改正オゾン層保護法の運用について(産構審フロンWGから)

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No.659 2018年9月

 2018年7月25日、経済産業省別館312会議室において、産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策ワーキンググループ(以下「産構審フロンWG」と呼称)委員会が公開審議で開催され、傍聴したので報告する。

 改正オゾン層保護法は2018年6月27日国会成立、7月4日に公布されたため、2019年1月施行に向け、諸制度の準備が始まっており、当面のスケジュールが示された。(図1) 制度運用時には、「産構審フロンWG」報告書が政府の提言として取り扱われ、これに沿った制度設計を行うことから、報告書内容は重要である。委員会会場には当工業会/会員会社関係者が多数、傍聴参加していた。冷凍空調業界にとって、大きな関心を寄せる委員会である。



図1: 施行に向けた今後のスケジュール(予定)


審議資料はこちらの経済産業省HPに公開されている。


 2017年6月及び2017年12月開催の「産構審フロンWG」にて、HFC規制の具体的な運用のあり方を議論し、WG報告書として「改正オゾン層保護法に基づく新たなHFC規制の運用のあり方について(案)」を取り纏めた。今回の委員会審議は報告書最終案の確認の場であり、委員会委員にとっては周知の内容と思われ、審議内容はQ&Aに近いものであった。

1.「 HFC規制の具体的な運用のあり方」報告書説明概要

事務局(オゾン室)から報告書説明があり、HFC規制の運用のポイントは次の通り。

1) 各事業者に対する消費量(製造-輸出+輸入)の割当ては、フロン排出抑制法に基づく使用見通しと整合を取り、2019年以降毎年一定の比率により削減していく(毎年の削減目標値を決める)ことを基本的枠組みとする。結果として生ずる消費量枠の余裕分は、「突発的事情への対応」「低GWP製品の出荷事業者にインセンティブ付与」「研究開発用等例外的用途」「新規参入者への割当て」に活用し、個別調整による割当てを可能とする。

2) 基本的運用では、初年度(2019年度)の申請基準値の設定は、キガリ改正基準年(2011-2013年)~直近3年間(2016-2018年)の期間で、任意の連続3年間の消費量実績平均値に、国が定めた一定の削減率α(現時点の概算値は3.7%/年)を乗じた値とする。また、初年度以降の申請基準値の毎年の削減は、以下に基づく。(図2)

①2020年度は2019年度申請基準値に削減率αを乗じたもの
②2021-2025年期間は2020年度実績見通しと2025年使用見通しで算出される削減率β(現時点の概算値は3.4%/年)を毎年、年度毎に乗じた値とする。
③2026年以降も、②同様の考え方で、2029年度のあるべき使用見通しから算出した削減率γ(現時点の概算値は13%/年)を年度毎に乗じた値とする。

 ここでは、2020-2025年の必要削減率と、2025-2029年の必要削減率に急激なギャップがあるため、2020年-2029年の削減率を平準化すべきの議論があり、技術開発動向を含め、その是非につき2020年後半までに結論を出す、と判断は先送りされている。



図2: 現行使用見通し及び2029年基準限度を踏まえた削減率のイメージ


3) 例外的運用として、突発的事情への対応として、「事故による製造施設の停止/他事業者への振替製造依頼」「猛暑などによる国全体の需要の大幅上振れ」等を視野に、申請基準値を超える製造/輸入が適当と認めた場合は、割当てを追加で行なう。新規参入について合理性が認められる場合は、国全体の基準限度範囲内で割当てを行う。

4) その他運用事項として、輸出入管理は、キガリ改正がHFCに関する輸出入ライセンス制度の導入を求めており、HFCについても原料用途の輸入は、事前確認実績報告が必要である。またキガリ改正において、HCFC22等の製造時に副生されるHFC23(GWP=14,800)についても破壊する努力義務が課せられたため、改正オゾン法においてHCFC許可製造者/確認製造者の実績報告と共に、HFC23の発生量/破壊量も報告義務を課す。

2.出席委員のコメントと事務局(オゾン室)回答

 「猛暑によるエアコン需要増に伴うHFC生産・消費量増は、削減予測に考慮しているか」の委員質問に対し、事務局からは「考慮していない、2011-2013年実績平均を基準としている為」との回答があった。また「冷媒回収率が低迷(40%以下)のままであり、国民のあらゆる階層にフロンに関する理解を進め、協力を仰ぐ必要がある」との委員発言に対し、事務局からは「①管理者責任②処理業者責任③回収技術水準の視点で、回収できない理由を分析している」と回答があった。「特に冷媒回収については、中環審/産構審合同会議の場で回収率向上に向けた議論をする」と発言があった。

3.その他の審議内容

 NEDO事業につき紹介があった。「省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷凍空調技術の最適化及び評価手法の開発」として事業予算が2.5億円(H30年度分)であり、H30-H34年度の複数年に渡る事業の位置付けである。

【経済産業省製造産業局上田審議官の総評】
 「今後の制度運用に関する重要な提言となる報告書を取り纏めて頂いたことに感謝したい。2019年1月の規制開始に向け、万全の準備をして行く。」との発言があり、併せて「改正オゾン層保護法でのHFC消費量の削減規制は厳しいものがあるが、冷凍空調事業で世界をリードしている日本にとっては、事業拡大の大きなチャンスでもある。政府としても産業界を支援して行く。」と総括があった。

【所感】
 報告書として取り纏められた提言の実現については、政府は「技術開発が最重要」の立場である。過去、高い規制目標に対し機器製造側/冷媒製造側は確実に目標達成してきたことから、今回も業界全体で不断の技術開発/低GWP機器の早期上市に取り組まなければならない。


以上
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