海外短信

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No.683 2022年5月

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1.シャープ インドネシアにエアコンの新工場を建設
シャープはインドネシアにエアコンの新工場を建設する。場所はジャカルタの生産販売会社シャープエレクトロニクスインドネシアのあるカラワン県のカラワン工業団地(KIIC)。新工場はインドネシア及びその他の東南アジア諸国(ASEAN)向けの生産、輸出拠点として2023年4月に操業を開始する。投資金額は約40億円で生産能力は年間90万台。

ASEAN諸国ではここ数年経済発展に伴い国内消費が急速に拡大している。インドネシアではエアコン市場のさらなる拡大が見込まれており、旺盛な需要に対応するために新工場が建設される。

新工場ではシャープのこれまでのエアコン工場からさらに内製化率を高め、コスト力を強化し、工程のロスを削減して高効率生産を実現し、高品質を維持する。

工場の屋上には太陽光発電システム(設置容量約2,000kW)が設置され、照明や生産ラインなど各種設備に使用される。環境への負荷を軽減している。
今後は順次エアコンの生産能力を増強し、インドネシアのみならずASEAN市場全体に対して安定した供給システムを構築する。将来的にはAIやIoT機能など付加価値を高めた機種を生産し、マーケットシェアを高めていく。



シャープ インドネシア新工場での鍬入れ式

〔JARN March 25, 2022〕



2.ホシザキ イタリアの製氷機メーカーブレマを買収
ホシザキは2022年1月18日、ホシザキの欧州子会社を通じてイタリアの業務用製氷機メーカー、ブレマグループの全株を取得すると発表した。ブレマをホシザキグループに加えることによって、ホシザキは欧州でNo.1の業務用製氷機メーカーを目指す。

ブレマは普及価格帯での幅広い製品ラインアップを強みにして、イタリアに加えて南欧、東欧、及び中東諸国で事業を積極的に展開している。ホシザキは欧州において、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国などで高価格帯商品に焦点を当てて業務用製氷機事業を拡大してきている。ブレマが加わることにより、ホシザキの高価格帯商品ラインアップにブレマの普及価格帯の商品ラインアップを加えることができ、製品構成と販売網で相互補完的なシナジー効果が得られる。

ホシザキは今後もM&A(合併・買収)を含め海外事業に積極的に投資を続け、既存事業を拡大するとともに新しい市場にも進出し、食品サービス産業での世界No.1を目指す。

〔JARN, February 25, 2022〕



3.ダイキン インドネシアバタム島に支店事務所を開設
ダイキンエアコンディショニングインドネシアは新しい支店事務所を2021年12月6日、シンガポール近くのバタム島に開設した。これによりダイキンは現時点でインドネシアの全土主な都市に13の支店事務所を持つことになった。

同社の取締役社長のチン・キム・ファ氏は「バタムでの支店事務所は住宅用ビルのニーズに対応するだけでなく、商業ビルのニーズにも対応する。またバタムはほとんど工業地帯なので種々の産業用ニーズにも対応できる」と述べている。

この支店事務所は運転サービスのサポートを提供し、バタム及び周辺地域に対するトレーニングセンターとして活動する。各種空調システムを展示し、支店事務所はショールームになっている。商品を確実に供給するために、事務所には商品、補用部品、及びその他材料を保管するための倉庫が隣接している。



ダイキンエアコンディショニングインドネシア バタム支店事務所を開設

〔JARN, February 25, 2022〕



4. ドイツ 補助金により2021年ヒートポンプは大きく伸長
ドイツ暖房産業連合(BDH)とドイツヒートポンプ協会(BWP)との2021年ドイツ暖房市場についての共同販売統計によると、2021年ドイツのヒートポンプ販売台数は年率28%伸びて154,000台となった。この内ヒートポンプ暖房給湯機(ATW)が127,000台であり、33%と大きく増加し、構成比は2020年の79%から82%へとアップした。タイプ別には一体型が83,500台で48%の伸び、分離型は43,500台で12%の伸びであった。大きく増加した要因の一つはドイツ政府によって行われた補助金制度であると考えられている。

しかし2022年1月24日、補助金申請の認可は一時的に凍結となった。1月に予想を超える数の申請書が殺到したために、暫定的な予算措置として国営のドイツ復興金融公庫(KfW)は計画を中断せざるを得なくなった。2022年12月31日以降、連邦政府はまったく新しい補助金制度を実施することにしている。ドイツの新築ヒートポンプ市場は今年停滞が予測され、製造業者はリニューアル市場に焦点を当てている。

2021年ドイツのヒートポンプ市場は、特にATWは潤沢な補助金により大きく増加した。しかしATWは補助金なしではまだ独り立ちできない。ATWがしっかりとした成長軌道に乗るには政府の補助金がまだ欠かせないものとなっている。

〔JARN February 25, 2022〕



5.欧州 建築部門における化石燃料の廃止に向かう
欧州では「建築物エネルギー性能指令(EPBD)」の改正案が2021年12月、欧州委員会から公表された。改正された指令は、欧州がどのようにすればCO2排出ゼロと、欧州のすべての建物の完全な脱炭素化を実現できるか、を明確にしている。

建築部門の脱炭素化を確実なものとするために、欧州気候目標計画では暖房における化石燃料を2040年までに段階的に廃止する必要性を強調している。建築物部門からの温室効果ガスの直接排出は2040年までには80%から89%削減することになっている。

EPBDは暖房システムの運転寿命は約20年であるため、2027年には化石燃料を使用したボイラへの助成は適格性を失うものと予測している。EPBDの提案は化石燃料を使用したボイラについて、欧州レベルの段階的廃止日程を強制しているものではないが、国としての禁止についての法的な根拠を提示しており、メンバー各国が暖房システムにおける温室効果ガスの排出許容量または使用燃料を規制することを容認している。欧州各国はこのような対策は建築物部門での脱炭素化を達成するためには不可欠なものであると認識している。

〔JARN, February 25, 2022〕



6.米国ニューヨーク市 新規ビルでの化石燃料の燃焼を禁止
2021年12月、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長(当時)は、新築ビルにおける化石燃料の燃焼を段階的に廃止し、ビルの完全電化の実現を加速することを定めた地域法に署名した。米国でこのような法律を定めた都市はほかにもあるが、寒冷地の都市で定めたのはニューヨーク市が初めてであり、またニューヨーク市は米国で最大の都市でもある。

新築の住宅及び商業ビルにおける化石燃料燃焼の禁止は、7階建以下のビルについては2023年からCO2排出に段階的な制限が課せられる。2027年までにすべての規模のビルが完全電化で建設されなければいけなくなる。

ニューヨーク市の冬は寒いため、同法案に反対する声もあるが、その一方で、同市の電力供給網は夏場にエアコンにより最大負荷となる。化石燃料の禁止は、夏場の電力需要を低減すると期待される。多くの新築ビルにはヒートポンプが設置されるものと考えられ、ヒートポンプは冷房専用機よりエネルギー消費が少ないからである。

米国では暖房、給湯、及び調理への天然ガスの使用が一般的であるため、今回の禁止が天然ガスを使用した機器のヒートポンプに代替することへの理解に影響を与える可能性は、ニューヨーク市のみならず他の米国市場においても大きい。

〔JARN, February 25 2022〕



7.米国冷凍空調工業会(AHRI) ヨルダンの会員メンバーを訪問
中東のヨルダンではビル建築が盛んになりつつあり、冷凍空調関連の製造業者、コンサルタントなどの拠点として成長している。米国冷凍空調工業会(AHRI)は最近ヨルダンの会員メンバーであるペトラ・エンジニアリング・インダストリーズ、産業界会員、及びその他関係団体を訪問し、きずなを強化し、これまで以上の支援を約束した。

ペトラ訪問ではペトラがAHRIの新たなプログラムに参加することや市場を拡大することが討議された。AHRIの認証プログラムに参加し、また高外気温度条件(HAT)T3のもとでのユニタリー大型機器が最近認証されている。これらの動きは地域での個別試験による最小エネルギー性能基準(MEPS)などの製品性能認証に道を開くものとなっている。

またAHRIの中東北アフリカ(MENA)スタッフは米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のヨルダン支部を訪問し、地域のグリーンビル基準、MEPS試験方法、およびASHRAE標準90.1の3つをまとめること、またAHRIの認証プログラムについて討議した。AHRIは認証プログラムがASHRAE標準90.1及び地域のグリーンビル基準の遵守には重要であることを重ねて強調した。ASHRAE標準90.1は機器の効率、認証、及びラベリングの義務的な要求事項を定めている。

〔JARN, March 25 2022〕



8.米国ハネウェル HFO-1234zeの生産能力を2倍に増強
ハネウェルは米国ルイジアナ州バトン・ルージュ工場でのHFO-1234zeの生産能力を2倍に引き上げると発表した。HFO-1234zeは商品名ソルスティスzeとして販売されている。スーパーマーケットの冷凍装置などに使用されることが多い。微燃性(A2L)に区分されるが、GWPは1以下となっている。米国ではHFCの段階的削減が始まっていることもあり、低GWP冷媒に対する需要が高まっている。ハネウェルはこれまでソルスティスの研究開発と生産設備に10億ドル(約1200億円)以上の投資をしている。今回HFO-1234zeの生産能力を増強するために新たに4000万ドル(約48億円)の投資を行う。

ハネウェルは1945年からバートン・ルージュ工場で生産を行っており、ソルスティスzeは2015年から生産している。ルイジアナ経済開発部に対する報告によると今回の増強では年間生産能力が2000万トン増加することになっている。

ハネウェルの発泡剤及び工業製品担当のローラ・ラインハード副社長は「ハネウェルは次世代技術の研究開発では最前線に立っており、市場が低GWP冷媒へ転換するため顧客のニーズに応えて十分な量の供給を行う」と述べている。
〔JARN February 25, 2022〕


9.インド エアコン製造業者は夏の商戦に向けて生産能力を元に戻し始める
インドでは新型コロナウイルスの第三波が収まり、感染が減少したためエアコンの需要が一気に高まってきた。エアコン業界は今年の市場規模を前年の520万台を上回って650万台を超えるものと期待している。それでも2019年の700万台には及ばない。

エアコンのメーカーは新型コロナウイルスが流行する以前のレベルまで生産能力を拡大し始めている。ほとんどのメーカーは1月の40%から50%のレベルから2月には80%から90%のレベルまで引き上げており、3月からは更にシフトやラインを増やすことにより増産を計画している。

メーカーは新型コロナウイルスの二つの波によるロックダウンにより、2020年と2021年の二度の夏の販売機会を失っており、また第三波により2021年12月の最後の週から2022年1月まで生産を中断していた。

ゴドレジ・アプライアンスの事業部長であるカマル・ナジ氏は「販売店は今年の1月末から在庫を積み増しており、当社も冷蔵庫やエアコンの生産をピーク能力に戻すようにしている。2年間のギャップの後、需要は大きく伸びると見込んでいる。多くの工場が1月には50%から60%の生産能力であったが、第三波は既に収まったので、生産をピーク能力にまで持っていく」と述べている。

〔JARN, March 25, 2022〕



10.ロシアによるウクライナへの侵攻 中国のロシアへのエアコン輸出が被る影響ロシアのルームエアコン市場は欧州で最大規模を誇っていたが、ここ数年の景気後退により成長の力を失ってきている。夏場の天候によっても変動している。
中国はロシアに対する最大のルームエアコンの輸出国であり、ピーク時には輸出台数が300万台を超えるほどであった。中国税関のデータによると、2021年中国からロシアへの輸出台数は年率54%増加し265万台であった。中国からの輸出先ランキングとしてロシアは第3位となっている。ロシア市場では中国からの輸入が90%以上を占めている。

2021年、ロシアの夏は暑く、ほとんどすべての在庫を消費した。ロシアのルームエアコン市場は、もし今回のウクライナへの侵攻が無かったならば、好調なものとなっていたであろう。多くの国からの経済制裁により株式市場は崩壊し貨幣は急落した。したがって、2022年のロシアの購買力は急落すると予想される。他の家電製品と比較するとルームエアコンは高額であるためルームエアコンの販売には逆風となっている。

中国のルームエアコン製造業者にとってロシアへの輸出は少なくとも今年は減少するものと見られている。しかし将来の見方となると変わってくる。もし経済制裁が長引くと中国とロシアの協力関係は拡大され、中国のルームエアコンの製造業者には好機が訪れることになろう。



中国からロシア及びウクライナへの空調機の輸出台数の推移
〔JARN, March 25, 2022〕



11.中国 2021年VRF市場は大きく伸びる
中国のVRF市場は2021年、力強い成長を示した。2020年は新型コロナウイルスの影響と不動産取引の冷え込みで市場は逆風となったが、2021年は底堅い回復となった。aircon.comの統計データによると2021年前半の中国のVRF市場は300億元(約5900億円)の市場規模に達し、年率45%以上の増加となった。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前の2019年の前半と比較しても30%以上伸びている。2021年年間としてはVRF市場が年率20%、ミニVRF市場は30%の伸びとJARNは予測している。中国の主要なエアコンメーカー及び圧縮機メーカーへのインタビューをもとにしたもの。

大手メーカーは、健康やインテリジェント機能に関心を高めつつある顧客のニーズに応えて、VRF製品の揮発を積極的に行っている。

業界内部では今年のVRF市場は価格の上昇が焦点になると予測している。2022年2月初めの春節を過ぎた頃から銅やアルミなどの原材料コストが上がっているため、値上げの要求が起きている。販売流通ルートには大量の在庫があるが、値上げはVRF市場の成長を鈍らせることになる。中国のVRF市場の行方については目が離せない状況が続く模様だ。

〔JARN, February 25, 2022〕



12.中国 輸入コールドチェーン食品に対する集中モニタリング倉庫を建設
中国の国家市場監督管理総局(SAMR)が集中監視倉庫の建設を早めており、輸入コールドチェーン食品の追跡システムの構築が進んでいる。2022年2月8日の時点で中国の28州で合計869棟の集中監視倉庫が建設されている。

中国の輸入コールドチェーン食品の追跡管理プラットフォームは2020年12月1日に稼働を開始した。2021年1月13日には32州で州レベルのプラットフォームに接続した。中国では国レベル、州レベル、及び企業レベルの3層からなるプラットフォームを開発している。食肉、水産物など鍵となる輸入コールドチェーン食品に対してはすべての情報を追跡できることを目標としている。

中国全土において集中監視倉庫の建設、運営、及び情報業務を統制するために、国家市場監督管理総局はこれらの施設の設置と運営についての資料を取りまとめ発行した。これには技術ガイドラインを含んでおり、すべての階層での市場管理部門を指導し、追跡機能を強化している。税関を通過したすべての輸入コールドチェーン食品は消毒、殺菌、及び検査をされ、市場での販売の許可証を付与される。

〔JARN, March 25, 2022〕

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