欧州2020年ヒートポンプ設置上位7か国 ~ 海外短信クローズアップ

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No.683 2022年5月

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欧州2020年ヒートポンプ設置上位7か国


英国の経済専門家らの報告によると欧州で2020年住民10万人当たりヒートポンプ設置台数が最も多かった7か国は、順にノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、デンマーク、フランス、そしてスイスであった。



欧州2020年10万人当たりの国別ヒートポンプ設置台数(台)


1位 ノルウェー
ノルウェーは10万人当たり24,675台でトップとなった。4人にほぼ1台の設置レベルを達成している。住宅の持ち主に少なくとも1,100ポンド(約178千円)の補助金が政府から長期にわたり支給されており、化石燃料からの転換を促進している。2020年にノルウェーは石油暖房をすべて禁止している。水力発電によって電力のほぼ100%を再生可能エネルギーとしており、全国で133万台のヒートポンプがグリーン電力によって運転されている。

2位 スウェーデン
スウェーデンでは10万人当たり19,510台のヒートポンプが設置されている。新築住宅ではヒートポンプの設置が標準となっており、これが市場を下支えしている。過去10年間毎年10万台以上設置している。化石燃料を使用しての暖房は10%以下となっている。電力の半分以上が水力発電、風力発電、及びバイオ燃料などの再生可能エネルギーであり、これらが全国200万台のヒートポンプを動かしている。

3位 フィンランド
フィンランドは10万人当たり18,314台設置している。北欧ではヒートポンプの人気がとても高く、フィンランドも例外ではない。フィンランドでは2020年に初めて10万台以上のヒートポンプを設置した。小さな新築住宅の70%がヒートポンプを採用するようになっており、ヒートポンプの将来は明るいものとなっている。

4位 エストニア
エストニア全土ではこれまで196,000台のヒートポンプが設置されている。10万人当たりでは14,726台となる。エストニアはバルト海に面する小国であるがヒートポンプは継続して増加しており、過去7年間毎年16,000台から17,000台のヒートポンプが設置されている。2020年にはヒートポンプの販売が17,000台に達した。これは国内に設置されているすべてのヒートポンプの9.5%に当たる。電気料金も英国の電気料金0.163ポンド(26.9円)/kWhと比較すると安い平均0.113ポンド(18.6円)/kWhとなっている。

5位 デンマーク
デンマーク政府はヒートポンプ市場の活性化を図っており、10万人当たりのヒートポンプ設置台数は7,549台に達している。2017年からデンマーク政府は灯油炊きボイラをヒートポンプに交換した場合、住宅の所有者に奨励金を付与しており、2020年にはガスボイラにまでこの適用を拡大している。企業に対しては2021年補助金制度の効果もあって、採用が増加している。設置費用の15%、最大5百万クローネ(約92百万円)を補助している。

6位 フランス
フランスのヒートポンプ販売台数310万台は欧州では突出した数となっている。しかもヒートポンプの出荷は加速している。10万人当たりの設置台数は4,586台となっている。ヒートポンプの販売台数は過去2年間にわたって34%増加しており、100万台以上と全欧州で最大の増加台数となっている。市場は2012年のエコフレンドリー建築規則により活性化してきており、新築ビルの40%はヒートポンプを選択している。ヒートポンプ産業は2万人の雇用を維持しており、2020年に温室効果ガスの排出を1,230万トン削減している。

7位 スイス
10万人当たり4,110台のヒートポンプを設置してスイスが欧州ランキングの7位となった。スイスで販売されたすべての暖房システムの40%がヒートポンプであった。新築一戸建て住宅ではこの数字は90%にまで達する。スイスでは過去10年間、ヒートポンプは増加しており、特に2020年は顕著な年であり、36,000台と記録的な設置台数となった。スイスでは州によってヒートポンプが最も優れた暖房システムであるという指導が導入されており、これが市場拡大のもとになっている。

最下位から2番目 英国
英国は28万台のヒートポンプを設置したが、10万人当たりに換算するとわずか412台であり、欧州21カ国中ハンガリーを上回るだけで20位となっている。欧州の平均は10万人当たり3,068台であり、英国がこのレベルまで達するには210万台のヒートポンプを設置しなければならない。

英国では政府が2028年までに年間60万台のヒートポンプの設置を目標としている。2035年からは新規のガスボイラの設置は禁止される。英国のボイラアップグレード計画は2022年3月から2025年3月まで実施される。政府の計画では空気熱源ヒートポンプ(ASHP)のコストを5,000ポンド(約825,000円)下げることにしており、地中熱源ヒートポンプ(GSHP)の価格も6,000ポンド(約990,000円)下げることになっている。これはおよそ50%の値引きに相当する。財源は限られているため助成金は3年間でわずか9万戸にしか与えられない。それでもなおヒートポンプの売り上げは増加する。

〔出典 JARN February 25, 2022〕


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