2020年度 省エネ大賞
経済産業大臣賞 東芝キヤリア株式会社

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No.675 2021年3月

製品・ビジネスモデル部門
ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu」シリーズ




写真1:2020年度 省エネ大賞 経済産業大臣賞 トロフィーと賞状を掲げる
東芝キヤリア株式会社の 開発技術者と 省エネ大賞受賞製品



1.製品開発の背景
近年、ビルの空調システムは老朽化に伴う更新だけではなく、高効率かつ環境性能の高い機器への置き換え需要の高まりにより、空調更新の需要が増加している。しかしながら、高効率化に伴い室外ユニットは大形化し、主な設置場所である中小規模ビル屋上における設置スペース確保の課題や、システム全体を更新するための予算確保、空調停止影響の少ない春秋に工事が集中、工期の長期化などの課題があった。そこで当社は、「スーパーマルチuシリーズ」にて、“省スペース&高効率”,“更新物件対応強化”,“寒冷地機能強化”をコンセプトに、以下3つの課題の解決を目指し、技術開発を行った。

1)20馬力室外機を更新前設置スペースに据付可能なコンパクト化と
  高い省エネ性能
2)フレキシブルな更新提案を実現する新旧機器混在が可能なシステムの実現
3)除霜能力向上と除霜中室内冷気抑制、外気処理熱源機として使用範囲の拡大



2.ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu」の技術的特徴
ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu」(図1)は、各室外機をモジューラーユニットとして連結構成することで、最大54馬力までシステムを拡大できる。室内ユニットは0.8馬力から20馬力まで様々な形態をラインナップしており、同一冷媒系統にそれらの室内ユニットを最大64台まで接続可能とし、様々な建物用途に応じた個別分散型空調に適応している。本製品の製品仕様を表1に示す。



図1.ビル用マルチ空調システム「スーパーマルチu」


表1. 製品仕様




本製品の技術的な特長について以下に紹介する。

1) 高い省エネ性能とコンパクト化技術

高巻き数のオープン巻線モーターや圧縮損失を改善するマルチバルブを採用した大容量トリプルロータリーコンプレッサー、空調負荷に応じて2インバーターのオープン結線駆動と1インバーターのスター結線駆動を切り替えるデュアルステートインバーター(図2)の開発により、幅広い能力域で高効率運転を実現した。さらに、新形状の熱交換器・プロペラファンによる大能力化、オイル・冷媒管理制御の高度化による冷凍サイクル簡素化などの新技術と合わせ、高い省エネ性能とコンパクト化を両立しており、P500形、P560形機種において業界最小クラスとなるコンパクト筐体でありながら業界トップ(注2)のAPF(5.5、5.6)(注1)を実現した。






図2. デュアルステートインバータと切り替えイメージ




2) 新旧機器混在の部分更新
本製品は、機能拡張と今後のIoT化による付加価値向上を視野に通信速度を2倍にした通信プラットフォームを採用しており、そのままでは旧通信機器と接続できず、機器を一新する必要があった。そこで、機器更新後の初期設定時に室外機が各機器にアクセスし、新通信制御が可能な機器だけが接続されている場合と旧通信機器が混在接続されている場合を判定し、通信方式を自動で切り替える通信仕様互換機能を織り込んだ。また、旧室内機を新システム側の冷凍サイクル制御アルゴリズムで運転する技術を確立し、新旧混在での部分的な空調更新(図3)に対応させた。これにより、室外機のみの入れ替えや空室のユニット、故障したユニットから順次入れ替えるなど、使用状況や予算などに応じてフレキシブルかつサステイナブルな更新計画を組むことができ、高効率機器への迅速な置き換えが可能となる。なお、新旧混在は2003年以降の当社ビル用マルチ製品へ適応可能としている。





図3. 部分更新対応のイメージ




3) 個別除霜技術の開発
ロータリーコンプレッサーの圧縮比可変特性を活かした二段圧縮サイクルと独自の中間圧制御による「個別除霜技術」を開発(図4)。暖房室外ユニットで吸熱した熱を、除霜室外ユニットと暖房室内ユニットへ最適配分することで、高温冷媒によるパワフルな除霜と冷気落ちによる室温低下の抑制を運転範囲全域で実現した。また、本技術と外気処理接続との組み合わせにより、除霜中の吹出温度を外気温度以上にすることができ、除霜中の換気継続、もしくは、停止時間の短縮が可能となり、換気停止分の過剰な機器容量の選定を防ぎ、通年での外気処理エネルギー量の抑制に貢献する。



図4.個別除霜技術イメージ



3.おわりに
先進技術によりP500形、P560形機種において業界最小サイズながら業界トップ(注2)のAPF(5.5、5.6)(注1) を達成した。また、新旧機器混在運転により高効率機への更新を促進することができる。さらに外気処理接続と除霜性能の強化により寒冷地への普及が期待される。これら優れた特徴を持つ高効率な「スーパーマルチu」の普及と促進で環境負荷低減に貢献できる。

  (注1)  APF(通年エネルギー消費効率)は
     JIS B 8616:2015「パッケージエアコンディショナ」に基づいて算出。
  (注2)  普及機種のAPF値比較。2021年1月時点、当社調べによる。




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