日刊工業新聞社主催 第21回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞

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No.660 2018年11月

9月13日霞が関にある霞山会館にて、日刊工業新聞社主催の「第21回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞贈賞式」に参加してまいりました。当会の会員メンバーでは、3社、株式会社イチネンTASCO殿、富士電機株式会社殿、荏原冷熱システム株式会社殿が受賞され、インタビューを行いましたのでご報告いたします。




霞が関 霞山会館にて贈賞式



贈賞式の様子



今回の受賞に際し、受賞した皆様にインタビューをさせて頂きました。


経済産業大臣賞

「現場作業性を向上させた軽量冷媒回収装置」 株式会社イチネンTASCO


イチネンTASCO 代表取締役社長 岩田全弘氏



●開発で苦労した点は?
今回、受賞させていただきました冷媒回収装置のツインキャノン(TA110FP)は能力向上とコンパクト化というテーマを掲げ、開発を行いました。一般的にこの2つの課題は相反するものなので、非常に苦労をしました。能力を上げるにはコンプレッサーをはじめとした内部機器を大型化すれば可能ですが、それを最小限に抑えるため、パーツ単位で一つ一つ見直しを行い、そのパーツレイアウトを既成概念にとらわれずに配置した事でなんとか実現させることができました。

コンパクト化を可能にした大きな要因の1つとして冷却コンデンサの形状が挙げられます。冷却能力を確保しようとすると、この部品を小型化する事はできません。そのため、通常は平面的に構成されるこの冷却コンデンサをボディの形状に合わせてラウンド型にいたしました。自動車に搭載されているカーエアコンの熱交換器では採用されていますが、冷媒回収装置においては今回受賞させていただいたツインキャノンが初めてだと思います。


●商品の市場規模
冷媒回収装置の販売台数は年間5000台ほどと記憶しております。本製品は今年の2月に発売し約3か月間で500台(10%)を出荷しております。開発コンセプトである、能力・機能性の高さとコンパクトなところを評価いただいていると営業サイドより報告が上がってきており、非常にうれしい限りです。

冷媒回収装置は専門性が高い製品なので、この販売数は弊社でも異例です。
実は年間500台という生産計画を立てておりましたので、あわてて増産計画を組み直して対応いたしました。現在は年間1000台を目標にPR活動を行っております。



●今後の取り組み
フロン回収に関する有資格者は6万人ほどと記憶しております。今後はその中でも回収作業にハードルを感じられている方に製品を知っていただく周知活動をさらに加速したいと考えております。このツインキャノンは機能面ではそういった方々にも受け入れていただけるように、操作方法やデジタルディスプレイの表示を考えて開発しております。持ち運びやすく、使いやすい事で回収作業者の裾野が広がればフロンの回収率向上につながっていくはずだと考えております。

別軸にはなりますが弊社は海外(タイ)に合弁会社がございます。まだまだASEAN地区での法律の整備が十分ではありませんが、本製品を用いた技術支援活動なども行っていければと思っております。


●工業会に期待すること
やはりフロン回収率の向上を弊社でも願っておりますのでフロン排出抑制法の周知活動でしょうか。3年前に施行されており様々な周知活動を行っていただいておりますが、まだまだPRが必要だと感じます。フロン回収も慈善事業というわけにはいかないですから、フロン回収率の向上には設備業者様がしっかりとビジネスとして成り立っていく仕組みづくりがキーポイントになっていくと考えております。

施主・ビルオーナーなどの施設管理をされている方などをはじめとした設備業者様以外へのフロン排出抑制法の周知活動を業界団体・私たちのようなフロン回収装置メーカーだけでなく国も一体となって行っていき、フロン回収率の向上を進めていければと強く願っております。

(イチネンTASCO:孟山氏)



優秀賞

「HFO冷媒を用いた内蔵型ショーケース」 富士電機株式会社


富士電機株式会社 執行役員 食品流通事業本部長 高橋康宏氏



●開発で苦労した点は?
小規模の電源であるAC100Vに対応したことになります。
電源容量の制限の中で、必要とする冷凍能力を確保するのに苦労しました。

圧縮機メーカーと共同で、インバータの最適化と合わせ高回転型の圧縮機を実現してきました。これにより身近なコンセントでショーケースを動かせる事が可能になりました。


●商品の市場規模
コンビエンスストアを見ても約5.5万店舗、約44万台の可能性があります。
今回開発したのは、商品を陳列する棚がいくつかある多段のオープンショーケースです。

現在のところ、冷凍機が屋外にある別置形と呼ばれるものが主流となっています。
今後、冷媒漏洩リスクを大幅低減&環境負荷を低減した内蔵型への切替が進むものと考えられます。


●今後の取り組み
今回開発した製品の訴求と、更なる環境負荷の低減に必要な技術開発を取り組んでいきます。今まで建屋の制約等で設置が出来なかった場所に置けるように提案をおこなっていきます。これにより新しい店舗が出来て、より消費者の利便性が向上することが期待できます。例えば、地下に配管を通すことが出来ない店舗、病院の売店や臨時店舗などが考えられます。


●工業会に期待すること
環境負荷低減に対するPRおよび啓蒙活動の推進になります。製品を使用するにあたっては、エネルギーは必要不可欠になります。その中で環境に配慮しながら消費者の利便性を向上させるかが大事になります。

この両立を目指している考え方はショーケースだけでなく他の冷熱に関わる全ての製品だと思いますので、その活動をもっとPRすることを期待しています。

(富士電機:渡辺氏)




審査委員会特別賞
「HFO冷媒を用いた高効率ターボ冷凍機」 荏原冷熱システム株式会社


荏原冷熱システム株式会社 プロジェクトリーダー 天野俊輔氏



●開発で苦労した点は?
環境貢献策として普及するには「どなたにもお使い頂ける」ものでなければなりません。新規に導入を図るお客様には勿論、既にターボ冷凍機をお使い頂いているお客様にも、環境面以外を特別意識すること無くこの新製品を使っていただける様にする必要がありました。

「これまで培ってきた安全と安心、そして高効率、これらを何ら犠牲にすることなく、低GWPと両立させること」。この相反するかの様な難題に挑み、達成に力を注ぎました。

開発行為として当然ではあるのですが、やはり前例の無いことに踏み出すのですから、一つ一つ階段を上るかの様に、丁寧に検証を繰り返した末の到達となりました。


●商品の市場規模
環境貢献策を模索中の全てのお客様が対象です。環境面以外を特別意識することなく導入いただける製品になりました。


●今後の取り組み
能力の範囲も、適合する用途も、更に拡充することを目指し、取り組んで参ります。より多くのお客様にご利用いただくことが望みです。


●今後工業会に期待すること
「冷凍機の低GWP化を着実に推進することを通じて、地球温暖化抑止に貢献している団体である」ということをアピールし続けていただきたいと存じます。今後とも宜しくお願い致します。

(荏原冷熱システム:天野氏


「オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」の詳細は公式サイトでご覧いただけます。

以上
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