令和3年度 デマンドサイドマネジメント表彰 経済産業省資源エネルギー庁長官賞 ダイナエアー株式会社

印刷

No.678 2021年8月

今年度のヒートポンプ蓄熱センター主催、デマンドサイドマネジメント表彰において、当会の会員であるダイナエアー殿が賞を受賞しましたのでご紹介いたします。


「熱源の効率を高める液式調湿空調機」
ダイナエアー株式会社、エボニックジャパン株式会社、株式会社日建設計総合研究所



写真1:資源エネルギー庁長官賞 盾



1.はじめに
液式調湿空調機は、調湿液を用いた空調機であり、調湿液の温度と濃度を調節することで、空気の湿度と温度を自由にコントロールすることができる。一般的な空調方式と比べて除湿時は冷水温度を高めに、加湿時には温水温度を低めにすることが可能で、熱源の運転効率を大幅に高めることでデマンドを抑制することが可能である。
世界で初めてイオン液体(※)を調湿液に用い、かつ、溶液熱交換器と除加湿をする気液接触部を一体化した3流体熱交換器を開発・搭載したことにより調湿液の循環量を1/10に低減することに成功し、従来の液式調湿空調機よりもさらに省エネで、かつコンパクト化・低価格を実現することができた。





写真2:液式調湿空調機



※独Evonik社製 CreCOPlusⓇ 
調湿剤にイオン液体を世界で初めて採用したリキッドデシカント空調機。(中部電力株式会社と共同開発)




2.製品の技術的特徴
1) 新しい液式調湿空調機
従来<冷温媒―溶液>+<溶液―空気>の2段階で伝熱が行われていたものを、<冷温媒―溶液―空気>の熱交換を同時に行うことで、新しい液式調湿空調機が実現。

1:省スペース化:調湿液の循環量を大幅低減し、溶液タンクを80%削減
2:内部動力の低減 :循環ポンプは従来比の90%動力削減


図1:従来製品との比較




※調湿液の飛沫が給気に混入することはなく、人体、設備及び室内に置かれている物品に悪影響を及ぼす懸念はありません。



2)除湿時のメリット
比較的高い温度の冷水、比較的低い温度の温水によって除湿が可能であることから、熱源機の運転効率を高めることが可能である。また、湿度と温度を独立してコントロール可能であることから、過冷却除湿後の再加熱が不要であり、大幅に消費エネルギーを削減することができる。再生に必要な温熱源としてはヒートポンプの凝縮熱をはじめとした未利用エネルギーを幅広く活用可能である。



図2:夏季の除湿・冷房運転の動作



3)加湿時のメリット
気化式加湿と比較して、同じ温度の温水を使用した場合により高いレベルの加湿を行うことができ、かつ、給気の温度と湿度を自由に精度良く制御することが可能である。




図3:冬季の加湿・暖房運転の動作



本製品は空気の加湿と加熱を同時に行うことが可能なため、加湿による温度低下(気化冷却)を見込んだ空気の(過)加熱を行う必要がない。したがって、より低温の温熱源による加湿が可能であり、熱源としてヒートポンプを使用している場合、大幅に運転効率を高めることが可能である。



図4:冬季の加湿時空気状態変化の違い



4)電力負荷平準化効果
従来方式(過冷却・再熱除湿、滴下浸透気化式加湿)との比較において、夏季は中温の冷水を利用できることと熱回収チラーによる熱回収運転が可能となることから、ピークカット率は約13%の削減となり、冬季は熱源の温水温度を下げることが可能であることから、ピークカット率は約21%の削減となる。



     図5:夏季のピークカット効果                図6:冬季のピークカット効果




5)省エネルギー、経済性、環境保全性

同じ室内環境を実現する場合、従来方式と比較すると、エネルギーは51%減、コストは63%減、CO2排出量は51%削減している。



図7:エネルギー・ランニングコスト・CO2排出量比較




3.おわりに
感染症予防対策で換気や湿度への関心が高まっており、各建物用途でのニーズが高まっている。
民生分野では、高齢者が居住する介護施設、病院などは外気導入量も大きくニーズは高い。また、潜熱顕熱分離空調のニーズがある事務所やホテル用途にも適している。
一方、産業分野では、安定した湿度要求に応えるために蒸気加湿を採用している例が数多くある。今後、脱炭素化に向けて化石燃料を使用した蒸気加湿からの転換を図るうえで、現状の温熱の利用や低温排熱を利用して高い加湿性能を発揮できる液式調湿空調機への期待及び脱炭素化への効果は大きい。



以上

Topへ戻る