知られた技術が「IEEEマイルストーン」として認定されている。日本では東芝のインバータエアコンは39番目の「IEEEマイルストーン」の認定であるが、空調産業では初となる。

現在インバータは暖房、換気、空調、及び冷凍機器にまで使用され、省エネ性能を向上し、世界中で消費電力の低減に大きく貢献している。またヒートポンプにも使用されてインバータは暖房と給湯の能力を向上し、地球温暖化ガスの排出削減にも大きく貢献している。
日本で生まれたインバータエアコンが今日では世界中で使用され空調機の世界標準となっている。

〔JARN April 25, 2021〕




2.富士通ゼネラル 米国ニューヨーク州の省エネ実証プロジェクトに参画
富士通ゼネラルは米国ニューヨーク州エネルギー開発機構(NYSERDA)が主催する「次世代HVACイノベーション・チャレンジ」に参画する。同社はニューヨーク州の中小規模の店舗、事務所及び公共施設向けにVRFマルチエアコンを設置し、5月1日からヒートポンプのエネルギー効率の高さを順次実証する。

現在、米国で主流となっている暖房換気空調(HVAC)システムは、全館冷房とガス温風機による暖房の組み合わせとなっている。ニューヨーク州は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標としている。この目標を達成するために、富士通ゼネラルのエアコンシステムと現在の空調システムとのデータを比較して、VRFマルチエアコンの省エネ性能を実証する。

このデモンストレーション・プロジェクトは、米国において現在の空調システムからヒートポンプ機器への置き換えを奨励し、確実に温室効果ガスの排出削減に寄与するものと期待されている。
〔JARN May 25, 2021〕



3.日立ジョンソンコントロールズ空調「天井カセット用デザインパネル」と「多機能デザインリモコン」で「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞
日立ジョンソンコントロールズ空調がプロダクト・デザイン部門で「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞した。受賞した製品は、業務用空調機室内ユニット天井カセット用デザインパネル「Silent-Iconic」と空調管理システム用多機能デザインリモコン。特に「Silent-Iconic」デザインパネルは最高位である「ベスト・オブ・ザ・ベスト賞」の受賞となった。

「Silent-Iconic」デザインパネルは周囲の建築と調和し、空間で存在が目立たないデザインとなっている。天井カセットタイプの価格的優位性、据付の容易さ及び優れた性能を維持しつつも、ダクトタイプに近づくために清音設計も同様に追求してきた。

多機能デザインリモコンはインテリアの内装と調和するスタイリッシュな外観に加えて、これまでのどのリモコンより使いやすいものとして開発された。見やすくわかりやすいディスプレイと操作のしやすいインターフェースが特徴となっている。
〔JARN May 25, 2021〕



4.三菱電機 米国と欧州の子会社が提携し、データセンター向けにソリューションを提供
三菱電機は2021年4月1日、米国を拠点とした三菱電機パワープロダクツ(MEPPI)の無停電電源装置部門とイタリアに本社を置く三菱電機ハイドロニクス・アンド・ITクーリングシステムズ(MEHITS)が戦略的提携を行ったと発表した。この戦略的提携はMEHITSとMEPPIのIT冷却ソリューションと無停電電源装置を統合し、北米市場のデータセンターアプリケーションにターンキーソリューションとサービスを提供する。
新たに発表された提携は、信頼性を強く求められる市場でMEPPIの無停電電源供給の高い評価とMEHITSの革新的データセンターでの冷却ソリューションの50年間にわたる欧州やアジアでの経験を組み合わせたものとなっている。

欧州の空調産業の中央に位置し、欧州、中東、及びアフリカで高い評価を得ているMEHITSの統合IT冷却システムは長年の経験に基づいて、データセンターアプリケーションに最高のソリューションを提供する。

この品質、歴史、及び革新的な技術による製品とシステムの結合は、北米のデータセンターに対して比類ないソリューションを提供する。
〔JARN April 25, 2021〕



5.ダイキン ドイツの生産拠点に継続投資 ヒートポンプの生産能力を増強

増大する需要に対応して、ダイキン・ヨーロッパは生産拠点であるダイキン・マニュファクチャリング・ドイツ社(DMGG)に生産ラインを追加し、空気熱源水利用ヒートポンプの生産能力を増強する。ドイツの生産拠点に継続して投資することにより、ダイキンは2050年までに欧州でクライメイト・ニュートラルな経済を実現するための実証を行っている。

ドイツにおける生産能力を増強することで、ダイキンはヒートポンプの欧州での主要な生産拠点としての地位を強化する。
欧州向けのシステムは欧州で開発し、生産もまた欧州で行うことはダイキンにとってきわめて重要な方針となっている。ドイツでの生産はダイキンの生産戦略及び欧州市場での物流と整合している。ダイキンは欧州グリーンディールと欧州の国家クライメートプランへの関わりをさらに強くするために‘メイド・イン・ヨーロッパ’を強調している。
〔JARN, May 25, 2021〕


6.欧州のヒートポンプ設置予測 2030年までにストックで現在の4倍に

欧州では暖冷房の脱炭素化が、温室効果ガスの排出をゼロとし、再生可能エネルギーをベースとした社会へ移行するにあたっての主要な課題のひとつになっている。2020年の初めにはヒートポンプ産業は順調にこれに貢献していた。5年間2桁の成長を遂げ、2020年もこれまでと同様のスピードでスタートした。それから社会の関心がエネルギーから新型コロナウイルスへ移るとこの伸びは止まったが、それでもなお欧州ヒートポンプ市場は回復し、2020年は6%の成長を遂げた。

2020年、欧州ヒートポンプ協会(EHPA)の市場レポートに記載の21か国で160万台のヒートポンプが販売された。2019年の販売台数150万台から年率6%の成長であった。これにより2020年末の時点でヒートポンプの市場ストックは1484万台となった。

政策の観点からすると、ヒートポンプは関連するすべてのエネルギーや気候変動についての法律で認知されている。EUは2030年までにすべての住宅の40%、またすべての業務用ビルの65%が電気を使って暖房すると予測している。エネルギー効率を考えると、これらの住宅やビルはヒートポンプで暖冷房されることになろう。この目標を達成するには4800万台から6000万台のヒートポンプが2030年までに設置されなければならない。これは現在設置されているストックの4倍に相当する。
〔JARN April 25 2021〕



7.フランスの冷凍空調市場 新型コロナウイルスの影響で落ち込み
新型コロナウイルスの感染拡大は2020年、フランスの冷凍空調市場に深刻な影響を与えた。特に建築分野での影響は大きく、建設プロジェクトは6.9%減少し、建築許可の下りたビルの件数は14.9%落ち込んだ。しかしビルのリニューアル分野はあまり影響を受けていない。パンデミックは最適な室内空気質(IAQ)を確保する必要性を認識させることになった。

Uniclimaのデータによると、2020年のフランスにおけるATWの販売台数は175,222台で前年より0.6%減少、家庭用ヒートポンプ給湯機は110,320台で5.7%減少、ATAは812,404台で11.5%増加、VRFは27,686台で9%の減少であった。

R32を主としてGWPが750以下の冷媒を使用したシステムも普及し始めており、能力2~17.5kWの冷暖兼用タイプのヒートポンプが最も売れている。フランスではGWPが150~750の間の冷媒がシングルセパレートシステムの85%に採用された。2019年にはこの割合が62%であった。マルチセパレートシステムの場合はGWPが150~750の間の冷媒の割合は2019年の59%から2020年には82%に上昇している。EU全体としてはR32の割合は市場の84%を占めている。
〔JARN April 25 2021〕



8.米国環境保護庁(EPA) AIM法の成立によりHFCを段階的に削減
米国環境保護庁(EPA)は、HFCの生産と消費を段階的に削減するために、2020年AIM(アメリカン・イノベーション・アンド・マニュファクチャリング)法のもとで最初の規定を提案している。AIM法はEPAに対して、割当量取引プログラムを活用することにより、これらの冷媒の生産と消費を速やかに減じるよう指示している。この段階的削減では今後15年間で米国におけるHFCの生産と輸入を85%減らすことになっている。

AIM法はここ数年米国連邦議会が可決した法案のなかで最も重要な環境法となっている。産業界と環境グループが広く共同して支持したことにより、AIM法は全米でHFCを段階的に削減するための法的根拠となっており、代替冷媒の使用を先導するものとなっている。

EPAの提案は、削減を行うためのHFCの生産と消費の基準レベルを設定し、2022年と2023年のHFC割当量配分のための当初の方法を確立するとともに、安定した、機動的、かつ刷新的な法令遵守及び施行システムを確立するものである。

EPAは2022年の割当量の配分を2021年10月1日までに設定することにしており、その後の年度の割当量の配分もこの方法を見直しながら設定していくことにしている。
〔JARN May 25, 2021〕


9.国際冷凍学会(IIR) バングラデシュでのコールドチェーン開発を技術支援
国際冷凍学会(IIR)は、英国とバングラデシュの大学と協力して、可能な限り持続可能なコールドチェーンをバングラデシュで開発する覚書を世界銀行と締結した。
「畜産サプライチェーンにおけるクリーンでエネルギー効率の高い冷却システムに対する技術支援」と題するプロジェクトでは、バングラデシュにおける畜産と酪農の開発プロジェクト(LDDP)に情報提供するための基礎データを収集する。この作業は、食肉と乳製品の価値連鎖が作り出す冷却の必要性を評価し、効率が良く、より気候にも優しいコールドチェーンの採用を促進するのに役立つ技術的かつ財政的に実現可能な冷却システムに関するアドバイスを行う。持続可能なコールドチェーンシステムへの理解を可能にする環境作りを促進させることにも貢献するであろう。
〔JARN April 25, 2021〕


10.中国 エアコンの価格が上昇
中国では通常2月、3月は販売のシーズンオフである。しかし多くの家電製品で最近値上げが行われている。中国中央テレビ(CCTV)経済チャネルのレポートによると、上海の家電製品ショッピングモールの販売店員は「エアコンの多くは価格を上げたか、上げようとしている」と話している。別の店員は「エアコンはこれまでで最も大きな規模で値上がりしており、これを追いかけるようにして洗濯機や冷蔵庫の価格も上がっている。将来さらに上がる可能性もある」

産業界の内部の話では、家電製品の価格上昇の背景には、銅、アルミ、及びプラスチックのような原材料のコストが急激に上昇したことがあり、加えて労務費や物流コストもまた上がっている。昨年から、値上げを公表した空調機会社がいくつかある。また原材料の価格上昇が止まらないことにより、冷蔵庫の価格も10~15%上がっている。
〔JARN April 25, 2021〕


11.中国 コールドチェーン物流の市場規模 年率19.2%の高い成長を遂げる
中国物流購買連合会(CFLP)によると、2016年から2020年の間に、中国のコールドチェーン物流の市場規模の年間成長率の平均は19.2%となった。2020年中国におけるコールドチェーン物流の時価価値は4兆8100億元(約82兆1000億円)に達し、市場価値は年率20%伸長して2886億元(約4兆9300億円)であった。総収益は2025年には5500億元(約9兆3900億円)を超えるものと見込まれている。

コールドチェーンインフラ構築の政策及び対策が進むにつれ、様々なコールドチェーン物流インフラの引き受け能力はさらに最適化されてきている。

CFLPによると、2016年から2020年の間に、コールドチェーンの倉庫容量は平均年率10%以上で伸長し、冷凍車の台数も平均年率20%以上で増加し、徐々に輸送能力を上げている。
〔JARN April 25, 2021〕


12.インドネシア 港湾でのサービス料金の値上がりがエアコン売価にも波及
インドネシアの冷却と冷凍に関わる企業の協会であるインドネシア冷蔵冷凍会社協会(PERPRINDO)が、2021年4月1日よりジャカルタのタンジュンプリオク港での荷揚げ/荷卸しサービスと国際コンテナ保管の料金を調整すると発表した。現地の商業新聞コンタンが報じた。

同協会は、タンジュンプリオク港でのサービス料金の値上げは、原材料の値上がりやインドネシアルピアの為替レート下落とともに企業にとっては重荷になると見ている。たとえ企業が生産工場をインドネシアに持っていたとしても、原材料はまだ輸入する必要があるため、大きな打撃となる模様だ。生産コストの上昇は最終的に製品の売価を上げることにつながる。
同協会の専務理事であるアンディ・アリフ・ウィジャヤ氏は、製品のタイプにもよるが、値上がり率を5~8%と予測している。
〔JARN May 25, 2021〕


 
過去の記事
 ■2021年5月号(No.676)はこちら
 ■2021年3月号(No.675)はこちら
 ■2020年11月号(No.673)は
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 ■2020年 9月号(No.672)はこちら
 ■2020年 8月号(No.671)はこちら
 ■2020年 5月号(No.669)はこちら

以上
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