産構審フロン類等対策WG中環審フロン類等対策小委員会合同会議報告

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No.681 2022年1月

2021年11月29日、産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会 フロン類等対策ワーキンググループ(座長:早稲田大学基幹理工学部機械科学・航空学科斎藤潔教授)及び中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会合同会議(委員長:高知工科大学 中根名誉教授)、(以下「合同会議」と呼称)がwebで開催されたので報告する。なお一般傍聴は、委員とは別のYouTubeで配信されるという傍聴形式をとった(席上資料は、こちらの経済産業省のHPにて公開されている)。当工業会提出資料はこちらから。


Ⅰ. 今回の主な議題は以下のとおりである。
(1)平成25年改正フロン排出抑制法施行5年経過における状況と課題について
(2)平成25年改正フロン排出抑制法の施行状況の評価・検討に関する報告書目次についての2点であった。

フロン排出抑制法は施行後、5年ごとに見直すことが義務付けられており、その一環として、別途設定されたワーキンググループにより、施行後の状況と課題等のフォローが行われている。今回はこれらの結果としての報告書の内容についても、目次(報告書)の確認が行われた。

議題(1)についての詳細検討内容は以下の通り

1. 平成25年改正時の背景等
これまでのフロン回収・破壊に加え、フロン類製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が取られることを目的として、主な改正点は以下の5つで、新たな義務が追加された。

①フロン類の実質的フェーズダウン(ガスメーカーによる取組)
②フロン類使用製品のノンフロン・低GWP化促進(機器・製品メーカーによる転換)
③機器使用時におけるフロン類の漏えい防止(機器ユーザーによる冷媒管理)
④充塡・回収行為の適正化(充塡回収業者による適切な充塡)
⑤再生行為の適正化、証明書による再生・破壊完了の確認(破壊業者、再生業者による適切な処理

2. 法改正以降の代替フロン排出量の推移及び政策等の動き
キガリ改正のポイントやフロン転換やHFC排出量や回収率の推移、令和元年の改正ポイントなどの諸データの分析も踏まえ、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みの方向性が、冷媒ライフサイクルのフローごとに述べられた。

3. 改正項目の施行状況及び施策の評価等
1.-①~⑤項に示された前回改正時のポイントごとにそれぞれの詳細状況等についての説明があった。

特に、弊会(機器メーカー)関連として、詳細は後述するが、「グリーン冷媒・機器導入のシナリオ」ということで、中長期的な代替冷媒に関する目指すべき目標値が示された。また、弊会関連では、「点検におけるIoT技術の活用」という形で、点検作業の補完をする上での遠隔監視システムに関する内容も取り上げられた。

4. 地方からの権限委譲の提案について
都道府県知事の監督権限や各都道府県でのフロン法運用状況についての説明があった。一部の府県からの権限移譲要望などもある一方で、時期尚早など、意見はさまざまで、必ずしも統一された状況ではないことも報告された。



議題(2)については以下の通りの報告書目次案の確認が行われた。
「平成25年改正フロン排出抑制法の施行状況の評価・検討に関する報告書目次について(案)」

1.平成25年改正時の背景等
(1)平成25年改正に至る背景
(2)平成25年改正時における主な改正項目
 ①フロン類の実質的フェーズダウン(ガスメーカーによる取組)
 ②フロン類使用製品のノンフロン・低GWP化促進(機器・製品メーカーによる
  転換)
 ③機器使用時におけるフロン類の漏えい防止(機器ユーザーによる冷媒管理)
 ④充塡・回収行為の適正化(充塡回収業者による適切な充塡)
 ⑤再生行為の適正化、証明書による再生・破壊完了の確認(破壊業者、再生業者に
  よる適切な処理)

2.法改正以降の代替フロン排出量の推移及び政策等の動き
(1)モントリオール議定書キガリ改正
(2)代替フロンの排出状況の推移
(3)令和元年フロン排出抑制法改正
(4)地球温暖化対策計画及び長期戦略の改定
(5)2050年カーボンニュートラルに向けた取組の方向性

3.改正項目の施行状況及び施策の評価等
(1)フロン類の実質的フェーズダウン(ガスメーカーによる取組)
(2)フロン類使用製品のノンフロン・低GWP化促進(機器・製品メーカーに
   よる転換)
(3)機器使用時におけるフロン類の漏えい防止(機器ユーザーによる冷媒管理)
(4)充塡・回収行為の適正化(充塡回収業者による適切な充塡)
(5)再生行為の適正化、証明書による再生・破壊完了の確認(破壊業者、再生業者
   による適切な処理)

4.地方からの権限移譲の提案について


以上



Ⅱ.「グリーン冷媒・機器導入のシナリオ」について
既に述べたように今回の合同会議で、新たに2050年カーボンニュートラルを目指すための対応の一環として、グリーン冷媒・機器導入のシナリオについて、下図にて、中長期的な目指すべき全体目標値が示された。

「図 2050年に稼働機器からの排出ゼロ」を達成するための

グリーン冷媒・機器の導入シナリオ(案)

※出展:経産省/環境省 11/29開催「産構審フロン類等対策WG・中環審フロン類等対策小委員会合同会議(第11回)」



図に示すように、2030年に全ての平均GWP値が450程度、2036年には、この数値を「10程度以下を目指す」とされている。
これは、2050年に稼働機器からの排出ゼロを目指すとした時の逆算で、示された値である。
弊会からは、これに対して、全体としての目指すべき目標としては、共有するものの、クリアすべき課題の克服がまだ見えておらず、あくまでも「目指すべき目標値」であることを説明した。

1. 弊会の基本スタンス
1) 再生可能エネルギー活用視点からも高効率であるヒートポンプ技術、製品の普及  
    拡大を目指す。
2) 指定製品制度を活用し、可能な限りHFCの削減とグリーン冷媒など低GWP化を
  目指す。

2. カーボンニュートラルへの対応方向性:
基本的な考え方は、S+3E
S(安全性)、3E(環境性、省エネ性、経済性)のバランスの取れた目標設定、目標に
向けた活動が重要
1) 安全性(S):使用者(消費者)や施工業者等関連ステークホルダーとともに安全性
    を確保する。
2) 環境性(E):環境性の観点からGWPの小さい冷媒への転換を図る。
3) 省エネ性(E):エネルギー効率改善(CO2排出抑制に直結)の観点から機器システム
  の高効率化を図る。
4) 経済性(E):市場への普及促進のために、上記3項目のバランスをとった妥当性
    のある価格(コスト)が必須。

3. 克服すべき課題:

1) 省エネ性の向上
   現状、候補冷媒の特性では、GWPを小さくすると省エネ性が悪化する傾向にある。
   そのため、CO2排出抑制の観点(CNの観点)からは、省エネ性改善(間接排出)の
    影響も加味し、バランスの取れた対応策が必須。第6次エネルギー基本計画に
    おいても最重要事項 (但し、機器の大型化やコストアップを伴う)。

2) 安全性への配慮
    作動圧力や燃焼性への機器としての対応策だけではなく、施工時やサービス時の
    配慮、また廃却時の想定など様々な視点での対応策が必要となる。
   

以上が、今回の合同会議の概要であるが、引き続き弊会としては、上記述べた課題は非常の重たい課題であるが、これらへの対応を進めるとともに、来るべきカーボンニュートラルに向けた諸施策を展開し、グローバルな市場におけるリーダーシップを発揮していく所存である。


以上
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