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No.660 2018年11月

トップインタビュー 日本冷凍空調工業会 岡田哲治専務理事
“冷凍空調の市場動向、冷媒への対応、今後の抱負を語る”

2018年8月末、JARNが日本冷凍空調工業会の岡田専務理事にインタビューを行った。

岡田哲治専務理事


(JARN) エアコンの主要な製品動向は何か。また注目すべき技術は。
(岡田専務理事) エネルギー効率と人感センサーが最近の大きなトレンドになっている。新製品ではセルフクリーニング、スマートフォンによる運転操作、および人工知能(AI)などを組み込んだものも発売されている。過去にもこれらの機能を持ったコンセプト商品は存在したが、スマートフォンでエアコンを操作し、AIで運転状態を予測し前もって調整できるものが現実の商品になった。

(JARN) R32をVRFに使用することについてはどのように考えるのか。
(岡田専務理事) ダイキンがR32を使用したVRFを8月に発売した。容量は8hpと10hpであり、冷媒の充てん量は既存のVRFよりも少ない。これが商品化できた要因だ。

 R32を使用したこれよりも大きな容量の製品については、少なくとも日冷工の安全基準を満足すれば市場に投入することはできる。安全基準ではシステムが運転するビルに換気装置を追設すること、冷媒の漏えいを検知するセンサーを付けることなどを定めている。漏えいを検知すると冷媒回路を閉止することになっている。これにはコストも課題であり、より大きな容量でR32を採用するにはコストを下げなければならない。

 日冷工は現在、経済産業省産業構造審議会のワーキンググループに参加して、R32およびその他の微燃性冷媒をどのようにしてVRFのようなより大きな容量で使用できるかを検討している。製品の開発に要する期間を考慮すると作業は2024年までに完了しなければならない。キガリ改正では2029年にHFCを大きく削減することになっているからだ。

(JARN) R32よりもGWPが小さい冷媒もあるが、どのように考えるのか。
(岡田専務理事) 冷媒の燃焼性とGWPは逆の関係にある。燃焼性を上げるとGWPは小さくなる。R32よりもGWPを小さくすることは可能であるが燃焼性が上がってしまう。微燃性(A2L)の区分に留めることができるかだ。適切なポイントを見出すことが肝要だ。冷媒メーカーは種々の研究プロジェクトを進め、新製品を送り出している。我々もNEDOと連携して次の段階の調査研究をスタートしている。

(JARN) 日冷工の専務理事としての今後の抱負は。
(岡田専務理事) 日本の冷凍空調産業にとって、冷媒の将来の方向性を決めることが、来年、再来年の最も重要な課題となる。我々の成功を左右するものになるだろう。日冷工はNEDOおよび日本冷凍空調学会と一緒になって種々の調査プロジェクトを実施している。成果とガイドラインを12月に“環境と新冷媒 国際シンポジウム2018”、神戸シンポジウムで発表する。冷凍空調工業会国際評議会(ICARHMA)も海外の工業会を招待して10月26日に日本で開催する。この会議でも冷媒の転換が主要な議題となる。またいかにして関係する日本の法律や規制を改正するかも議題として取り上げたいと考えている。

 これらの課題と平行して、環境に優しい冷媒を使用した日本のエアコンの性能と効能を、世界の国々や団体に公表し、日本の製品と技術の普及を図りたい。神戸シンポジウムには特にASEANなど近隣諸国から政府の代表も招待したい。日本の技術力を売り込む一方で、冷凍空調に適した低GWP冷媒の開発など、今後の課題についても議題として取り上げたい。

[出典 JARN, September 25 2018]

以上
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