緊急セミナー[高圧ガス保安法改正の要点はこれだ!]参加報告 後編

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No.657 2018年5月

 前号(No.656)に引き続き、日本冷凍空調学会の講演参加報告を掲載する。


ここからは各テーマの講演内容につき、概略を紹介する。

[基調講演] 地球温暖化とHFC規制について
日本冷凍空調工業会:松田部長

 「キガリ改正議定書におけるHFC生産・消費量の段階的削減スケジュールについて、日本は現状の削減努力を続ければ、2024年目標(基準年-40%CO2換算トン数削減)までは達成見込みであるが、2029年目標(同-70%)は達成が困難である。」「閣議決定された[地球温暖化対策計画]でのCO2削減量根拠のうち、機器の使用時漏えい量削減が計画通り進まない場合は、冷媒の低GWP化に拍車がかかる可能性がある。」「フロン排出抑制法の指定製品追加(3冷凍トン以上の店舗・オフィス用エアコン、及び中央方式空調機器(ターボ冷凍機))は、2018年度中に改正施行されると予想する。」「多くの低GWP冷媒がANSI/ASHRAE34に登録されているが、A2L/A2/A3冷媒の登録件数構成が大きい。微燃性冷媒の安全使用を規定した上で、規制緩和を進める必要がある。」等、冷凍空調分野に係る最新状況講演があった。
 これを受けた対応として、「当工業会は、法の例示基準にJRA規格が参照業界規格と位置付けられるよう、整備/働きかけを続けて行く。また特定不活性ガスの判定基準のJRA規格制定、CO2冷媒の規制緩和に対応する、JRA規格/GL等も整備している。」と当工業会の取り組み内容報告があった。(写真1)

写真1:松田部長の基調講演

1.特定不活性ガス及び二酸化炭素に関する法改正の概要
日本冷凍空調学会保安委員会:松浦氏

 新冷媒評価委員会の目的/評価内容の紹介があり、「評価対象冷媒につき、法改定前は冷凍則の(不活性ガスとして)掲名済のもの以外を対象としていた。また、ASHRAE34またはISO817のA1またはA1/A1であることを要件としていた。」「法改定後は冷凍則の可燃性に定義される条件を満たさない冷媒(不活性ガスのカテゴリー)を、対象としている。」との報告があった。また「不活性の判断は、改定後の冷凍則における可燃性ガスの定義を外れるものは全て不活性と判断して良い訳でなく、冷媒評価委員会にて不活性と判断したもののみが、本当の不活性ガス対象であることに留意して欲しい。」と強調していた。(写真2)

写真2:松浦氏の講演

2.特定不活性ガスに関する冷凍保安規則及び指定設備関連の法改正について
日本冷凍空調学会保安委員会:上田氏

 「届け出/許可が必要な区分で、第1~第3グループのガスの種類による区分定義は、高圧ガス保安法施行令で定義されている。」と説明があった。その他製造者は、定置式製造設備に係る技術上の基準を守る必要があるが、冷凍設備については冷凍則で技術上の基準を明記している。これを拠り所として、機械換気装置/検知警報設備等の設置基準を例示基準/内規で定めている。なお、「高圧ガスの貯蔵として、冷凍能力が50冷凍トン(CO2、フルオロカーボン、NH3の場合)以上の能力で、冷媒ガスが充填されている冷凍機器は製品在庫の状態でも法規制対象になる。」と説明があった。(写真3)

写真3:上田氏の講演

3.5~20トンの特定不活性ガスの冷凍設備の取扱いについて
  (JRA GL-20の位置付け及び概要)
日本冷凍空調工業会:山下主査

 「GL-20は、法規の例示基準とすべく働きかけており、GL-20は届け出不要のその他製造(特定不活性ガス利用機器:5-20冷凍トン)を、対象ビューとしている。各機器におけるJRA規格/GLの共通事項を括り出したものである。」と説明があった。
 GL-20においては、検知警報装置を実動作(警報を鳴らす)させる警報検査(1年に1回)は、冷凍則例示基準(20トン以上対象)の警報検査(1ケ月に1回)と頻度が異なるなど、一部緩和箇所がある。「GL-20記載内容は例示基準相当と理解いただいて良い。」の力強い説明があった。
 「GL-20は日冷工一般HPで閲覧可能とする。会員についてはダウンロード可能とするので、規格書籍類の購入と合わせて有効利用願いたい。」と講演席上でPRがあった。(写真4)

写真4:山下主査の講演

4.特定不活性ガスに関する一般高圧ガス保安規則関連の改正について(製造設備)
日本フルオロカーボン協会:山田氏

 [特定不活性ガス]の新設に伴い、R32については、一般高圧ガス保安規則(一般則)で[不活性ガス]から[特定不活性ガス]に規制が強化され、R1234yf/R1234zeは[可燃性ガス]から[特定不活性ガス]に規制が緩和されたことになる。一般則では、燃焼性の基準として[ガスと着火源との接触を維持しない限り火炎が認められないこと]が表記されており、「この箇条の評価測定が困難なこともあって、R1234yf/R1234zeを掲名している。」と説明があった。
[特定不活性ガスの製造]は、製造設備上可燃性ガスと同等の規制であり、
1)設備の外面から火気を取り扱う施設と8m以上の距離を取るか、
2)製造設備から漏えいしたガスが火気を取り扱う施設に流動することを防止するための処置(換気等)、又は連動装置により直ちに使用中の火気を消す処置 (遮断弁等)を取る、
のいずれかが義務付けられた。
 特定不活性ガスの充填容器は、区分して容器置場に置き、周囲2m以内の火気使用、引火性/発火性物の放置は禁じられている。但し[安全性を有すると認められた措置(警報装置・換気装置等)を講じていれば良い]、とされているが、冷媒ボンベの大量保管時等、運用時は注意を要する。(写真5)

写真5:山田氏の講演

5.特定不活性ガスに関する一般高圧ガス保安規則関連の改正について
  (貯蔵・移動・廃棄・回収装置)
冷凍空調学会保安委員会:伊藤氏

 製造者・貯蔵所の合算区分の緩和で、合算の区分を見直すことにより、第1種製造者から第2種製造者に変更となった場合、第1種製造者の容器置場は貯蔵所としての許可・届出不要の除外規定から外れるので、逆に容器置場が第1種貯蔵所になって許可申請が必要となってしまうことも起こりえるので注意が必要である。
 可燃性ガス/特定不活性ガスの充塡容器等を、車両積載にて移動時は、警戒標/消火器/イエローカードが必須(内容積25リットル以下の容器のみで合計が50リットル以下を除く)である。また、航空法においてはR32・R1234yfは危険物であり、旅客機への積載禁止、貨物機では許容質量制限(150kg以下)がある。
 R1234zeにおいても、旅客機での質量制限(75kg以下)、貨物機でも質量制限(150kg以下)がある。なお、R32/R1234yfが充された冷凍機器は航空機への積載禁止(特例は100g未満)、R1234zeが充塡された冷凍機器は12kg未満の充塡量であれば積載が許可されているが、航空会社の判断が優先され、航空機による輸送は事実上困難な場合もある。
 回収については、「回収装置の技術基準は詳細に関係告示で定められており、回収装置メーカーは基準を遵守している。」と報告があった。2016年11月1日以降、R32等は特定不活性ガス専用の回収装置の使用が義務付けられており、経過措置はない。「回収装置は[特定不活性ガス高圧ガス取扱装置]適合品であるかはカタログ及びメーカーに問い合わせをして確認し、使用時のアース接続、漏えい検知警報装置も準備する。」等、取扱い上のPRがあった。(写真6)

写真6:伊藤氏の講演

以上
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